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太陽神とシルフィード1  作者: huwahuwanyanko
第四章
25/25

過去の王国と未来の王国

!この小説を読むにあたっての諸注意!

・この小説は幻獣や精霊等が出て来ます。

・基本的にR18シーンはありませんが、ハグやキスだけはあります。

・精霊や幻獣の見た目などに関しては資料などを参考に、私の解釈で設定しています。

・私の妄想大全開の内容になっていますので、苦手な方は回れ右でお願いします。


以上の事が大丈夫であれば、どうぞお楽しみ下さい。

次の日。いよいよ新月の日だ。朝食の間ゲイル王は浮かない顔をしていた。当然だろう。未来を変えてはいけないとはいえ、これから王国に降り掛かる厄災を考えると辛いはずだ。

「…父上。風邪を引いたんですか?元気ないですよ?」

マハタリ王女はクリクリの目で言う。

「いや、大丈夫だよ」

ゲイル王は微笑んで言う。天気も悪く雨が降っている。これでは日中でも魔物が現れやすい。

「…アッシャムス。あの剣を今日から常に身に付けていなさい。何かあった時にお守りになる」

「はい…」

アッシャムスは静かに答える。

「マハタリはこれがあるから大丈夫だよね!」

マハタリ王女はフウァールから貰ったブレスレットを見せて言う。

「そうね。フウァールが作ってくれたものだからきっと大丈夫よ」

スーラジ王妃は微笑んで言う。

「…朝食が終わり次第、大門に向かう。フウァールとアッシャムスも来なさい。スーラジとマハタリは城で留守番を頼む」

「はい」

スーラジ王妃は頷いた。

3人は精霊達と大門に向かった。大門の前には沢山の精霊達が集まっている。

「いいか。大門が開かれるのは覚悟の上だ。どうにかしてフウァールの友人から魔物を出してやり、剣と共に2人をもとの時代に戻してやるんだ」

『『『『『はい!』』』』』

精霊達は答える。異様な張りつめた空気の中、木の葉が風にそよぐ音だけが森の中に響く。

「…もしこの大門が開かれたら、この王国は滅びちゃうのかな…」

アッシャムス王子はフウァールの隣りで静かに言う。フウァールはアッシャムス王子を見る。

「でもフウァールがいるてことは、少なくとも君の時代には王国があるって事だよね。だからきっと…大丈夫だよね」

「…アッシャムス王子」

フウァールはアッシャムス王子の右手を握った。アッシャムス王子はビクッとする。

「…例え時代が違っても、例え暗闇に落ちようとも、僕はアッシャムスの友達だ」

そう言って親指を軽く撫でる。手を離した下に表れたのは金の指輪だ。

「これ…!」

「友である証だ。僕も…」

自分の親指にも指輪をはめる。

「僕たちは時代を超えて繋がっているんだ」

「…うん!」

アッシャムス王子は笑顔で言う。するとゾクッとする様な空気が漂った。

「…!来る!」

大門の前に影が浮かぶ。影は人の姿になった。

「ウィン!」

ウィンの目は虚ろだ。魔物に憑かれると命が食い荒らされる。取り憑かれている時間を考えるともう限界だろう。事は一刻を争う。

『ふむ…ゲイル王か…後の魔王』

「…私が王になった時に切り離された私の一部が魔王だというのは、どうやら本当だったみたいだな」

ゲイル王は言う。

「どんな未来になっているかは分からん。しかし、何があろうとその子とフウァールだけは守るぞ。かかれ!」


ゲイル王の一言で精霊達が一気に飛びかかる。ウィンは小さい身体でちょこまかと動き回る。

『くそ!ちょこまかと…!』

精霊達は苦戦している。剣から放たれる様々な精霊の力にはばまれ、中々ウィンに辿り着けない。どうにかして動きを封じるしかない。フウァールは木の上に登る。手に木の葉を乗せ、呪文を唱える。木の葉は七色の光を宿す。

