宮仕えロビンの仕事と恋3
何人かの方が、ブックマークしてくださって非常に感激しております。
そして、文字に訂正もありがとうございます。
本当にありがとうございます。
それでは、引き続き、頑張るロビンのお愉しみ下さい。
数日後、殿下の仕事を全てやってのけ、いつものように先触れもせず、叔父の屋敷に押し掛ける。
到着すると、最近良く話しかけてくる侍女―確か、マリーと言ったと思う―がまた話しかけてきた。
女の子大好きキャラをこの屋敷で装っている俺としては、無下にも出来ずに、適当に相槌を打っていると、
「聞いてくださいよ!この前カメリア様ったら、木登りなんてしたんですよ!貴族のご令嬢とは思えないですよね。みんなで“はしたない”って話をしてたんですよ!」
「へぇ。」
へぇ、彼女、馬も乗りこなすのもすごいと思っていたけど、本当に活発なんだな。
この場合はお転婆というべきかな?
俺も良くやっていたな、木登り。
それにしても、よく聞いているとチョイチョイこの娘、
カメリアの事を貶めるようなことを言うな。
自分の主人だろうに。
まあ、勝手に色々しゃべってくれるから、こっちも情報が引き出せて助かるけど。
でも、なんだか不愉快いだ。
このまま話が、止まりそうになかったので、適当なことを言って切り上げた。
まだ話し足りないらしく、残念そうな顔をしていたけど、君、仕事しなさい、仕事。
適当に屋敷をうろつきつつ情報を収集し、図書室に行くと、彼女が熱心に本を読んでいた。
窓からの光が、彼女にちょうど降り注いでおり、何とも神々しい...
ふと彼女の後ろを見ると、マリーが傍に控えていた。
えっ、君。
カメリア付きなの?
オイオイ...。
さっきのマリーとの話が思い出され、頭が痛くなってくる。
気を取り直し、彼女が何の本を読んでいるのか尋ねると、トルタイムの地場産業に関する本だった。
結構難しい本だったと記憶する。
しかも、選んだ理由が、下の街で買った特産の紅茶が気に入ったから!
俺もうちの両親も大好きだった紅茶だ。
昔は、外国から輸入に頼っていたが、品種改良を重ね、「特産」にまでしたうちの紅茶。
父が苦心して携わっていた案件の一つだ。
暫くぶりに帰ってきた屋敷では、やたらと気取った王都の茶葉しか出てこず、
この特産紅茶は、一度も出されたことがなかった。
もうこれは、また案内するしかない!
と思って、早速彼女を遠乗りに誘う。
彼女には、「既に、叔父には了承得た」と言ってしまったが、まだ得ていない。
これから了承取り付ければ良い話だ。
あの感じだと、叔父の許可は、問題なく引き出せるだろう!
ウキウキしていた所、
「あら、メリンダちゃんや、ナターシャちゃん達と遊びに行かなくて良いの?」
と聞かれてしまった...。
あぁ、その話、忘れてはいなかったのですね。
ええ、会いますよ。むさくるしい奴らですけどね。
とは言えず、適当に返すのがやっとだった。
案の定、遠乗りの話を叔父に持って行ったら、「自分は忙しいからカメリアを誘え」と指示されたので、心置きなく意気揚々と次の日、彼女と遠乗りへ出かけることになった。
彼女に、次どこを案内しよう。
彼女が興味を持ってくれた紅茶の畑と工場は外せないし。
うちの産業と言えば、あと鉱山か。
あとあの本に書いてあったのは、何だっけな。
勉強熱心な彼女のことだ。
こちらだって、ちゃんと説明できるように、復習しておこう。
そう思い、その日はもう一度図書館へ行くことにした。
再び訪れた図書室に、今度はクリスがいた。
しばらく、あまりこの屋敷に近づかなかった俺は、クリスと両手で数える位しか会ったことがない。成長期のせいか、会うたびにでかくなっていき、どんどん美少女に成長していっている。父である叔父というよりは、死んだ義姉似か?よく覚えていないが、叔父にあまり似ていないという事は、そういう事だろう。
ちなみに、俺とクリスの仲は悪くない。
