魔王の友は千年ぶりに邂逅する
タイトルの意味........合ってるのかな?
「なっ!?」
「おりりゃゃーー!!」
ハイムは背後から現れた巨漢.......エリスから特大パンチを受け、吹っ飛ばされる。
その身に纏う魔力である程度のダメージは軽減されたが、壁に背中を叩き付けられ肺の中の空気が一気に吐き出される。
「よお、相変わらずのバカ力だな。本気で纏ってないとはいえ、あの硬さのお兄ちゃんを吹っ飛ばすなんて。」
「なあに。久しぶりに目覚めてこの位出せるなんて、アランの掛けた[呪い]の技術が凄いって事だろ。お前のおかげだ。」
「なぜ?お前は封印されてた筈だ。」
ハイムは起き上がり、エリスを凝視する。本物かどうか疑っている頃だろう。
しかし残念だなエリスは正真正銘本物だ。
「こんな簡単な事も気がつかないのお兄ちゃん?」
「お兄ちゃん」という言葉に舌打ちをするハイムだったが深く考え、答えを導いたのだろう。顔が歪んでいる。
「気づいた?俺は帰って来た時から、何らかの存在が俺達を見張ってるのに気づいた。まぁ以前からエリカを不完全とはいえ、暴走状態にした奴がいるって事は掴んだしな。」
「お前がその事を掴んだとはいえ、ちゃんと見張りを付けていたと思うが?」
「別にかわすのは難しくなかったよ。トイレ行った時は中まで見られてなかったし。その隙に地下まで転移してエリスを解呪して、ちょっと夜まで待っててくれって頼んだ。案外緩い監視で助かったよ。」
ハイムはその説明に「あ~」と何か納得したような表情をした。
思い当たる節でもあるのだろうか。
「ん?思い当たる事でもあるのか、アランの兄貴とやら?」
エリスはちょっと顔を苦くさせる。
「いや......ああ。あいつなら適当にやるからな。.......そうか。まぁもう今日はいい。さっさと帰るか。」
ハイムは自分の魔力を通常状態に落ち着かせた。
「いいの?これ以上戦わなくて?」
「ふんっ。そう易々と挑発に乗ると思ったか?目的対象は目覚め、作戦の内容も出来なくなった。所詮あいつらも何も口出ししないだろう。」
ハイムは踵を返し、立ち去ろうとする。
「あっ、じゃあ教えてよ。あんなプライド高いお兄ちゃんが何処に使われているの?」
「だから........はぁ、もういい。一つ忠告しておく、名を確か...ヘイネと言ったか。そいつには注意した方がいい。ただの人ではない。」
ハイムはそう言い残し、空を舞った。その様は空を飛ぶ鳥を連想させる動きだ。
ハイムが去り、静かになった中、最初の一声を放ったのはエリスだ。
「ふーん。あれがアランの兄貴か。とんでもない修羅場を潜り抜けて来た猛者なんだろう。風格からして分かる。ありゃヤバいぞ。」
「ああ。自慢のお兄ちゃんだよ。ふぅ。とりあえず終わったか。」
「いいえ。私はまだお父様にご挨拶しておりませんわ。」
エリカはエリスに近づく。アランは親子水要らずの方がいいと思い、その場から離れた。
「本当にお久しぶりですわね。千年ぶりといった所でしょうか。」
「あぁ。にしても.....大きくなったな。どちらかと言ったら、俺より母さん似だなこりゃ。」
歩くアランはその言葉以降、聞き取りにくくなって自然と意識を別の方へ向けた。
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ベッドに眠りにつこうとしたアランだったが、その時ドアがコンッコンッと鳴った。
ちょっと不機嫌になったアランはドアを開ける。そこにはエリスが一瓶のお酒と、二つのコップを持っていた。
「よお、久しぶりに飲もうぜ。千年ぶりの酒だ。一人よりお前と飲んだ方がいいだろ?」
「そうだな。俺もこの体に転生してから、少しも飲んでいないしな。飲むか。」
俺はそばにあった小さな机を部屋の真ん中に置き、お酒とコップを置く。
エリスはすぐさまお酒の蓋を開け、コップに注いでぐいっと飲んだ。俺は静かに注ぎ、一口飲んだ。
「あー。ほんっといいな、やっぱり千年も経てば酒も美味くなるもんだ。」
「確かに。ただアルコール濃度が高いだけの昔とは大違いだ。それより、体の調子はどうだ?何か変な所はないか?」
「大丈夫だ。自分を信じろ。あんな複雑な呪いを受けてたのに、今は何ともない。しっかし、よく考えたよな。[呪い]を使って、俺を封印して死んだように見せかけるなんざぁすげぇよ。」
「そんな褒められると照れる。」
俺はそのエリスの言葉をかき消すように酒を一杯飲み干す。
エリスは「あっ」と何か思い出した素振りを見せ、ニヤニヤ笑いながら
「そういや、お前。俺の娘とは何処まで進んでいるんだ?それとも、あの銀髪の嬢ちゃんか?金髪の方か?」
「なぁっ?べ、、別にそんな何もしてない。そもそも俺にはそんな感情は付いていないし。やる訳がないだろう?」
「そういやそうだったな。まったく、何ともな感じだぜ。愛を知らず生きていくなんぞ可哀想に。」
エリスは哀れむようにアランを見た。
「そうでもないさ。これでも自分の人生は豊かだと思ってるぞ。まぁ転生してからは、平凡に生きていこうと目標を掲げているけど。」
「平凡ね~。でも娘も悲しいだろうな。報わないと分かりつつも愛を捧げる。滑稽な物語だが、だからこそ面白い。」
エリスのその言葉はアランにも聞こえず、虚空に消えてった。
「ん、何を言ってるんだ?」
「いや何でもない。それで、聞きたい事があるんだが。一体誰が、娘に暴走の魔法を掛けたんだ?」
「恐らく俺の兄、ハイムであってる。でもあの魔法は、ただ暴走状態にさせる訳でもない。」
「どういう事だ?」
「エリカは夜になると暴走し、朝には通常状態に戻っているとイルシュさんから聞いた。それはおかしいんだ。暴走状態になったのに、戻る。夜しか効果が出ない。」
「へぇ。」
「だから俺はこう考えている。恐らく今回エリカにその魔法を掛ける命令をした奴らは、洗脳魔法の実験としてエリカを被験者にしたのではないかと。丁度、エリカは吸血鬼だし暴走させるのもお兄ちゃんなら何とか出来る。」
「被験者か。まったく、その組織は一体何をしようと画策しているのか気になるな。」
エリスは一口酒を飲み、思考を巡らせる。
「そういえば、エリスの所に襲って来た奴ってどうしたんだ?」
その言葉にエリスは一瞬体を停止させた。その反応にアランは「まさか....」と脳内に予測を建てる。
エリスは、まるで叱られた子供のように口をもごもごさせながら
「悪い、そこら辺にポイッと投げちゃった。」
アランは椅子の背もたれに寄り掛かりながら、深いため息をつく。
もしあの女が居れば、何か組織の情報を知れるチャンスだった。
それより、アランは去り際ハイムに言われた忠告を思い出す。
ヘイネとは一体誰の事を言っているのだろうか。俺の知り合いの中にそんな名前の人はいない。だとしたら、これから先出会う可能性のある奴なのか?
そんな不安を抱きつつも、エリスと酒を酌み交わすアランであった。
見てくだった方、誠にありがとうございます。




