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ただいま転移暴走中  作者: ヨウ
第1章 異世界と地球
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第7話 弁護士

「ユウ。少ししたら電話がかかってくるって」


「うん。知っている人から?」


「えっとね、弁護士さんだって」



弁護士。


弁護士。



あの弁護士だよね。

法律的なやつ。



誘拐犯だと疑われてる?


法律、法律。


あ、密入国?

この場合は密出国っていうのかな?

でも僕のせいじゃないし、アイだって同じだよね。



やっぱり、娘に手を出しやがって系?

法律的には、結婚前だとどうにかなるのかな。

青少年何たら条例?

なんか聞いたことがある。


「アイ、弁護士さんは知り合い?」



大丈夫。

現状帰れないんだし。

きっと大丈夫。



「どうなんだろ。

お父さんの知り合いみたい。

名前ではなく弁護士と言っていたから、私は知らないんじゃないかな」


そっか。

まぁ、危なそうだったら逃げよう。


「弁護士さんが何しに来るかとかは言ってた?」


アイは何か聞いているかな。


「ただ連絡が行くからっていうだけしか言ってなかったのよね。

なんで弁護士なんだろう」


アイでもわからないか。



チャララララー


ああ、時間切れだ。


スマホには見慣れた名前が載っていた。



お父さん。


「もしもし?」


「あ、お父さん、今から帰るけど、何か買ってく?」


「ちょっと待って」


アイに確認する。


「アイ、お父さんだった。

今飲み屋から帰ってくるって。

15分位だと思うけど、帰りに何か買ってくるかって聞いてる。

この時間だとコンビニかマッ〇か牛丼系くらいしかもうやってないと思うけど」



いつもの日常に緊張がほぐれた。


「お、お父様?

えっと、ごあいさつ。

なんて言えばいいの?」


アイがてんぱってる。


「いや、まだ帰ってきてないよ。

これから帰ってくるって。

帰り道で何か買ってくるかって聞いているだけ」


「うん。大丈夫。大丈夫」


「ん。あ、お父さん?

ご飯も食べたし特に大丈夫」


「分かった。

じゃぁ今から帰るから」



電話が切れた。

あ、自宅の方のお風呂を沸かしておこう。

ゲートを移動して自動スイッチを入れる。

飲んできたから、どうせ入らないで寝ちゃう気がするけど。

でも明日というか今日から再び仕事だし、一応この方がいいかな。



チャララララー


再び電話が鳴る。

スマホには番号が出ている。

登録がない番号から、ということだ。



「もしもし?」


「夜分遅く失礼します。

沢木総合法律事務所の小池と申します。

こちらは渡辺雄一様の電話でよろしいでしょうか?」


「はい、僕です」


やっぱり弁護士さんか。


「早乙女愛様は近くにいらっしゃいますでしょうか?」


「はい、隣にいます。かわりますね」


アイにスマホを渡す。


「弁護士事務所に人だって。

女性だった」


「もしもし?

