第三十九駆
「少年、ひとつ提案がある。」
「何ですか?」
「知り合いの飲食店の人が去年の大会に参加したらしくてね。その時にお店の宣伝をしながら自分のお店の出店まで走ったらしいんだ。
そこで、お店の宣伝とか人に伝えたい事があったりした場合は事前申告で許可されれば結構色んな事をしても良いみたいなんだ。
自転車のカゴに掲示物をつけたり着用する服のデザインで主張を書いたりね。テレビとか公式のYouTube配信があるから色んな人の目に入ることができる。
そこで、私からの提案はずばり骨髄バンクへの登録を呼び掛けるメッセージを主張する事だ。
まだ詳しくは調べきれてないけど、白血病は血液がガン化する事で正常な血液をつくる事ができなくなる病気で骨髄移植をして正常な血液を作れるようにならないと治らないらしい。骨髄バンクはそうした移植を待つ人たちのための公的な機関らしい。
毎年数万人が白血病などの重い血液の病気になり、その中の2,000人くらいが骨髄移植を待っているらしい。
でも、骨髄の適応性は数百から数万分の一くらいの確率らしい。しかも登録は18歳以上54歳以下で健康状態の良好な人でなければならない。
親族であっても適合しない事があるくらい厳しい状態にあるらしい。しかも、現在の登録者の約6割が40代以上と若年者層は減少しているらしい。
少年が優勝して賞金を獲得できたら、治療費とかの足しになるとは思うけど実際に病気の治療で完治までいくのは難しい。だからこそ、もうひとつ少年が頑張るための理由を作ろう。初めての挑戦で絶対に優勝できるとは私は言いきってあげられない。
だから、少年が大会にでる事自体に意味を持たせてあげたい。骨髄バンクの宣伝をしたから登録者が絶対に増えるとかはないかもしれないけど、心動かされた人達の中に少年の友達に適応する人が見つかれば良いし、他の誰かを救えたならそれでも良い。
一生懸命に頑張ってる人を見たら、人は感動するんだよ。どうかな?」
「…ありがとうございます。
僕では思い付かなかったような案です。お金があっても治らないみたいな話は聞いた事があったんですけど、お金を渡すことくらい僕にはできないと思ってました。
やります、やらせてください。」
「OK、じゃあ骨髄バンクの方にも連絡入れて許可貰って大会の方にも事情を説明するよ。
もしかしたら大会関係者の人達も中継とか配信で多く映してくれたりするかもしれないしね。」
「よろしくお願いします。」
少年は頭を下げた。私からすれば感謝されるような事ではない。私は大会に参加する事も少年を必ず優勝させるとも言いきれないから程度なのだから。
少年の努力が報われるように、私はできる限りの準備と作戦を作ることしかできないのだから。




