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33/33

33.初夜を迎えました

 ユリアは披露宴を無事に終え、邸宅に戻った。

 フレイムは皇帝に話があると言われ渋々皇宮に残った。


 ユリアは疲れた身体を癒そうと浴室に行った。

 浴室の窓から月が見えた。今日は満月だった。ユリアは浴室の照明はつけずに月明かりだけで浴槽に入った。

 この後いよいよフレイムに抱かれるのだと緊張した。

 ユリアはフレイムの引き締まった筋肉質の腕や胸を思い出してドキドキした。身体の奥がうずく様な感覚になって困惑した。

 ロザリーが言っていたのはこういうことなのかとユリアは思った。

 恋とか愛とかという気持ちはまだわからないが、フレイムのことを考えると胸がうずいて早く触れたい、抱きしめられたいと思った。

 ユリアは湯船から立ち上がり月明かりに身体を晒した。


「ああ、やっと見れた、わたしの月の女神」


 フレイムの声がして、ユリアは振り返った。

 フレイムがじっとユリアを見つめていた。

 ユリアは慌てて湯に身体を沈めた。


「頼むからそのままでいてくれ」


 フレイムは服を着たまま浴槽に入り、ユリアを立ち上がらせた。


「きれいだ、ユリア。わたしの女神」


 ユリアは恥ずかしすぎてまた身体を湯に沈めた。


「フレイム様、陛下とのお話はもう終わられたのですか?」


「ああ、初夜にユリアを一人にしておけないから、陛下には返事は明日にしてくれと頼んで帰って来た」


 そう言いながらフレイムはユリアを抱きかかえた。


「ちょっと待ってください、フレイム様…わたくし裸ですし……」


「何を言っている。わたしたちはもう夫婦だ。裸の付き合いはこれから日常だ」


 フレイムはユリアを抱きかかえたまま浴槽から出て、ユリアの身体をタオルで丁寧に拭きローブを着せた。

 そのあとフレイムは濡れた服を脱いで身体を拭きローブを着た。

 再びユリアを抱きかかえ、寝室に向かった。

 ユリアはずっと手で顔を覆っていた。恥ずかしくもあったが、フレイムに触れたくてうずく身体に戸惑っていた。


 寝室に入るとユリアはベッドに降ろされ、フレイムはワインを注いで一気に飲み干した。

 ユリアは動くことができずそのまま横たわって顔を手で覆ったままだった。

 ベッドの軋む音がした。フレイムがベッドに乗ってきたのだとユリアは思った。

 ユリアはいよいよだと思ったがしばらく経ってもフレイムはユリアを触ってこなかった。

 ユリアは覆っていた手を退けて目を開けた。

 フレイムが横たわり肘をついて頭を乗せユリアをじっと見つめていた。


「……あの……フレイム様…?」


「…やっとわたしの妻になったんだなと感傷に浸っていた。今じわじわと実感が湧いてきている」


 フレイムはそう言うとユリアに跨がりゆっくりとおでこから頬にそして唇に口づけた。



 ユリアが目を覚ますともう朝になっていた。隣でフレイムがすやすやと眠っている。

 ユリアは昨夜のことはほとんど覚えていない。ユリアは起き上がろうとしたが、腰の感覚がふわふわしていて脚の付け根が痛くてフレイムの上に倒れ込んでしまった。


「…ユリア、朝からやけに積極的だな。疲れているだろうからと我慢していたんだが、ユリアがその気なら…」


 フレイムはユリアを抱きしめて首筋に口付けた。


「ち、違います!起きようとして倒れただけです!」


 ユリアは必死で抵抗したが、フレイムの力には敵わなかった。



 再びユリアが目を覚ますともう昼を過ぎていた。

 朝から何も食べていなかったのでお腹が鳴った。


「ユリア、目覚めたか?昼食を用意させた。ベッドで食べるか?」


 フレイムがユリアのおでこに軽く口付けた。

 ユリアはベッドでいると再びバトルが始まりそうな予感がしたのでテーブルで食べると答えた。

 フレイムはどこかに出かけていたのか、きちんとした身なりをしていた。


「どこかに出かけていらしたのですか?」


 ユリアは果物を頬張りながら聞いた。


「陛下に会いに行っていた。昨日の話の返事をしに行っていた」


 フレイムもパンを食べながら答えた。


「皇帝陛下のお話は何だったのですか?」


 ユリアは食べる手を止めてフレイムを見た。


「トワイト王国のことだ。ユリアは王妃になりたいか?」


 フレイムはユリアを見つめながら言った。


「……正直なところあまり……でもフレイム様が一国の王になりたいのであれば反対は致しません。そうなれば、王妃に相応しい方を娶ってくださいませ」


 ユリアはそう言いながら胸の奥がチクチク痛んだ。


「ユリアならそう言いかねないと思った……あー、惚れた弱みだな。陛下には断った」


 ユリアは思わず立ち上がった。


「フレイム様はそれで良かったのですか?」


 フレイムはくすくす笑いながら言った。


「わたしにとって一番大事なのはユリアだ。ユリアのためなら国王になってもいいし、ユリアが望むなら皇帝になってもいい」


 ユリアは驚いて言った。


「とんでもありません!わたくしはそんなもの望みません。フレイム様がなりたいのであれば話は別ですが」


「さっきも言ったように、わたしはユリアの望み通りにしたいだけだ。地位も名誉もユリアが必要なら勝ち取るし、いらないなら捨てられる。その前にわたしがユリアに捨てられそうでビクビクしているが」


 フレイムは顔は笑っているが、真剣な眼差しでユリアを見ていた。

 ユリアは目を逸らして俯き、パンを口に入れた。

 フレイムは大きくため息をついた。


「わたしもまだまだなようだ。ユリアに惚れてもらえるにはどうしたらいいだろうか?」


 フレイムはテーブルに肩肘ついて顎を乗せ目を閉じた。

 ユリアはそっと上目遣いでフレイムを見た。


「……きっとそう遠くない未来にそうなりますよ」


 ユリアはフレイムに聞こえないぐらいの小声で言った。


「何か言ったか?」


 フレイムは片目を開けて聞いた。


「……二人で旅がしたいなと」


 ユリアは誤魔化すつもりでやりたいことを言ってみた。


「それいいな!新婚旅行を兼ねて二人だけで一年ぐらい諸国を回るのも面白そうだな」


 ユリアは目を丸くして立ち上がった。


「本当ですか!わたくし絶対にそれやりたいです!」


「はは、ユリアがやりたいのならやるしかないな」


 フレイムは笑いながら言った。



 半月後、ユリアとフレイムは二人だけで馬に乗って諸国をまわる旅に出た。

 旅の途中、ユリアが大好きなサバイバルを何度も体験することになるが、フレイムと助け合って切り抜けた。

 二人はこの旅でお互いなくてはならない大きな存在になっていった。


 一年後、旅から帰って来たユリアが、ロザリーの言うことを聞くことになるのは言うまでもない。


完結しました。つたない小説を最後まで読んでくださりありがとうございました。

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