エピローグ・レイ
ちょっと、レイ視点でのエピローグを追加しました。
後味、悪いかもしれません……。
でも、レイなら、こう思うような気がするのです……。
あれから、十年の月日が流れた。
僕は今、国連に籍を置いている。
ここでの日々の中、僕は『あの時』知らなかった数多くの事実を目の前に突き付けられている。
そう、あの頃の僕は、まさに、何も知らない子供だったのだ。自分は全てを知っていると思い込み、『悲惨な現場』として入ってくる情報がすでに淘汰しつくされたものであることにも気付かなかった、愚かな子供──それを思い知らされた。
今、エールリッヒが目前に立ち、あの時と同じ提案をしたとしたら、果たして僕は、それを拒否することができるだろうか。
看護婦として赤十字で働く瑠衣さん。そして、常に彼女の傍にいる抄樹は、僕よりも更に激しい現場に身を置きながらも、僕のような迷いは一切持っていない。
ただひたすら、ヒトの善性を信じている瑠衣さんと、その瑠衣さんを信じる抄樹。
あまりにも単純な二人の信念は、時に何よりも強固な鎧となる──二人の持つ強さが僕にもあれば、僕はこれ以上の自問を繰り返すことはないのだが。
僕には、瑠衣さんには見えることのできるものが、見えない。
自らの弱さを噛み締めながらも、僕は再び願ってしまう。エールリッヒが僕の前に立ち、手を差し伸べることを。
その時、僕はおそらく躊躇いはしないだろう──いや、きっと。
なぜなら、このヒトの世界で争いが絶えることは、決して、無いからだ。
今、このときも、共食いは続いている。
と、いうことで……もしもこのエピローグがないほうが良かった、と思われたら、是非、ご一報を。
読んでくださって、ありがとうございました。
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