第四十駆
摺針峠で峠道の登りの練習に来ていた。
少年が登ってくるのを私は上から見ていた。
前回、同じ内容の練習をしているが少年の成長を感じていた。つらそうではあるが足をつけずに登りきる事ができるようになっていた。
「ふ、ふっ、フゥー」
少年が登りきって息を整え始めた。
「大丈夫そうかい?」
「はい、もっと余裕ができたら良いんですね。」
そう言って少年は自分が登ってきた坂を見下ろした。
「えっ、あれ。」
少年の指さす先を見ると、物凄い勢いで坂を登ってくる自転車がいた。
あっという間に登ってきた自転車の主は二人の前に止まった。
「あれ?どこかの自転車部の子?
でも、自転車は普通のやつだね。
そういうトレーニングか…それもありだな。
あえて性能の低いやつで負荷をかけるのも良いかもしれないね…、ただそうすると…」
「えーと、あなたは?」
私が聞くと
「ああ、すみません。
俺は普段トライアスロンの選手をしていて、今は琵琶湖一周する大会に参加するので、その練習で来てて帰る所だったんですよ。あなたが指導者ですか?」
「プロの指導者ではないんですけど。」
「なるほど、それでお二人は何のために練習してるんですか?」
「あなたと同じでビワイチタイムトライアルチャレンジに一般で参加するために練習してます。」
「ああ、俺はプロの部で出るよ。
でも、そうかぁ。こんなにしっかり練習するんですね。」
「実は…………」
私が少年の参加する理由などを説明した。
「へぇー白血病の友達のために優勝を目指すか。
すごいね、私利私欲の俺とは大違いだよ。
実際に走って見たりもしたの?」
「あっはい。海の日の連休の時に。」
「ふーん、それで何か課題はあったの?
それともただ走って終わりって感じ?」
「マキノ町の峠道、それから平地でもスピードをあげて体力を残しておく方法とかが課題です。
走りきれなければ意味がなく、走りきるだけでも意味がないんです。優勝しないと意味がないんです……」
「でも、現実的に自転車を初めて数ヶ月で大会に優勝するのは難しいだろうね。
何年も続けてきてる人がいて、その人達に勝たないといけないわけだから。」
「それでも……優勝します。」
「なるほど、悪くないね。
そこまでの覚悟があるなら俺から少しアドバイスをしよう。」
「良いんですか?」
「もちろん。俺のアドバイスは一朝一夕でどうこうできるかはわからないしかなりの努力も必要だよ。
それでもやるかい?」
「当たり前です。お願いします。」
少年は力強く言った。私はせっかくの機械なのであまり口を挟まない事にして見守る立場になった。




