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97話 橙谷サイド:5対2

「う、あぁ……」

「柿崎君!!」


 スキル『シンクロ』が発動すると、柿崎の顔が喉に何かが詰まったときのような青い色に変わった。

 漏れ出る声は明らかに苦しいと訴えかけていて、それを心配したのかさなえさんが慌ててこちらに駆け寄ってきた。


 『シンクロ』の効果は対象と自分の状態を共有する、というもの。

 対象は複数ではなくてあくまでも個。重複する事は出来ない。

 それでも自分にかかったデバフや毒や麻痺などの状態異常を敵に付与、更にはバフ効果を仲間と共有する事も出来る強力なスキルだ。


 普段なら逆境をひっくり返す可能性のある俺のとっておきのスキルが、まさかこんな状況で使われるなんて……。

 

 どうやらこの何かに寄生されている、体を乗っ取られているという状態まで共有してしまったようだ。


「うぐぁああ!!」

「きゃっ!!」


 柿崎は駆け寄ってきたさなえさんを腕4本の柄を握っている部分で殴り飛ばした。


 ふいに攻撃を貰ってしまったさなえさんは、ヒットした腹部を両手で押さえ、地面に膝をつける。


「うぁあああっ!!」


 そんなさなえさんに向かって柿崎は容赦なく剣を振るい、雷と炎の魔法攻撃を放つ。


「『ティアドロップ』」

「『クレイシールド』」


 さなえさんに柿崎の攻撃が当たるかと思われた瞬間、桃が『ティアドロップ』を発動、そして沼川さんが早苗さんを守る為に土の防御壁を生み出した。


 『ティアドロップ』は流石の火力で柿崎の魔法スキルを相殺し、白い煙を立ち昇らせたが、沼川さんの防御壁にも攻撃判定があったのだろうか、防御壁は若干崩れてしまっている。


「はぁああ!!!」

「たぁっ!!」


 白い煙で前を塞がれてしまったからなのか、俺と柿崎がなかなか動けずいると、煙の向こうからA級1位の錦(にしき)とA級2位の柳(やなぎ)が勢いよく攻撃を仕掛けてきた。


 柳の手には不良も驚くほどごついナックルダスター、錦は日本刀でまず柿崎を狙っていく。


 しかし……。


「くっ!」

「……」


 不意を突いたにも関わらず柿崎は2人の攻撃を意図も簡単に避けてみせた。

 柳の拳や錦の刀が空を切る音から察するに速さ、威力、共に傍から見る以上のものがあるだろう。


 だが、S級とA級のステータス差は歴然。


 柿崎の表情からはどこか余裕を感じられる。


「うぐぁっ!!」

「「かはっ!!」」」


 2人の攻撃に受け身だった柿崎はその攻防に飽きたのか、必死になりすぎてガードの甘くなっている2人の腹部を殴った。

 2人は口から涎を溢しながら、慌てて後退しようとする。


「『ミラージュミスト』」

「『アイスファルコン』」


 後退する2人を援護するように沼川さんが不思議な色の霧を生み出し、桃は氷で出来た鳥を飛翔させ柿崎を翻弄する。


「大丈夫ですか2人と――」


 後退してきた2人に声を掛けようと沼川さんは口を開く。

 だが、その言葉は不自然に途切れる。


「沼川さん!!」


 桃、錦、柳の3人は慌てて振り返る。

 そしてそこには地面に伏せ気絶する沼川さんの姿、そして拳を真っ赤にしている俺の姿が映ることとなったのだった。

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