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私達だって 

日曜日なのでお早めに

時はアランからエリスを守るように言われた所まで遡る。


二人は月光に照らされながら走る。エリスは屋敷の地下にあるため、急いで階段を下る。



「ここが.....エリスさんの眠っている場所です...か。」


「予想以上に綺麗にされてるわね。いつもイルシュさんが掃除している証拠だね。」


レイナがそう言うと、奥の方で爆発音が聴こえてきた。

二人は互いに顔を合わせ、奥の方へ走る。どんどん近くなるにつれて、誰かが戦っている音が聴こえる。エリスの封印がされている所で戦っている。


リースは次第に見える人物を見て驚く。


イルシュがその手に持ってる剣で、大鎌をぶんぶん振る女と戦っていた。その女は透き通った水色の髪をし、「その腕で!?」と思う位に大鎌を手に持ってる。


「あら、あの子の連れだった女の子達じゃない。珍しい。ハイムがぬけぬけと見逃すなんて。そんなにあの子と戦うのを楽しみにしてたのかしら?」


「よそ見は厳禁ですよ!」


イルシュは女がレイナとリースの方向を見た隙を狙い、剣にて突きを繰り出す。しかし、女は大鎌の刃を盾とし、難を逃れる。


「とりあえず加勢するわイルシュさん。<貫魔王槍突(カイ・スピネル)>」


「私も、おりゃーー!」


リースの魔法とレイナの斬撃、そしてイルシュの剣が女に襲い掛かる。まさに数の暴力といった所だろう。


「うわっ。こりゃ凄い。」


女はそう言いつつ、大鎌に魔力を込め切れ味を増させ、三方向からの攻撃を全て弾き返した。

なんという技量だ。


しかしレイナはこんな事では止まりはしない。

さらに右から下からと次々と斬り掛かる。イルシュはその中、女の避ける位置に何度も斬る。女の大鎌がレイナとイルシュに当たりそうになったらリースが攻撃魔法を展開する。


超滅連獄炎(アスト・フレイム)>や<寒零度吹雪(アイ・シクル)>を使えば、その周りにいる二人も攻撃しかねないので広範囲魔法は禁じている。


女が苦汁な表情をする。押されているのだ。さすがに技量があっても、数の暴力には勝てなかったと言う所だ。


「これで終わりですかな!」


「.....つぅ。これはヤバいね。[魔技][門番の大鎌(フルサイズ)]。」


女が魔技を発動すると大鎌が妖しく光り、向かって来たイルシュに一振りする。すると大鎌は空振りをしたのにも関わらず、イルシュの胸元を切り裂いた。


レイナはこの魔技を見て、すぐに一歩下がった。


その行動に女は「へぇ」と驚きの表情を浮かべる。


「勘が鋭いわね。もしあなたがあと一歩でも近づいていたら、この大鎌の餌食になってたのに。」


女は大鎌を優しく撫でる。危うい場面だった。女の言う通りにレイナがあと一歩でも近づけば、あの大鎌の魔技の有効射程範囲の中だった。


「魔技.......ねぇ。こりゃ面倒になってきたわね。何しろ射程範囲が広いんですもの。」


「イルシュさん、大丈夫?」


リースは女が何にもしない内に、イルシュの応急手当をする。本格的な治療をしたい所だが、今後の事も考えて、ここでするにはリスクが大き過ぎる。


「ふっ。これで二対一ね、戦いやすくなるわ。」


「それでも貴女の不利は変わらないけどね。」


「へぇ。言うじゃない。よっと!」


大振りをした女に対してレイナはその身を地面に近づけ、そこから一気に駆け出す。女の魔技の射程範囲がまだ曖昧な今はそうするしか道はない。


女はレイナの動きを読んでいた。


「お見通しだけどね♪」


大鎌をすぐに手放し、女は<前方爆散(ボウカ)>を唱えた。

レイナの体が後方にぶっ飛び、煙が舞う。なんとか腕をクロスに構えて防御するがそのダメージは逃れられない。


女はそのふっ飛んだレイナを見て驚く。いつも右手に持っている剣がその手にないのだ。


「え?剣は...?」


「ここだよ。う・し・ろ。」


女が後ろを振り返り、身構えた時にはもう遅い。

リースがレイナの剣を持ち、その剣を振り降ろす。瞬間、女の横腹が縦に切り裂かれる。


女は苦悶(くもん)の表情をするが、素早い動作で大鎌を握りしめ剣を持ったリースを牽制する。

剣にあまり馴れていないリースは剣を大鎌によって離してしまうが、そこをレイナが飛び出して剣を受け取る。


そしてまたレイナは女に襲う。


さっきの戦法はもう通用しないだろう。あれは、女の読みの裏をかいたものだ。女はレイナとリース、どちらも警戒していた。それをレイナが女の視線を一瞬だけ奪った。<前方爆散(ボウカ)>を撃たせた時だ。


