序話と第一話
「いいか?お前たちには危険人物を逮捕し、危険因子を排除する義務がある」
さあっ、と風が吹き、落ち葉が舞う。
「女子供を守る義務がある」
『はいっ』
男達が声を揃えた。
朝のカラスが鳴く。まだ太陽の光は冷たい時間。そんな中、国の軍は大きく動こうとしていた。
しかし、一般市民に影響が出るのは、まだずっと先のこと。
⸻
「ヴェンルー、起きてー」
もう何回目だろうか。ふと時計を見る。7時40分。反射でガバッと起き上がった。
8時には家を出て、学校に行かないといけない。滑るように階段を駆け降りる。リビングでは母が料理をしていた。
「あ、おはよ」
テーブルの上には2人分の木の食器がある。
「ん、おはよぅ」
「学校間に合うの?」
「わかんなぃ」
「とりあえずご飯食べちゃいな」
椅子に座り、硬めの卵焼きを手で掴む。
瞼が重い。
「ヴェンル、起きて!」
母に叩き起こされた。いつのまにか寝ていたらしい。もう時間がない。口の中に朝ごはんを詰め込んだ。
名を、ヴェンル・ガーストと言う。6歳。将来の夢は、ドラゴン使いの勇者になること。学校に入学して、2週間が経っていた。
口の中のものを飲み込むと、手をズボンでふいて学校用の革鞄に駆け寄る。眠い目を擦りながら鞄のボタンを開けると、昨日の竹でできた水筒がものすごい存在感を放っていた。
「……」
とりあえず横に置いておこう。その下にはくちゃくちゃになったプリントがある。
もう7時55分。8時には出なければ遅刻する。
(えっと……お弁当と、あと教科書は入れたから……)
跳ねる前髪を手で押さえて鞄を背負った。小走りになりながら玄関に向かう。
「行ってきまーす」
靴を履きながら母に言う。
「行ってっしゃい」
母は家事をしながら返事をした。
玄関のドアを開けると、小鳥のさえずりが聞こえて、快晴の空からは眩い光が降り注いでいる。息を吸うと同時に、畑の青い香りがする。
まだ冬の匂いが残る空気の中、ヴェンルは一歩、また一歩と踏み出した。
うちに父さんはいない。ずっと気になっているが、まだ怖くて理由を聞いたことはない。
(そういえば今日の1時間目は国語だなぁー)
風で畑に植えてある草が揺れて擦れる。
あそこは、新しい友達、グローヴの家だ。玄関の前には、この前遊んだときに使った氷属性の剣が立てかけてあった。
そこから少し歩くと、人通りが増えてきた。
(あ、校門が見える!)
ヴェンルは吸い込まれるようにぴょんぴょん跳ねながら学校に入った。