お電話変わりました。

早乙女愛です。

はい、はい。

えっと平成*******

はい、いいえ、はい。

はい、かわります」


アイがスマホを渡してくる。


「私の本人確認がしたかったみたい。

かわってって言われた」


ああ、なるほど。

依頼人はアイのお父さんだしね。

僕の本人確認なんてやりようがないか。


「かわりました」


「ありがとうございました。

早乙女愛様をご本人様と確認しました。

これからそちらに向かいます。

ご住所の方は東京都足立区*****でお間違いありませんか?」


「はい、あってます」


これから来るんだ。

もう電車動いてないけど。

車かな。


「この時間ですし、道も混んでいないでしょうから30分あれば着くと思います。

北千住、だいぶ変わりましたよね」


「あれ?知っているんですか?」


「ええ、高校、大学共に千代田線沿線でしたので。

大人数で集まって遊ぶときは、ボウリングとかカラオケとか行きましたよ。

まだあそこはやっているんですか?」


「まだやってますよ。

1階はだいぶ前に変わりましたけど」


「そうなんですね。

では車を運転するので一度切ります。

着いたらもう一度連絡しますね」


「はい、わかりました」



通話を終えたところでアイに突然口をふさがれる。

ん、ん。

アイの口で。



「ユウ、なんか楽しそうだった」


「え?そんなことないよ?」



どうやら拗ねていらっしゃるようだ。


「なんか盛り上がってた。地元トークっぽかった」


「うん。なんかこの辺のこと知ってたみたい。

ボウリング場が少し歩いたところにあってね」


「むー」


「かわいいよアイ。かわいい」


「ごまかしてる」


「そんなことないよ。

それに、そろそろお父さん帰ってくるよ」


「あ、そうだった。

ご挨拶しなきゃ」



ご挨拶なんて言うようなお父さんじゃないんだけど。

しかも飲んできているから、明日起きたらきっと覚えてない。




「ただいまー」


お父さんが帰ってきた。

予想より遅かったけど。


「おかえりー、お風呂沸いてるよー」


いつも通りに返事をする。


部屋の前を通るときにゲートを近づけて声をかける。


「お父さん、異世界、こんな感じ」


お父さんは僕の部屋の方を向き、ゲート内の僕と目が合った



「ん?手品?」


あんまりびっくりしていない。

空中にゲートが浮かんでいるんだけど。

ゲートから見える部屋の様子は違うはずなんだけど、壁とか丸太だし。


「だから異世界に転移するっぽいって話したでしょ」


「あー、異世界ね、異世界。

かわいい嫁見つけるんだぞ」


連絡した時と同じようなことを言っている。

既に覚えてないっぽい。


「はじめまして。

優一さんのお嫁さんになる早乙女愛です。

お父様、よろしくお願いします」


「おお、かわいい子じゃないか。

もう嫁を見つけたのか。

これで安心だな」



いやいや、展開が早いでしょ。


しかし酔っ払いには通じない。



「ありがとうございます。

不束者ですがよろしくお願いします」


「よろしくねー。

もう眠いから、お風呂は明日の朝はいるからいいやー」


あ、いつもの流れだ。


「お父さん、あと10分程度で弁護士さんが来るらしいんだけど」


「ん、わかったわかった」


分かってない。

絶対にわかってない。

分かってたら弁護士の単語で驚く。

うちで弁護士にかかわったようなことなんて、ないはず。



そのままお父さんは自分の部屋に入っていった。



「ちゃんとご挨拶できたかな?」


ごめんアイ。

多分明日には覚えてない。


「酔ってたしね。

覚えていない可能性があるかな。

明日は普通に帰ってくるだろうから、その時にでもまた、ね」


「ん、がんばる」



これ、僕もやるパターンだよね。

気が重い。



チャララララー


再びスマホの着信音が。


弁護士 小池さん


もちろん登録しておきました。


「もしもし」


「小池です。

そばについたので一度連絡させていただきました。

この時間ですので、家に上がってよいものかどうかの確認をと思いまして。

コインパーキングに入れる前にとりあえず国道沿いに停車しています」


なんとなくお父さんはもう寝ている気がする。


「確認してみます。

アイ、小池さんから。

ちょっとお願い」


アイにスマホを渡す。


「かわりました。

はい、はい」


アイが話し始めたのを確認し、ゲートをお父さんの部屋まで移動させる。



「お父さん、弁護士さんだけど、起きてる?」


反応がない。

既に下着姿で横になっている。


いびきまで聞こえる。


完全に寝てる。



部屋に上がってもらってもいいけれど。

目的もわからないし、一度外で話したほうがいいかな。

お父さんも寝ているし。

車の中に突入するか。



ベランダを意識し、目立たない大きさのゲートを新しく開く。

この程度では元々開いていたゲートの大きさの変化は実感できない。


やはり合計面積かな。



途中でハザードを点けてもらったりして特定し、車に乗り込んだ。

乗り込んだのはゲートだけれど。



「それがゲートというものなのね」


流石に直接見てびっくりしている。

何もない空間にいきなり存在している。


「こんな風に大きさも変えられます。

と言っても最大で直径20cm位ですけど」


大きさを広げ、僕と一緒にアイも覗き込む。

小池さんからは違う部屋の中に居る僕とアイが見えるはずだ。



「そう、20cmでは通れないわね。

物の通過はどうなの?」


「大丈夫です。

手の出し入れもしていますので、生物も通れると思います。

こんな風に」


実際にゲートから手を出して、引っ込める。

既に何回も自分の部屋から物をとっているし、僕だけではなくアイも手を入れて取り出している。


「私もそっちに手を入れてみてもいいかしら?」


「どうぞ」


小池さんがゲートから手を出してきた。

アイがそれをつかんで握手している。



「なるほど、確かに異常事態ね。

渡辺君、所長から二つほど指示を受けているのだけれど、いいかしら?」


「所長?」


「私の所属する沢木総合法律事務所の所長の沢木からです。

早乙女さんのお父様から依頼を受けた弁護士です。

今は愛さんがネグリジェ姿かもしれないということで、私だけが先に来ることになりました」


なるほど。


「あの位ならいいと思うんだけどなー」



アイ、ちょっとさすがにセクシーだと思うんだけど。

一部透けてるし。

かわいいけど。


「何をすればいいのでしょう?」


小池さんがカバンからスマホをもう一つ取り出した。


「これは早乙女さんに臨時で持ってもらうスマホです。

名探偵アイゼンを使ってこの電話番号を特定し、1コールかけてみてください。

間違っていて、相手から折り返しかかってきた場合は、細かいことは説明せずに間違えましたと話してください。」


(アイゼン、あのスマホの電話番号は?)