確かに、叔父に対して消化しきれていない思いが存分にあるが、その娘に対しては、その思いを俺は引きずっていない。叔父とクリスはそもそも別人で、あの事件に無関係だ。それに、同罪とみなす程、俺は子供でもないし、拗らせてもいない。
たぶん、そう思えるのは、俺を育ててくれた祖父母のおかげだと思うが、
クリスの性格にも寄与する所も大きいのだろう。
それにしても、いつも思うが、
あの叔父の子供としては、ずいぶん真っ直ぐに育ったものだ。
それだけ、大切に育てているということなのだろう。
「あら、ロビン。ごきげんよう!」
「やあ、クリス。元気かい?」
「ええ、元気よ。ロビンは?」
「ああ、元気だとも!勉強熱心だね。何の本を読んでいるんだい?」
「この領の川の生物の本を読んでいたのですけど、ちょっと飽きてしまって。お義母様から“とても面白い”と言って薦めていただいた本を、気分転換に読んでいたんです。でも、ちょっとのつもりが、面白くて止まらなくなってしまったの。」
その本は、前回自分がカメリアに置いていったブックリストに載っていた騎士の冒険物の本だった。もともと彼女が知っていた本なのか、それとも自分が薦めた上で読んでくれて、面白いと思ってくれたのかはわからないが、どちらにしても彼女と同じ感性だと思うと何だか嬉しかった。
それにしても、彼女がクリスにお薦めの本を教えるとは
「クリスはずいぶん、カメリアと仲が良いんだね。」
「ええ、とても良くしてもらっているわ。
この前も、一緒に魚釣りしたり、木登りしてモリスに怒られたりしたのよ。」
おっと、木登りはクリスと一緒だったのか。
てか、ずいぶん楽し気だな。
女親子で、しかも貴族で、魚釣りとか、木登りってあんまり聞かないけど、
いや、「あんまり」じゃないな、全く聞かねえな...。
「ロビンは、図書室は何用で?」
「ああ、明日、彼女と遠乗りに行くことになったからね。その予習と復習を。」
「え!また、お義母様とお出かけですか!ずるい‼」
「ずるいったって。クリス、馬はもう一人で乗れるようになったのかい?」
「いいえ、まだです...。横乗り、難しくて。」
「そうか、それは残念。何かまたお土産を買ってくるから、楽しみにしてな。」
「そうします…。」
しょんぼりしているクリス。
もし、自分に妹がいたのなら、こんな感じなのだろうか...。
翌日、薄曇りの中、領内の産業で重要な地点を中心に、彼女に案内して回った。
紅茶の茶畑は、以前に比べ作付面積がだいぶ増えていた。これは、産業として発展してきているという事だろう。純粋にうれしい。加工場の方はというと、代替わりしたらしく、自分の知らない者達ばかりだった。幼い頃から遊んでもらったデルコや他の者達がいないのは、残念だった。
加工場に顔を見せた際、不審がられたが、領主の甥だと伝えたら、手の平を返しニコニコと、施設を案内してくれた。途中、彼女が加工場の女衆と紅茶の入れ方について、話に花を咲かせ始めていたので、彼女に断りを入れ、工場内を少し勝手に見回る。
人は入れ替わったとはいえ、工場内はほとんど変わっていなかった。
あの頃が懐かしい...。
思い出に浸って歩いていると、見たことがないパッケージを発見した。
「新商品かな。」
興味が引かれ、ちょっと匂いを嗅いでみる。
ん
アレ…
何かコレ…
誰もいない事を良いことに、少し茶葉を口に含めてみる。
...。
まさか。
なんてことだ!
一気に心が逆上するのがわかったが、必死に抑え込む。
落ち着け。
落ち着くんだ!
せっかくの糸口を、無駄にするんじゃない!
気づかれない様、あたりを見直し、一袋懐に入れる。
彼女の元へ帰り、すぐに加工場を出ることにした。
彼女は少し質問し足りなそうだったが、あの加工場は、一刻も早く出た方が良い。
その後、別の場所をいくつか案内し、最後に鉱山の入り口を案内した。
彼女は、坑道内まで入りたそうだったが、さすがにそこは止めた。
そんな顔してもダメ!カメリア!
