↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
96/99

96 いざ、尋常に、通常に、無常に

「ん?」


 クォーツが、ゆっくりとソファから立ち上がった。全員が隠れていると予測していた場所から数人が飛び出したからだ。

 クォーツにはその判別まではついていなかったが、平河、墨田、ラプタ、ルーブルの四名だ。


(警察二人と……武闘派が二人かな。拳銃は自動防御で対処できるから拳でやろうって魂胆かな。身体強化魔法は全員にかかってる。あのルーブルって奴、なんか嫌なんだよな。何にも魔法の気配がないのに、こっちの外殻がうっすらと読まれてる感じがする)

「見られてるぞ平河」

「わかってますよ。にしても身体強化魔法、不気味すぎますね」

「黙ってやれバカ」


 身体強化魔法によってスピードだけでなく、動体視力まで上がった己の体を眺めながら、平河はその場で軽くジャブを繰り返した。

 クォーツの意識は、遮蔽物の向こうに息をひそめる残り、特にその中でもムトの方を向いていた。

 その隙にと四人が同時にクォーツに向かって駆けていき、その拳を振りぬく。だが、クォーツが己にかけている強化魔法の方が上位であったせいもあり、その拳がクォーツに当たることはない。


「あったんねぇ!」


 ルーブルが叫ぶ。

 それと同時に、四人をサポートするように遮蔽物の後ろから魔法が放たれた。


(連射速度からして、師匠かな。でもちょっと遅いなぁ。結界の破壊がダメージになってくれたとしたらありがたいけど)


 思案するクォーツの周囲に、自動で透明な壁の防御魔法が張られる。同時多発的に発射される魔法は、全てその防御魔法に防がれていた。


(威力が低い。あくまでも四人の方でなにかしようって作戦か、あるいはこっちを囮にしてるか)

「ははは! 残念。師匠~! 時間稼ぎしようとしてるところ申し訳ないんですけど、こっちはもう詠唱終わっちゃいましたよ? 大体あと……二分半くらいかな。それくらいでもう、認識の反転はこの世界にも広がっちゃいますよ」


 四人がクォーツを追い、クォーツはそれを避けるように後退しながら避け続ける。

 ムトも、翔を含めたそのほかの隠れている人々も出てこない。


(絶望してるのかな。師匠も案外、そういう顔をするんだろうか。見てみたいなぁ)


 あと、一分三十秒。

 腕時計を眺め、クォーツの心臓はゆっくりと早まっていく。

 正確な時刻の概念が確立されていない世界で作り上げられた魔法という概念だが、己の得意とする魔法で狂いが無いようにと、クォーツは大津として生活していたころから愛用しているものをつけていた。

 

(あと一分)

「え~、もー! 雑魚お兄ちゃんたち、まだ一撃も加えられてないの? だっさ~!」


 人を馬鹿にしたような笑い方で遮蔽から飛び出したのは、チッチョだった。口元に手を当てて笑っているが、すでに足はクォーツの方を向いている。


(もう一人、アレはめんどくさいな)


 クォーツが声のする方向を見た時には、チッチョはすでにクォーツの懐までもぐりこんでいた。


「やっぱりぃ……誰かに魔法をかけるよりも自分に魔法をかけた方が手っ取り早いよね~。時間制限もないし」


 チッチョの言葉通り、四人の動きは少しずつではあるものの、緩慢になってきていた。


「あと三十秒」

「だぁー! もう無理だ!」


 カウントダウンと同時に、ルーブルが叫んだ。それを皮切りに他の三人も息を切らしはじめる。

 身体強化の魔法が切れ始めた証拠だった。

 それと同時に、クォーツはチッチョの腕をつかんだ。四人をまとめて相手する必要がなくなり、一対一で対峙することができたからだ。

 チッチョは素早くその腕を振りほどき、瞬時に後退する。だが、再度突撃しようとはしなかった。

 お互い身体強化魔法を使っているとは言えども、その質は歴然である。その上、身体強化魔法はあくまでも元の身体能力を底上げする魔法。チッチョとクォーツという二人の対格差は子供と大人のそれであり、チッチョがいくら年齢を重ねていようとも、クォーツが万全の状態で反応できないわけがない。


「ははははは! 五人なら何とかなったかもしれないね! 師匠! あと二十秒ですよ!」

(まだ出てこないか。でも、何も仕掛けてないはずはない)


 刻一刻と、魔法が発動する時間が迫っていく。時間が迫るほどに、クォーツは警戒度を増していく。

 ふと、クォーツは視線をチッチョからそらした。

 遮蔽物の向こうから、何者かが飛び出すのが見えたからだ。


(誰だ……?)


 クォーツがこの世界に来てから、ここに居た獣人を含めた人間は八人。

 その中にはいなかった姿だ。

 ラグビー部のような、精悍な顔立ちの男。


「大津さん! いや、クォーツ!」


 その声で、クォーツは確信した。アレは、水無月翔が、人間化の魔法で別人に変化した姿だ、と。

 時計は、魔法が世界に広がるまであと十五秒を指していた。

面白そうだと思ったりしたなら下のボタンから評価、感想、ブクマの一つでもしていただけるとありがたいです。

モチベーションにつながりますので、人助けと思って気軽にどうぞ。

疑問点、矛盾点、誤字脱字に関する報告だけでも構いません。

よろしくお願いいたします。


また、文章のお仕事を募集しています。

真面目な物、構成、推敲、添削、推しの二次創作など、もしよろしければ。

気になった方はTwitter(@sakasasakasama)のDMか、またはこのアカウントにメッセージを送っていただければ幸いです。


いくつか他にも作品を投稿しているので、もしよければ私のプロフィールページからそちらのチェックもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。