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ただいま転移暴走中  作者: ヨウ
第1章 異世界と地球
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第26話 アイテム納品クエスト

二日後、事態は思っていたよりも早く動いた。


「ニク君、これはニク君宛のメッセージだと思うけど、どうかな」



沢木さんから内容を見せてもらう。

確かに直接僕達に向けたメッセージというわけではない。

僕の名前も、冒険者ギルドの名前も、異世界についても何も言っていない。


それでも内容的には確かに僕宛のメッセージなのだろう。

アイゼンにも確認し、罠でもなく、解決も可能と判断した。




「これは、アイテム納品クエストですね」






メッセージはとても単純なものだった。



・孫娘の病気を治し、通常の生活を行える状態に回復してくれた場合100億ドル支払う



某大国の大富豪がメディアを通じて発信したメッセージだった。

孫娘の症状、現在の医療では原因すら特定不能。


全世界に向けて発信したメッセージではあるが、その実現在の地球ではどうしようもない。

異世界の力をあてにしたものだった。




アイゼンによると、戦利品の魔法薬で治せるとのこと。

戦利品置き場からアイゼンに指定された魔法薬を持って戻ってくる。


「沢木さん、アイゼンによるとこの魔法薬で解決するそうです」


ゲート越しに魔法薬を見せ、大丈夫らしいと説明した。



「ガラスのような、クリスタルのような、よくわからない物に入っているな。

その魔法薬、名前はあるのか?」



(アイゼン、この魔法薬ってなんていう名前なの?)


(ご主人様の言葉で表すと、エリクサーです)




「え?」


なんで僕こんなもの持っているの?

もしかしてそこまでレアなものでもない?


(大変貴重なものです。最高級の魔法薬です)



アイゼンが僕の心の中での動揺に突っ込んできた



(アイゼン、これってどこで手に入れた物)


(盗賊のアジトで手に入れたものです)



マイアを救出した時か。



(もしかしてあの盗賊達って強かったの?)


(はい。盗賊の頭や側近の数名はLv60を超えていました)



そんなに強かったのか。

マイアたちがあっさり倒したから全然気にしてなかった。


(それは相手が装備を何も付けておらず、さらには眠っているところへ、アル殿装備をしたマイア殿が即座に首をはねた結果です)



なるほど。

領主が強かったのは、装備もしていて眠ってもいなくて魔法防御耐性も上がっていたからか。


(はい、さらにアル殿装備がサーヤ殿にも分かれていましたので、途中までは剣の力も弱まっていました)



そういえば最後に何か剣がすごくなってたね。



「ニク君、どうかしたか?」



僕が驚いた声を発したまま動かない状況を見て、沢木さんが声をかけてきた。


「沢木さん、この魔法薬の名前はエリクサーだそうです。

最高級の魔法薬ですね。

とても貴重な品のようですが、報酬的にも一つ目の成功的にもこれを使いましょう」



最高級品で貴重な品。

効果が十分なだけでなく、いつ手に入るかもわからない物。

エリクサー病として僕も使わずにとっておきたいとも思ってしまうが、今回は都合がいい。

いつ手に入るかも分からない品だからこそ、もっと欲しいと言われてもすぐには出せない。





このメッセージ以外は特に目立ったものはない。

批判は今でも続いているし、冒険者ギルドの話題も多少出ている。

当然のごとく、各業界からの交渉どころか、業界の話題にすらなって居ない。

急に異世界の事などと言っても、相手にしないのが当然だ。




「そんなに貴重なものを手放して、良いのか?」


「ええ、それに最初に目立つのは人探しよりも地球に与える影響が強い物の方がよくないですか?」


「それもそうだな。問題は、今回は相手と連絡が取れないことだ。

今までは電話では直接的な単語を使わずに会っていたけれど、今回は相手が特定されている。彼らは既にマークされていて、盗聴された通話はすべて保存されるだろう」



僕達はお互いに電話をするときも名前を出さないように気を付けている。

僕やネグリジェ、さらには九条さんの個人のスマホは影分身の分体に持たせて地球で普通に使っている。

手元にあるのは沢木さんが用意した予備の端末。

しかしそれでも安心はできない。

アイゼンによると、盗聴可能ということだったからだ。

なので呼び出し以外は、直接ゲートで顔を合わせて話している。



「相手方の代理人が日本に着ているようですので、その肩を経由してゲートを運んでもらいましょう。沢木さん、赤坂方面へ車でむかって、止まらずに通過してもらえますか?

