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96話 橙谷サイド:支配

「次でやっと100階層か。にしても向こうと合流も出来ないし、小紫もいないな」


 54階層で栗宮達と別れてからここまで駆け抜けてきたが、小紫の小の字も出てこない。

 流石に疲労も溜まってきたし、自然とぼやきも出てきてしまう。


「120階層までの探索になるっていう予測は当たってたみたいだな。ここまで来るとモンスターの強さも桁が違うし、想像以上にポーションの減りが早い。皆! あまり慣れてないと思うが、隊列を崩さず連携攻撃、効率の良さというのを意識してくれ。先はまだ長いぞ」


 柿崎が隊の皆に呼び掛け先陣を切って100階層に踏み入る。

 元々真面目で面倒見がいい性格だとは思っていたが、まさかここまでリーダーらしく率先してくれるとは思わなかったな。


「……あれ? モンスターがいない」

「油断するな。ここのボスは姿を消せるモンスターかも知れない」


 柿崎を追うようにして俺は100階層に踏み入った。

 俺達は辺りを警戒しながらじりじりと前進。

 それに続くように桃達も100階層に踏み入る。



 ビチャ。



 俺が進んだ先に水でも溜まっていたのか、ビチャっと音がした。

 俺はその音に釣られて、何気なく下を向く。


 すると……。



 びゅっ!!!



「ぐあっ!!!」

「橙谷っ!!!」


 凄まじい勢いで顔に何かが張り付いた。

 痛いわけではないが、鼻も口も塞がれ呼吸が出来ない。


 俺は慌てて祖俺を引き剥がそうとその何かを掴むが、まるで水のように手から零れていく。


「う、ぐぁあ」

「くそ! 今それをはが――」

「ダメ、だ。離れ、ろ」


 何かが俺の身体に侵入する。

 体の自由が奪われていく。

 意識はある。だが、それさえもゆっくりそこからフェードアウトされていくような感覚。

 

 まるで自分の体を遠目から見ているかのよう。



 ブンッ。



「なっ!?」


 俺の拳が柿崎の頬を掠めた。

 ダメだ。近づいてはダメだ。


 きっと今の俺の体はお前らを容赦なく殺かる。


「橙谷……」

「にげ、ろ……」


 探索隊のみんなは俺の姿を見て呆然と立ち尽くす。


 頼む。逃げてくれ。俺に仲間を攻撃させないでくれ。


「……。待ってろ今助けてやる」


 柿崎は逃げることなく俺に拳を放ってくる。

 俺に致命傷を与えない為か、剣士なのに剣を使う様子はない。


「ご……」

「やったか?」


 S級探索者の立ち回りは流石だ。

 俺の攻撃を簡単に避け、何発も腹部に強烈な一撃を撃ち込まれる。


 しかし。


「うぁぁあっぁ。はぁ、はぁ、逃げ……」


 痛みは一切ない。

 それどころか、体は高揚感を募らせ、殺したいという欲求が充満していく。


「ティアドロップ!!!」


 その時俺の体に大きな衝撃が走った。

 一瞬驚きはしたが、ダメージはない。


「ちっ!」

「桃……さん?」

「手を抜くな! それは桃が知ってる中で一番強い『敵』!!」


 桃らしくない力の籠った声。

 それに鼓舞されたのか探索隊の人達の顔つきが変わる。


「に、逃げ……。は、ははははははははははっ!!」


 口から勝手に笑いが溢れた。

 俺の中に侵入した何かはこの状況を楽しんでいるようだ。


「そうだった。橙谷相手に手加減なんて出来るはずがなかった。『複製トレース』」


 真剣な表情を見せる柿崎がスキルを発動するとその腕は8つに増えた。

 そして、アイテム欄からそれぞれが個性的な剣を8本取り出し、握る。


 これが柿崎の本気のスタイル。

 8つの魔法剣を同時に扱って戦う事が出来る『阿修羅スタイル』。

 

 魔法攻撃スキルは1度に2つ以上を発動出来ない。

 だが、柿崎は魔法剣と『複製トレース』のスキルを併用する事で1度に様々な魔法攻撃スキルを用いる事が出来る。


「はぁっ!!」


 柿崎が2本の剣を振るうと、強烈な熱波が俺を襲ってきた。

 範囲が異常に広い。


「う、ぐぉ!!」


 俺の体はその熱波を鬱陶しく感じたのか、飛び跳ねて上空に逃げる。

 しかし……。


「正気に戻れ! 橙谷ぃっ!!」


 空中に黒い円が現れるとそこから雷を纏った光の矢が雨のように降り注ぎだした。


 一本一本小さいのに威力が高い。

 俺の体は、それに押し戻され地面に叩きつけられた。


「……橙谷」

「う、ぐ……」


 それでも俺の体にダメージはない。

 だが、俺の中に侵入した何か、恐れくはメタル系のスライムは一方的な戦況に怯えてしまったのか、その場から動こうとしない。


「さなえさん!! 今のうちに拘束系のスキル――」

「『シンクロ』」


 柿崎が俺を拘束する為にさなえさんを呼ぼうとしたその時、俺の持つ中でも現状一番発動させてはいけないスキルが発動されるのだった。


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