父上に教えられた事。戦いの中で大切な事は冷静さだ。静かに、精神を研ぎすませて、敵の動きを読み切る事。全神経を集中させて機会をうかがう。ウィンの背が見えた。

「行け…!」

フウァールは木の葉を風でウィンに向って飛ばした。木の葉はウィンを囲む様に渦を巻く。

『ぬぅ!』

木の葉がウィンの手を掴み剣を奪う。

『しまった!』

フウァールは飛んで来た剣を掴む。

「太陽神フレイよ!我に力を与えたまえ!」

フウァールは天に向かって剣を掲げた。錆だらけだった剣は途端に光を放ち、黄金色の刃を現した。

「剣が…!」

アッシャムス王子は目を丸くする。

「我が母ブリーザ女王の名において!」

フウァールは力を込めてウィンに切り掛かった。風の様にフウァールが通り過ぎた瞬間、ウィンの身体から魔物が切り離された。

「ウィン!」

倒れそうになったウィンの身体を受け止める。ウィンは眉根を寄せた。生きている様だ。

「おい!目を覚ませ!」

ゲイル王はウィンの頬を叩く。ウィンは目を開ける。

「…フウァール…と、誰?」

ウィンは頓狂な声を上げる。

「説明は後回しだ!早く大門を…!」

「アッシャムス王子!」

後ろで悲鳴の様な声が聞こえ振り返る。アッシャムス王子は大門の前に立っていた。先ほどの魔物が取り憑いている。

「アッシャムス!止めるんだ!」

ゲイル王は言ったが遅かった。アッシャムス王子は持っていた剣を振りかざすと、大門に向って振り下ろした。大門は地響きの様な轟音をたてて開き始める。

「何と言う事だ…!大門が…!」

ゲイル王は唖然としている。開いた大門の中から大きな黒い影が漂い出て来る。影はゆっくりと出て来ると、アッシャムス王子にむかって流れて行った。アッシャムス王子の中に影は吸い込まれて行く。