そこでゲートだけ別行動をして代理人に接触させます」









「こんな状況で失礼します、代理人のキャメルさん。お探しのニクです。

あなたの依頼主にの元に向かってください」


「え?」



代理人の名前はキャメル。

28歳の女性。

彼女は今ホテルの部屋で風呂に入っている。

ストレスを発散させるように、湯船につかっている。



「監視の目が予想以上に多かったので。ついでにここは大丈夫ですが、部屋の中も、スマホも盗聴されています。小声で聞こえますので小さな声で話してください」


「おどろきましたね。私は一応女性なのですが」


「もちろん分かっています。一応などという必要はなく、きれいだと思いますよ」


「ずいぶんと女性に慣れているのですね」


「異世界に来る前であれば慌てふためいています。今は周りにきれいな女性が多く、皆脱ぎたがるものですから。流石に慣れました」


いやはや、ただのゲーム好きの男子高校生だったんだけど。

いつの間にやらこんな美少女だらけに囲まれて、ぽよぽよな生活を過ごしている。



「詳細は伝えない方がキャメルさんのためにも依頼主の為にも、そして僕の為にもなるかもしれませんので。

このままキャメルさんが依頼主の元に戻ればうまくいきます」



アイゼンが分かるのは現状どうなっているかだけ。

未来のことは分からない。

他にもやれることはやっておく。






キャメルさんの行動は迅速だった。

ディナー用のドレスに着替え、パーティーバッグだけを持ちホテルでディナーを過ごした。

途中で何かスタッフに指示をしていたが、メニューを見ながらだったのであまり気にされなかったようだ。


そしてディナーを終えるとスタッフと共に屋上へ。

スタッフはワイン等を載せたカートと一緒だった。


そしてそのままヘリコプターでナイトクルージング。

ホテルのスタッフのお見送りで出発した。




そしてそのまま成田空港へ向かい、プライベートジェット専用ターミナルから本国に向かって出国した。

彼女を監視していた物達が、戻ってこない彼女に気が付いた時には既に出国した後だった。



「見事なものですね」


僕は彼女から預かっていた荷物をゲート経由で渡しながら声をかけた。

スーツケースは入らなかったので流石においてきた。

ホテルには伝えてあるらしく、後で送ってもらうそうだ。


「荷物の件、ありがとうございました。

着替えは持っておきたかったので、助かりました」



彼女はその場で動きやすい恰好に着替えていた。

このプライベートジェットに乗っているのは彼女一人。

彼女の移動の目的の為だけに用意されていた。




異変は空港に着陸した直後に起こった。

到着したプライベートジェットが武装した兵士達に包囲されてしまったのだ。


危険物の国内への持ち込み容疑。



包囲するだけで誰も近づいて来ようとはせず、所属も明らかにしない。

そのまま孤立させるが目的のようだった。




しかしそこは若いながらも代理人として活躍している女傑。

キャメル女史はこんなことでは驚かない。



「私はかのメッセージを発信した依頼人の代理人です。私は今、空港で謎の武装勢力に包囲されています」



相手が名乗らないことをいいことに、マスコミ宛に勝手にスクープを提供しだした。

さらには機内の窓から撮った写真を次々とネットにアップ。


・武装勢力に囲まれてみた(写真あり)



騒ぎをどんどん拡大させていく。

少しすると、マスコミの報道ヘリが飛んできて報道を開始。

マスコミの地上班も到着し、続々とスクープを報道しだした。



すると囲んでいた武装した兵士達が所属を明らかにした。

自分達はこの国の軍である、と。

今は軍事行動中であり、解散しろと。


しかしそこは生粋の報道マン。

簡単には引き下がらない。

なぜかのメッセージを発した人物の依頼人が武装した軍に包囲されているのか。

どこの命令で動いているのか。



もはや証拠など必要としない。

あくまで状況きいているふりをしながら、話題を加速させるように報道していくマスコミ。

そして報道関係者はどんどん増えていく。


これは異世界のユーチュ〇バー関連の話題ではないのか。

新たな娯楽の前にちらつく軍の影。

何かがある。

そう感じ取ったものが多かったのだ。




「これでとりあえず秘密裏に処理されることはなくなったわね。

報道陣が一緒に中に入れば、何も持っていないことは分かるわけだし。

おそらくその命令も下されないでしょうね。

後は私達がどうするか、でしょうね」



「このままのんびりとしていましょう。

こんなこともあろうかと、ですよ」


キャメルさんの言葉に僕はそう返答した。

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