エピローグ【衛藤小豆編】
美脚ってすごい。
人生の走馬灯に登場するほど感銘を受けてしまう。
「変態」
隣の衛藤から声が届いた。
蔑む声音は無礼を隠さずに、言葉の通りに俺を見下している。
「見知らぬ女性をいやらしい目で見るのは恥ずかしくないんですか?」
「見ていたことを見られていたことが恥ずかしい」
笑みのない冷酷な眼差しが俺を突き刺している。
商業施設で楽しんでいた衛藤の姿はもう想像できなくなっていた。自分に懐いていた野良猫が他の家で甘えている現場を目撃した気持ちに似ている。少しだけ寂しい。
「それはそうと、琥珀はバイトが決まったらしいですよ」
「ふーん、まじか」
「美空さんのところはやめとけって言っておきました。私の家にお見舞いに来る道中で、こっそり勧誘していたの聞きましたから」
「まじかよ……、シフト交代要員が」
「はあーあ、そんなことだろうとは思ってました。でも、もう一つ、報告が」
「うん?」
衛藤がしてやったりと続ける。
「琥珀には美空さんの近くのバイトを勧めておきました」
「はあ? どういう意味?」
「だから、夜に一緒になったら、琥珀を家まで送ってあげてくださいね? 夜道に一人は琥珀が心配ですから」
「お前、ちゃっかりしてんなぁ……」
「ちゃっかりしている方が生きやすいんですよ?」
得意げに衛藤は微笑んでいる。
「美空さんには、お酒が飲める年齢になっても愚痴に付き合ってもらうって決めていますので」
「なんだそれ」
「あはは、なんですかね」
楽しそうに言って、衛藤は小悪魔的に微笑んだ。




