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悪魔貴族譚~ノビリタス・ディアボロス~  作者: 中谷 獏天
第17章 蝗害対策と家族。
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7 蝗害。

《はぁ》

「それでも、北で鍛えられたご令嬢なのですか。この程度で、疲れた顔をなさるなんて、さぞアレキサンドリア様やヴラド殿下がガッカリなさるかと」


 何よ、偉そうに。


《何よ、たかが庶民の分際で》

「その庶民に何もかも負けている分際で、憎まれ口ですか、何処までも卑しい方」


《貴族令嬢を侮辱したわね》

「最初にアナタが庶民の分際で、と侮辱したのでは」


《あの程度》

「であれば、この程度、我慢なさって然るべきかと。役立たずの無能令嬢、なのですから」


《煩いわね!この年増っ!!》


 アナタが悪いのよ。

 アナタが煽るから。


「つっ、口で負けたからと言って、今度は手を挙げるだなんて。何処までも下品な」

《煩いって言ってるのよ!!》


「ふっ、ふふふ、悔しかったら私をしのげば良いだけだと言うのに」

《煩い、煩い煩い煩い!!》


 許さない。

 踏み潰してやる。


 殴り殺して、踏み躙って。


「北の令嬢も、大した事は無い様だな」

『えぇ、そうですね』

《アイボリー》

「あぁ、大丈夫よ、どうせひ弱な令嬢の暴力だもの」


「だが手当を、帝国からの使者で有る事に変わり無いのだから」


 帝国。


《えっ》

『庶民と言えど、帝国の王城にて家政婦(ハウスキーパー)をなさっていた方です、少なくともアナタより地位は高い』

「恥を知れ、庶民と言えど何処の者か、それ次第で変わるのだと教えた筈」


『ですが、忘れてしまっていたのでしょう』


 ルイーズ騎士爵なら。


《そ、そうなのです、しかもあの女が》

『残念です、ココで反省し謝罪の言葉を言って下されば、まだ甘い処分が出来ると言うのに』

「あぁ、実に残念だな、見せしめ令嬢が誕生してしまうとは。実に残念だ」


 笑っている。


 嵌められた。

 最初から、私は、見られていた。




『ちょっ、何が』

「あぁ、大丈夫ですよ。単なる見せしめの為に炙り出しただけ、ですから」

「でも、お怪我をなさって」


「大丈夫です。実はこの隊の中に、傷病の回復が出来る方を、帝国よりお貸し頂いているんです」

『けど、だからって、なら私に』


「いえ、アナタ様が傷付けられる事は、更に罪を重くしてしまいます。私は庶民、罪を犯させるには相応しい立場は私だけ、ですから」

『いやこう言っては何ですが、アガットさんが』


「ダメですよ、私の経験や知識は替えが利くのですから」

『でもです、ご相談を』

「カメリア侯爵、先ずは治療を」


『あぁ、失礼致しました』

「いえ、では、失礼致しますね」

「はい」


 以前であれば、きっと、私もカメリアさんと同じ意見を言っていたでしょう。

 ですが、カメリアさんには立場が有る。


 そして私は、未だに守って貰っている立場。

 だからこそ、良く分かる。


『ルドルフ陪臣』

「もう、同じ事は2度となさらないかと。今回は、仕方の無い事、と思うしか無いんです」


 立場が有る。

 だからこそ、背負えない事が有る。


『分かりますが』


「ココが醜悪だからこそ、こうして守られる事になってしまう。少人数の弊害ですが、いずれ誰かが犠牲になり、見せしめが必要になったかと」


 庶民だから、と無礼を働いても良い。

 他の王族候補からの紹介だから、と尊大で傲慢な態度を取っても良い。


 そう考える輩が居る限り、何処でも起こり得る事。


 いつか、誰かが不愉快な思いをする。

 それが、この国、ですから。


『“あまり、正義感は無い方だと思っていましたが、素手で百叩きの刑に処してやりたんですが”』

「“手が腫れちゃうからダメです、ですが、煽って石を投げる許可は取ってみましょう”」


『宜しくどうぞ』

「はい、お任せを」




 おい、アレ見ろよ。

 何だアレ。

 おい、何て書いて有るんだ?


