第5話 虹色のマフラー
第5話 虹色のマフラー
リリィは毎日、窓辺で編み針を動かしていた。
虹色に光る糸をすくい、ひと目、またひと目と重ねていく。
彼女の祈りはただひとつ――争いがなくなりますように。
最初の数日は何も起こらなかった。
それでもリリィはやめなかった。
そしてある日、一羽の伝書鳩が舞い込む。
巻物にはこう記されていた。
――「北の国で村と村の争いが終わった」
リリィの胸に温かなものが灯った。
彼女はまた糸をすくう。
次の日も、その次の日も、編み続ける。
マフラーはいつの間にか床をつたい、部屋を出て廊下を流れ落ちるほど長くなっていた。
そして再び鳩がやってくる。
――「南の国で、王子と王女が和解し、兵士たちが武器を置いた」
リリィはそっと鳩の頭をなでると、また虹色の糸を指にかける。
祈りのような編み目はとめどなく続いた。
数日後、三度目の鳩が飛び込んできた。
その小さな足には、こんな報せが結ばれていた。
――「西の海をめぐる争いが終わり、船乗りたちは再び歌いながら港に戻った」
リリィは涙ぐんだ。
編み物をしているだけの自分に、こんな力があるのだろうか。
だが確かに、世界は少しずつ変わっていっている。
「兄さんも、きっと無事だよね……」
マフラーは果てしなく続く。
それは一本の糸でできているのに、まるで世界をつなぐ虹そのもののように、どこまでも長く、やさしく広がっていった。




