表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/62

5.監禁未遂①

 私が令嬢たちを牽制しているという噂が原因となり、より一層カシスを幸せにしてくれる相手探しは難航していた。


「はあああ……」

「メアリー様、どうされたのですか?」


 ある日の朝。

 ライラは私の髪を櫛で梳かしながら、大きなため息を吐く私を心配そうに見つめていた。


「最近上手くいかないことが多くて……」

「お噂は耳に届いていますよ。カシス様が大好きなのですね」


 社交界の噂はすぐ両親の耳に届き、お母様には『やり過ぎには注意するように』と言われたが、その時のお母様の顔はとてもニヤニヤしていて嬉しそうだった。


「そう見える……?」

「え、違うのですか?」


 ライラに本当のことを話そうかと思ったが、万一両親の……特にお母様の耳に入っては困る。


「ううん、なんでもない」

「メアリー様……そうだ、今日は予定など特になかったでしょうか?」


 何かを思いついた様子のライラにそう尋ねられる。

 今日は一日部屋でゴロゴロする予定だった。


「うん、ないよ」

「でしたら息抜きに外出するのはいかがでしょうか」

「息抜き……」


 確かに家でゴロゴロしても余計なことを考えてしまい、心が休まらない気がする。

 それなら外に出てパーッと買い物したり、美味しいものを食べて息抜きした方が良いかもしれない。


「よし、決めた! 今日は外出しよう!」

「かしこまりました。では一度、カシス様をお誘いしてはどうでしょうか?」

「今日はライラと一緒に行きたいな……ダメ?」


 どうやらライラは、最近私がカシスと会えておらず、落ち込んでいると勘違いしているらしい。


「本当に私でよろしいのですか?」

「もちろん! 今日はライラと一緒に出かけたい気分なの!」


 そう言って、私は早速外出の準備を始めた。




◇◇◇


 建国祭のような特別な日でなくても、王都はいつも人で賑わっていて、その空気感がとても新鮮だった。


(貴族たちの集まりだと、どうしても気を張ってしまうからな……)


 周りの目を気にせずにめいいっぱい遊ぶのは楽しい。

 今日はライラに提案してもらって良かった。


「はあ~楽しい」


 今日のお出かけは急遽決まったため、さすがにカシスも現れないだろう。

 これで現れたらもう絶対つけられていることが確定である。


(けれど……本当に、これでいいのかな)


 今はカシスの相手探しに専念しているが、仮にカシスを心から愛する人が現れたとして、カシスがその相手と同じ気持ちになるとは限らない。

 カシスは私のことをとても好いてくれているようだし……そんなカシスと向き合って、受け入れるべきではないかとも思う。


 けれどカシスの『好き』と私の『好き』は意味合いが違う。

 生半可な気持ちで受け入れようとしては、カシスを余計に傷つけるだけである。

 そのままバッドエンドに……という可能性もゼロではない。

 現時点で私がカシスを避けていても、監禁や精神支配といった予兆は見られないが、カシスの本性を知った時は色々と危うく、恐怖すら感じていたのだ。

 それが私の中でいつまでも不安要素として残っている。


(まあ、積極的ではあるけれど……色々と)


 思い出しただけで顔が熱くなりそうだ。

 距離の詰め方が大胆になったし、触れてくるようになったし、心臓が持ちそうにない。


「あー……!」


 今の自分の考えがうまくまとまらず、頭が痛くなりそうだ。


「メアリー様、大丈夫ですか?」

「あ、うん。大丈夫!」


 ライラに声をかけられ、すぐに笑顔を浮かべる。

 いくら悩んでも仕方がない。

 いつまでも避けてばかりではなく、一度カシスと話してみるべきかもしれない。


(最後にカシスの目を見て話したのはいつだろう……)


 あの一件以来、カシスとまともに目を見て話したことがないのを思い出す。

 私はカシスのことを何も知らなかったし、本当の姿を知ってからも、その真意を汲み取ろうとしなかった。


「……よしっ」


 私は覚悟を決める。

 一度、カシスと話そうと。


「ねえライラ。私、やっぱりカシスの元に行こうと……あれ」


 振り返ると、なぜかライラの姿がなかった。

 人ごみに紛れてしまったのかもしれない。


「ライラ? どこに行ったの?」


 すぐにライラの姿を探すが中々見つからない。

 きっとまだ遠くに入っていないはずなのに。


「ここはさすがにいない……よね」


 探すのに夢中で、気づけば人通りの少ない道に来ていた。


「いったいどこに……ふっ⁉︎」


 もう一度表通りに戻ろうとした時、突然背後から布のようなもので口元を塞がれる。


(な、なに……すごい力……!)


 息が全くできなくなり、意識が徐々に遠くなっていく。


(……う、誰か)


 声を発することもできないまま、私は目の前が真っ暗になった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