勇者サイド
三人に縋りつかれて、もにゅもにゅと口を動かす彼を見て可愛いなと思う。
頼られて嬉しいし照れるなって感情を頑張って押さえているんだろうな。
彼は優しいから結局は自分を頼りにして縋って来る人を無下には出来ない。
あの三人を連れて来て初めて役に立ったなと思っていると彼と目が合う
「みんなもこう言っているし、これはパーティーに戻るしか無いよね?」
「それこそ無い」
「うーん、埒が明かないなぁ」
「それはこっちのセリフな」
こう言ったやり取りも久しぶりで嬉しく思っていると溜息を吐かれた。
額に片手を当て、目と瞑って何かを考えている彼の左手を持ち上げ、用意した指輪を手に取る。
「はぁ?!止めろ!勝手に嵌めるな!!」
「まあまあ」
「まあまあじゃねぇんだわ!」
嵌められまいと手を引いたり僕の手を押さえようとするけれども、非力な彼の力で僕を抑える事など出来ない。
まるで子猫の戯れの様だ。
「ぐっ、こんのっ……!」
「ふふっ」
抵抗する彼を少しからかってから指輪を嵌めると彼は直ぐに指輪を外そうと引っ張って足掻きだす。
呪いの指輪だと疑う彼に祝福をたっぷり込めたと伝えると他の三人に助けを求め始めた。
その指輪は僕にしか外せないし、僕は外す気が無いから無駄なんだけどね。
三人に無理だと断られた彼が背に腹は代えられないとばかりに苦渋の選択をしている表情で頼んでくるのを断ると「どうしたら外してくれるんだ」と聞かれた。
「うーん、そうだなぁ。君がパーティーに戻ってくれて、これから先に絶対に僕の傍から離れないって誓うのであれば考えるよ」
「え、じゃあ諦めるわ」
あれだけ外したいと騒いでいたのに僕と一緒にいる条件をだされたらあっさりと諦める彼の潔さに腹が立つ。
君は、そんなに僕と一緒に居るのが嫌なの?
傷付いている僕の事なんて気にもかけずに彼は手の油を拭き取ると財布から飲み代を出してテーブルに置く。
「話は終わりだな、じゃあ俺は帰るからお前らは魔王討伐頑張れよ」
こちらを一瞥もせずにそう早口で一方的に捲し立てて歩き出す彼に一瞬、焦りを覚えたけれども、直ぐに指輪に掛けた祝福の一つを思い出して椅子に座り直す。
後三歩、二歩、一歩、今。
彼の足元と僕の手元に魔方陣が現れ、僕の腕の中には何が起きたのか分からないとぽっかり口を開けた彼が居た。
良かった、ちゃんと発動するか心配だったんだけど上手くいった。
状況を飲み込めていない彼に指輪の祝福とその効果を説明すると「嘘だろ……」と呻き放心する。
魂が抜けた表情をする彼を見下ろして僕はうっそりと笑みを溢した。
これでずっと一緒だね。