あの時だけは、視線がそこに行ってしまう。その隙にレイナはリースの方向に剣を投げた。


それは凄い芸当な物だ。如何に達人であれど難しいだろう。


しかしそれを成功させたとはいえ、二度目はない。

さらに二人をマークしながら戦う筈だ。


「くっ、さすがに素人の剣さばきとはいえ、応えるわね。」


「そうでしょ?リースは天才なんだもん。」


「褒めても何もでないわよ、<寒零度吹雪(アイ・シクル)>」


リースが軽口を言うのを合図にレイナは一旦後ろに下がる。

ー刹那、凄まじい吹雪が女の周りに立ち込め、凍えさせようと猛威を振るう。


女は大鎌を両手で器用に回し、吹雪を蹴散らしていくがそんな程度ではリースの<寒零度吹雪(アイ・シクル)>は止められない。次第に女の体にも凍傷が入っていく。


パタン......と女が倒れるのが影を通して見えた。


「これで終わりかしら?」


「そうだと良いのだけど。とりあえず今はイルシュさんに回復魔法を掛けてあげないと。応急手当だけじゃあかわいそう。」


「分かった。なら私はあの大鎌の女の方を調べてみる、なんか持ってるかもしんないし。」


イルシュはリースの回復魔法によって、顔色が良くなった。さすがに、傷を元通りにするまではリースは出来ないので、ちょっとした気休め程度だが効果はあった。


レイナは女のポケットをごそごそと何かあるか確かめる。


すると、ポケットの中から小さな小瓶が出てきた。と言っても別に中身は空っぽだしよく分からない。


「なんだこれ?空っぽだし........」


「ん、どれどれ?」


レイナは空っぽの小瓶をリースに渡した。


「ん~。この小瓶から微かな魔力を感じるけど.......これってアランの魔力に似ているような........?」


「じゃあこいつはそのアランに似ている魔力をその体に服用したってことでいいのかな?」


「多分.....てことは.....」


二人は顔をお互いに見合った。


その時、女が持っている大鎌が強く握りしめられた。

そして起き上がり、目の前にいた二人を斬り付けた。


「うぅっっ。」「なっ?」


「ふぅ。危なかった。ハイムからもらった小瓶がなければ、私今頃死んでいたわよ?」


「なっ、、小瓶を服用した位で回復するなんて.....。」


「化け物かしら?でも悪く思わないでね、こちらも必要なことだったんだから。」


レイナとリースは傷口を必死に塞いでいる。

なんとか動けるようになったレイナは剣を持ち直し、女に向かって突きをして封印を解除するのを妨害する。


「へぇ。結構深い傷だったような気がするけど、あなたは頑丈なのね。お友達の方はそれなりに苦しんでいるみたいだけど。」


その通りだ。リースは今かなり危ない状況になっている。レイナは常時防御していて不意討ちにも強いが、リースはそうではない。魔法を極めようとしてるので、魔法攻撃なら本人も不意討ちなどには耐性がある。


しかしリースは「武」に心得がない。


「ふん、大丈夫よ。あの子はあれでも強い。それに...」


「それに?」


「今ここで私があなたを倒せば心配いらない。」


「言うじゃない。その言葉、実現出来たらいいわね。まぁ不可能だけど。」


女はそう挑発した。その言葉をきっかけにレイナは女を一閃する。

しかし女もその程度の攻撃には馴れている。大鎌の刃を盾にし、流れるように地面に剣を反らして大鎌の持ち手の部分でレイナの腹を狙う。


レイナは左手で掴むが、その勢いを抑え込めず腹に当たってしまう。先ほどの傷付いた部分が刺激され、出血がより激しくなる。


「ぐふっ。」


「弱った所を狙うのは戦闘の常識よ。」


女は持ち手に付いたレイナの血を払う。レイナは左手で押さえるが酷くなっていく。


「これで終わりかしら?意外とあっけなかったわね。そりゃ年齢が違うものね、当たり前と言ったら当たり前か。ちゃんとそこで待っているのよ、別に私もあなたを殺したい訳でもないから。」


女は後ろを振り向く。その時、灼熱の炎が女を襲った。


「やるじゃない。あんな状態でも撃てるなんて、ほんとあなた達二人は根性があるわね。」


「ぅ.....る....さい。」


今<超滅連獄炎(アスト・フレイム)>を放ったのはリースだ。

立ち上がろうとするが、やはり力が入らない。


「一発だけ?ならそこで待ってなさい。」


女は封印を解除しようと魔法陣を扉に描いていく。キュインウィンと魔法陣を消す音がそこには響いた。


「あれ?こんな簡単な魔法陣なの?私の過大評価だったかしら。もっと複雑で難関なものだと思っていたのに。正直がっかりだわ。でも簡単に済むならそれで良かったか。」


ガチャリと扉が開く音がした。

女が中を見るとそこは暗く、棺がポツリと暗闇の中を淡々しい光で照らす。


近づいて見るとそれが複雑な術式で縛られてるのが分かる。これが[呪い]の術式だろう。複雑複雑怪奇な術式だからこそ、それは決して解けなくて対象者を苦しめる。


女は棺に触れる。すると、棺の蓋が開いた。


「え?誰も...入ってない?」


「そういう事だ嬢ちゃん。」


女が動こうとした時にはもう遅い。剣の腹でおもいっきり殴られた女は横の壁に叩き付けられた。

メリメリと女の体が壁にめり込む。


額から血が出て、そこらじゅうから痛みが発生する。


女は最後に見た。一人の巨漢が大剣を片手で持っている様を。



誤字についてのご指摘がありましたので、最初から直している途中ですが「ここ直して!」と言う見落としがありましたら言ってください。

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