「アッシャムス!」

ゲイル王は倒れたアッシャムス王子に駆け寄り抱き上げる。アッシャムス王子は苦しそうに顔を歪める。

「アッシャムス!」

フウァールは微かに目を開ける。

「…我が友フウァール…道は…開かれた…大門を…潜れ…その先に…お前の望む…世界がある…」

アッシャムス王子は息も絶え絶えに言う。剣に込められた精霊の力のおかげだろうか。

どうやら何とか自我は保っている様だ。

「アッシャムス…」

「光と…影は…となり合わせ…影の先に…光が…君の世界が…繋がっている…」

涙目で微笑んでフウァールの手を握り、指輪に触れる。

「時代を超えた友よ…迷わず…進むんだ…私は…父上と…太陽神フレイが…守ってくれる…必ず…だから…行け…!」

アッシャムス王子の言葉を聞き、ゲイル王を見る。ゲイル王は黙って頷く。フウァールは立ち上がり、意識が戻ったばかりのウィンを支えて立ち上がらせる。

「…太陽神フレイよ…我らを導きたまえ…!」

フウァールはそう言って剣を握った。剣から力が溢れて来る様な気がする。フウァールとウィンは意を決して大門を潜った。


門の中は真っ暗だ。天も地も広さも、何処を走っているのかさえ分からない。

「ふ、フウァール…」

「ウィン!大丈夫だ!太陽神フレイが導いて下さる!必ずだ!」

どんな闇の中でも太陽神は我らと共にいて下さる。母から教えられた事だ。不安になる必要はない。一心不乱に走り抜け、目の前に光が見えた。

「あれか!もう少しだ!」

フウァールは止まりそうになる足を何とか前に出して走り続ける。そしてついに光の中に飛び込んだ。

「うわっと!」

何かに突っかかり転ぶ。目の前には青々とした草が見える。顔を上げるとそこは森だ。周囲には誰もいない。振り返ると大門が開いていた。

「…ここは…僕達の世界なのか?」

ウィンは言う。

「分からない。とにかく森を抜けないと…もし過去と同じ場所なら真っ直ぐ進んだ先に城があるはずだ」

すると突風が吹いた。

『フウァール王子!ウィン!』

森に暮らすシルフィードが姿を現した。

『突然大きな扉が現れたからビックリしたわ!何があったの!?』

「シルフィード…僕を王子って呼ぶって事は…」

「戻って来れたんだ!」

ウィンはそう言って飛び上がらんばかりに喜んだ。フウァールは黙って大門を見つめる。

「フウァール!ウィン!」

大人数が走って来る。

「ウィン!」

「ママ!」

ウィンは一目散に母の元に飛び込んで行く。

「フウァール!」

ヴェントはフウァールに駆け寄り肩に手をおく。しかしフウァールの視線は大門に注がれたままだ。

「…あの後、王国は滅んだのか…魔王の手によって…この大門を開いてしまったから…」

フウァールはつぶやく。大門はゆっくり閉じて行った。もう開く事はないだろう。永遠に。

「フウァール…」

ヴェントは息子を抱き締める。

「それが史実だ。…よくやった。お前が王国を守ったんだ」

そう言うと、フウァールはホッとしたのか涙を溢れさせた。こんなに泣いたのは初めてかも知れない。ヴェントは黙ってフウァールを抱き上げる。

「…城に戻ろう。ブリーザが心配してるぞ」

そう言って城に向って歩き出した。

城に戻ると、フウァールはエルフの手当を受けた。ブリーザに抱き締められてひとしきり泣き、そしていつの間にか眠ってしまった。

「フウァールとウィンがたどり着いたのは千年以上昔の王国。魔王が生まれた時代だったのね…」

眠ったフウァールを抱き締めながらブリーザは言う。

「でも、歴史書や伝聞書にはフウァールの事は何一つ書かれていなかった。…多分、歴史を変えないためだな」

ヴェントはワインを飲みながら言う。

「魔王を蘇らせる事で、もしかしたら王国が滅びてしまうかも知れない。それでも歴史を変えてはいけないといって魔王と戦っていたのだとしたら、ゲイル王は相当辛い時間を過ごしていたんでしょうね」

「ああ。心を病んだのは娘を病で亡くしたからだけではなかったんだな」

「そうね。そんな王の心に触れて、大変な思いもしたんだろうけど、フウァールは少し成長したのかしらね」

「そうだろうな。何しろあの錆だらけの剣を1人で蘇らせたんだからな」

「あの剣はフウァールのものだわ。村の祭壇にはノームが別の新しい剣を創ってくれるって。」

「そうか。それは良かった」

フウァールが身じろぎをする。

「フウァール?」

声をかけたが、グッスリと眠っている様だ。

「ふふっ…赤ちゃんの時から変わらないわね。この寝顔だけは」

「だな」

フウァールの寝顔を覗き込んでヴェントも笑う。

「この兄を見習って欲しいわね。…この子にも。」

ブリーザはそう言ってお腹を擦る。

「…もしかして…!」

「うん。二人目、出来たみたい」

「そうか…!じゃあ、きっとお兄ちゃんっ子の妹だな!」

「あら、弟かも知れないわよ?」

「いや、きっと妹だ」

「何その自信」

ブリーザは笑う。

「元気な子が生まれて来るといいな」

「ええ、そうね」

そう言って笑い合った。フウァールはきっと起きたら、大門の向こうで何があったのかを話したいだろう。兄弟の事は少し落ち着いてから言うことにした。

最終回です。


これはpixivに上げていたままで(誤字は修正しましたが)投稿しましたが、色々思うところもあるので、改訂版を出すかもしれません。読んでいただいてありがとうございました。

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