表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
snow white  作者: 小山 優
後章
20/37

第十八章 傍観者

 宮殿、その女王のものだった部屋に、一人の男がいた。

「……」

 クライス・イルスタント。時の革命王であり、これから殺される三日天下の王様が、一人で佇んでいた。

 その横には、何故か小さなイスとテーブル、その上にささやかなティーセットがあった。

 ティーセットの陶器ポットは、保温作用のある魔法の石の上で暖められている。

 クライスの右手には、進行形で暖められているやかん。暖めているのは手で、手段は勿論魔法だ。

 やかんが蒸気を勢いよく吹き出して沸騰を知らせると、クライスは即座に動いた。

――美味しい紅茶の作り方。

 常人には何をしたのかわからないほどの速さで、事前に茶葉を入れておいたポットの蓋を開ける。

――ポットと茶葉を事前に暖め、汲みたてで沸騰したてのお湯をすぐに注ぐ。

 ポットの中にお湯を入れ、茶葉が立つぐらいで止める。

――待ち時間は四分半。やや濃い目が飲みたい。

 しばしの休憩。城の外の喧騒が遠く聞こえる。

 時間を計り終わり、ポットからお茶をカップに注ぐ。

 そこで一息つき、イスに座る。

 地味だが綺麗な装飾がされたカップを静かに口に持っていく。

――カップも事前に暖めておけば尚良い。

 喉を通った味は、合格点。姉に言わせれば、「主人の好みと違うから及第点」だろう。その『彼女』が好きなのは、実は緑茶だ。同好の士がいないので隠しているようだが。

――無理に周りに合わせて紅茶なんか飲んで、言ってくれればちゃんと用意したのに。

 茶葉のケースを机に置いた。

 紅茶を飲み干し、殺風景な部屋を見渡す。

 ベッドも机もなくなった女王の部屋で、バルコニーからの月の光が、冷たい石の床を照らしている。

「……広い」

 呟きを聞く者のいない寂しさと、聞いてくれたのかも知れない女の子を思って、頬を涙が伝った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