 北より貸し出された、元使者、現令嬢だってよ。

 おいおい、何で令嬢があんな事になってんだよ。

 アレか、見せしめってヤツか。


 らしい、庶民だからって、東の城で働く偉い使用を侮辱し殴る蹴るを行ったってよ。

 おいおいおい、マジかよ。

 何でたかが令嬢の分際で、庶民をバカにするかねぇ。


 何の地位も無い、しかも親が少しでも悪さをしたら、俺達と同じ単なる庶民になるってのにな。

 いや、最悪は強制労働所だろ。

 じゃあ、この後は強制労働所送りかよ。


 いや、書かれているのはさっきのと、令嬢や令息に侮辱されるのが嫌なら石を投げて良いってさ。

 そんなの、投げるしか無いだろ。

 けど死なれたら困るし、小さいのにしておくか。


 但し1回だけ、侮辱の言葉も合わせて良いってよ。

 おぉ、やるじゃん。

 良いな、よし、投げるか。 


「税金を無駄にするなー!」

《侮辱するなら返しやがれー!》

『殴る蹴るの前に働けバカヤロー!』


《くっ》




 言い返せば、不味い食事に切り替えられるし、水も抜かれるので大人しくしているだけ。

 でしょうね。


 何ともまぁ、苦々しい顔をなさる。

 それなりの容姿、それなりの家に育ったのに、勿体無い。


《カメリア?大丈夫?》

『あぁ、それなりだったのに、勿体無いなと思いまして』


《そうだね》


 また、オッパイを。


『オリガ様、ソレ、他の方になさってないでしょうね』

《うん、カメリアだけだよ》


 何か、嫉妬してる様に受け取られかねませんね、コレ。


『いや、お仕事であれば構いませんが』

《大丈夫、勘違いされそうな事は同性にもしてないから》


 まぁ、非童貞だそうですし。

 しかも、非処女て。


『すれば収まりますか、ソレ』

《あぁ、性欲と好意の混同ね。うん、無いよ》


 既に先手を。

 流石、手練れ。


『そうですか』

《こうやって一緒に居るだけでも幸せだよ》


 自分の容姿が周囲と似た様な土台に立てば、少しはトキメクか、勘違いをしそうになるかと思ったんですが。


 何ですかね、異次元的な相手に言われているせいか、宇宙猫と化してしまうと言うか。

 急に、離人感、画面越し感が出てしまう。


『では、折角こうして好意や情愛を理解したんですし、良く周囲も見渡して頂けると助かります』

《うん》


 百合に興味の無い、百合に好意を持たれた方って、こんなお気持ちなんですかね。




《んふふ~》

「機嫌が良いな」


《だってココ、良い村なんだもん》

「あぁ、被害も無く、犠牲も無いからな」


 それに、女騎士団の制服が、やっと完成したんだよねぇ。


 今までは男物の衣類を幾つか直して着せてたんだけど、プロの、しかも帝国の仕立てで。

 夏服と冬服、それに正装用と常用の4種類に、コートまで有るの。


 常用は上着の丈は腰まで、でもウエストはキュッと締まってるヤツ。

 でズボンは太股周りがフワッとしてて、腰と足回りがピッタリしてる、動き易さ重視の形。


 逆に正装用は、上着は燕尾型で、もう全身がピッタリフィット。


 で色なんだけど。

 やっぱり常用は灰色、汚れが目立たない様にと、田畑で馴染み過ぎない様にって。


 けど、ココで腕章が出て来るんだよねぇ。


 ルイーズは団長だから、白色に青で家紋を入れて。

 副団長のオリガとアナスタシアのは、逆に青に白、一兵卒は水色に黒。


 で正装用よ。


 ルイーズのは、全部が真っ青で、刺し色に黒を入れてん。

 バリカッコイイ配色で、しかも肩掛けの帯刀ベルトまで有るの、で色は差し色と同じ。


 コレで、おトイレも安心して出来る仕様。

 向こうの女性警官って男性用の装備と同じだから、トイレの時に装備を全部外すから大変なんだって、海外ドラマで見たんだよねぇ。


 でもう、マジで、ルイーズに似合うから。

 正直、嫉妬心すら浮かばなかったよね。


 あ、で、副団長のオリガとアナスタシアのは、青の上着に白いスラックス。

 金髪碧眼に青と白の制服とか、本当にズルいよねぇ。


 でシャルルとクローディア(クローディアス)なんだけど、今は一般兵扱いだから腕章は水色と黒。

 で礼服は白の予定、流石にまだね、全部は決まって無いから。


 けど青を先頭に、白い礼服の子達がいっぱいになる予定。

 早く綺麗に揃った姿が見たいよねぇ~。


《早くアナスタシアより強い子、現れないかなぁ~》

「あぁ、ソチラもか、成程な」




 以前なら、見た目なんてどうでも良いのでは、と。

 些か懐疑的な部分が有ったのですが、やはり見た目は重要なのだと、改めて実感しました。


「私も早く、認めて頂ける様に頑張りますわ」

《私も》

『ありがとうございます、ですがあまり無理はなさらないで下さいね、怪我をしては元も子もないのですから』


「はい」

《はい》

『では』


 その特別な何かに惹かれ、人々は努力する。

 それが単に見た目の事であろうとも、憧れ、向上しようとする。


 ですが、時には何かを煽ってしまう事も事実。


「見た目は良いが、なぁ」

《どうせ、見た目だけ、だろう》


 コレは、シャルル騎士爵の事、では無さそうですね。


 成程、ココは幸いにも平和ですし。

 公開試合を開くには、良い場所ですからね。

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