(*******です)


実際に僕のスマホからかけてみる。


小池さんの持つスマホから着信音が流れたことを確認し、切断する。



「・・・本当にできるのですね。

現地に着いたと所長に連絡を入れた際に指示されたのですが。

2つ目ですが、同じく名探偵アイゼンを使ってこの端末の暗証番号のロックを解除してください」


(アイゼン、このスマホのロックの解除番号は?)


(******です)


スマホを受け取り、ロックを解除する。

解除された画面を確認し、小池さんに返す。


「私の心を読んでいるわけではないのですね。

私も解除番号を知りませんでしたから。

ここまでとは。

まいりましたね」



指示されたことをしただけなんだけど。


「ねぇユウ。アイゼンに聞けば私の家の電話番号分かったんじゃない?

思い出したけど、掲示板で同じようなことやってたわよね」


え、あ、あれ?


「そういえばそうだよね。

掲示板の時も今回も、聞かれたからやっただけなんだよね。

僕が自分でアイゼンに聞けばいいやって気が付いたわけではなく。

自分からアイゼンを活用したのって、そういえば異世界がらみの事だけだったかも。

地球でのこととなると、自分では全然活用できてないみたい」


異世界ではすんなり頼ったんだけどなぁ。


「ふふふ、少し安心しました。

ちょっと所長に連絡しますので席を外します。

先ほども言いましたが、このスマホは早乙女さん持っていてください」


スマホをアイに渡すと、小池さんは車の外に出た。




「おまたせしました。

所長が二人というかゲートを連れてきてほしいと言っているのですけれど。

一緒に来てもらっても平気かしら?

そういえば、このゲートって、車の速度にはついてこられるの?」


うーん、ゲート自体はいつでも作り直せる。

いざとなったら閉じて再び自分の部屋にゲートを作ればいい。


「ゲート自体は、起点を地球から物に変えれば一緒に動きます。

こっちでの僕のゲートもスマホに固定とかしていますので。

ですが、一つ教えてください。

弁護士が僕達に会いに来た目的は何ですか?」



僕達の仲を気にしているみたいではなさそうだけど。

アイのお父さんは何のために弁護士を雇ったんだろう。


「すいません、それを話していませんでしたね。

詳しくは私も聞いていませんので所長が話すと思います。

予想は付きますけど。

私が指示されたのは二つです。

異世界につながるゲートの中に早乙女愛さんがいることの確認。

そして先ほどの、名探偵アイゼンに関する確認です」



つまり本当に異世界に行ったのかを、本人達以外の目で確かめたかったということかな。


「つまりそれは達成されたから次の段階ということでしょうか?」


「実際には75%達成ですね。

ですが所長に報告したところ、次の段階へということになりました」


「達成できていない部分があるのですか?」


あれ?

達成しているように感じるんだけど。


「名探偵アイゼンについては問題ありません。

異世界につながるゲートの中に早乙女愛さんがいる、ということの確認は難しいのです。

ゲートという異常なものがあり、その反対側に早乙女さんがいることは確認できました。

しかしそこが異世界かどうかを確認する事ができません」



なるほど。

ライブ配信で見せた月が二つなのはどうだろう。


「家の外で空を見ると月が二つ浮かんでいます。

ゲートを動かしますね」


異世界側のゲートを動かし、家の外で月が見えるように向きを変える。



「なるほど。確かに月が二つ見えます。

しかしこれは地球ではない、ということです。

この宇宙のどこかの地球以外の星なのか、それとも本当に異世界なのか。

これを確認する事はできないと思います」



言われてみればその通りか。

太陽系にだって衛星が複数ある惑星は存在する。

地球のある世界の宇宙のどこかにこの星があって、そして月が二つある。

そういう可能性もあるだろう。

魔法や能力に関してだって、地球で見つかっていないからと言って、他の星でも使えないとは限らない。


僕たちだってメッセージの表示でそう思っているだけだし。


「確かに証明は無理そうですね」


「はい。ですが根本的には今の月が二つでいいと思います。

同じ宇宙にある別の星だとしても、私達が生きている間に自力で行くことは不可能でしょうから、たどり着けない場所であることに変わりはありません」



結果は変わらない、か。

確かに。


「すいません、話がそれてしまいました。

それで、一緒に来てもらっても平気かしら?」


詳細は所長さんに聞かないとわからないか。


「大丈夫です。

ところで、どこに行くのでしょう?」


「事務所で借りている部屋の一つです。

車ですので20分もあればつくでしょう。

私の予想が正しければ、お二人の新たな拠点となるのではないでしょうか」

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