そこは危険だから!
さっきの加工場といい、鉱山といい、何という好奇心の塊なのだろう。
「ここの鉱山ね。俺が小さい頃に比べたら、だいぶ採掘量が減ったんですよね。とはいえ、まだまだ採りつくしていないと思うんだけどな...。」
そうなのだ。最盛期に比べれば、減ったとは言え、中の人間にも確認したが、まだまだ大丈夫なはずなんだ。何が駄目なんだ...。なぜ侯爵家に金がない…
このままでは駄目だ。
他の産業を考えないといけないのか...。
「量と質以外で考えるなら、あとは、今ある物の価値を上げるしかないわね。希少な宝石か魔石が取れればよいけど、なければ、あるものでブランディング化していくとか...。」
「ブランディング化?」
「うーん、例えば、ここの宝石が王妃様に愛用されているとか、魔石を使うと、他より威力はないけど、長持ちするとか…こう、みんなが欲しがるような特色を出して、他の産地と差別化していくみたいな...。」
「す、すごいよ、カメリア!良くそんなこと思いつきますね!」
よくそんなことを思いつく!
気がつくと、彼女の手をとり、ブンブン上下に振っていた。
そして、彼女が痛がるまで、気がつかないなんて...。
それにしても、彼女は知識の量だけでなく、発想力もすごい!
あの叔父の妻にしておくのは、本当にもったいない!
そして、今の彼女の状況をみると、本当にかわいそうだ。
こんなに素晴らしいものをたくさん持っているのに。
これでは、飼い殺しではないか...。
叔父に進言してみようと言った俺に、自分のアイディアとは言わないでほしいと言った彼女...。
俺は、もっと君の生き生きとした顔が見てみたい。
それにしても、彼女の手は思ったより小さく
そして、柔らかだった…
採掘場見学後、
彼女も気に入ってくれたという俺のお気に入りの場所に行く途中、オオカミに追いかけられていたガキを助けた。なんと、イーサムの子だった。あいつ、いったい何人子供作っているんだ。まあ、仲が良いっている事で良いのか。
久しぶりに再会したイーサムは、相変わらず毛がモジャモジャだったが、やはりそれなりに年を取っていた。たぶん、長男のイムサムが、今やイーサムの右腕となって、頑張っているに違いない。
だが、イーサムよ。
「ロビンぼっちゃん」はヤメテくれ。
さすがに、この歳で坊ちゃんは、恥ずかしい!
彼女もクスッ笑っているではないか!
しかも、逢引なんて...。
...。
他人もそう見えるのだろうか...。
/ / / / / /!
いやいやいや、冷静に考えろ、俺。
それでは、彼女に、悪評が付いてしまうではないか。
それは、まずい...。
彼女との遠乗りは、控えるべ気か...。
しかし、領主の奥方だって聞いた瞬間、イーサムの奴、嫌な顔したな。
集まってきている情報でも叔父の領民の評判は、あまり良いものではなかった。
鉱山の類でも、やはりそうなのだろうか。
あとで、イーサムにゆっくり話を聞いたほうが良いな。
お互い積もる話もあることだし。
クリスといいイーサムの末っ子といい、彼女は子供に好かれるようだった。怖がられた俺と違い、イーサムの末っ子なんか、ずっと彼女にべったりだった。別れの時に、はがすのが大変だった。少し乱暴になってしまったのは、イーサムの末っ子がなかなか離れず、やむを得なかったからで、決して、うらやましかったからではない!
それにしても、あの屋敷内での彼女の評判と実際の彼女と、なぜこんなに異なるのだろう。
殿下の元で色々経験し、人を見る目には、ある程度自身がある。
少しでも彼女と一緒に過ごしたら、お屋敷での評判は間違っているのは、すぐにわかる。
なのに、あのお屋敷での評判は何なんだ。
おそらく、叔父もその評判を鵜呑みにしている節がある。
いったいあの屋敷は、何が渦巻いているんだ。




