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ヨーチュリカ大陸  作者: Jupi・mama
第二章 大陸とハイドラ家
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第三十四回 回復魔法を役立てたい


『ランドールさん、右手でらんらん棒を持ちますので、椅子にかけてあるローブを消してください』


『ほほう、おもしろくなったのう』


 私はグリエールに視線を向けて立ち上がりる。


「私のローブを見てしてください」


「……消えた」


 彼はボソッと一言、視線は消えたローブの位置で止まっている。


『出してしてください』


「出た」


 力強い一言と同時に彼は立ち上がる。彼の視線が私に移動する。


「すごいわね。エール、私の気持ちが分かったでしょう」


 彼女はとっても強気に話しているんですけど、私のほうが心配になってくる。マジシャンみたいに彼を騙すことは気乗りしないが、信頼を勝ち得るには仕方ないことだ。彼女にも偽ってしまったが申し訳ないと思う。


「……ああ、よく分かった。燈花、疑って悪かったね」


 ストンと腰を落とし彼は苦笑いをしながらそう言ったが、自分が立ち上がったことに対してなのだろうか。


「いえ、スーランさんと同じで、目の前で見てもらったほうがいいと思いました」


「イノシシ退治は今度ゆっくり話すわね」


「ああ、分かった」


「スーランさんに聞くまで知らなかったので、教会とは関係がありません」


 わらわさんから回復魔法と教会のつながりは何も言われてないので無視しないと、困っている人を助けられない。わらわさんは教会とは関係なく人々を助けなさい、と言っているのだろうか。


 教会に取り込まれた回復魔法を使える人たちは、強制的に足枷で仕事を担っているかもしれない。そこにはお金が絡んでいるのだ。


 貴族の考えを進化させるのではなく、下々の人たちを進化させて世の中を変えてほしいのだろうか。私が病気を治し、ランドールさんが金属で道具をくり、ヨーカリスおねえさんが木材を使って物作りをしてくれれば、その作るという知識は私が提供すればいい。そうすれば、少しずつ住みやすい社会になるかもしれない。


「……知り合いが足を怪我して歩けない。世話になった人だからどうすればいいかな」


 彼は足の治療のために、自分で確認するためにわざわざ戻ってきたのだ。要するに、私に治療をしてもらいたいと間接的に話しているわけだ。


「ミズリーには右手を使わないように強調して説明しましたが、足だと急に歩けても困りますね。同じように秘密にしていただけるのですか」


「それは確信が持てない。痛みが取れれば気分も向上するだろうが、どうしたものかな」


 ミズリーに内緒にすることをトーマスから聞き、彼は自分でその方法が見つからないので相談するため、解決するためにわざわざ戻ってきたのだと思う。


「……ええっと……私の顔を隠すと相手には分からないと思います」


「そうよ、顔を隠せばいいのよ。名案ね」


「これはマスクと言いますが、こうやって耳にかけます。後はフード付きのローブを着て、少し背の高さを低くすれば……それでいいのかな」


 パーカーのポケットからブルーのマスクを取り出し実演する。これってまずかったかな、トーマスさんも黒っぽいマスクを口にしていたけど、御者だと風をもろに受けるので、それでマスクをしていたと思うが、たぶん、バンダナみたいな布のような物だと思う。


「燈花は背が高いから低く見せるのも手だわね。エール、私の知っている人なの?」


 このマスクをスルーしてくれたは助かった。白だと目立ったのかな、ブルーのマスクを買って正解だ。黒だともっとよかったのかもしれない。


「名前を言えば知っていると思うが、スーランは関わりを持たないほうがいい。トーマスと三人で行くかな」


 その人は仕事仲間なのだろうか。怪我の原因が疑わしいのかな?


「暗くなって裏口から入ったり出来るのですか」


「女性なの男性なの? 裏口から入るにしても、手引きをしてくれる人がいないと難しいわよ」


「家の造りはよく分からない。帰りの馬車でトーマスと相談してみるかな」


 トーマスその人を知っているのだ。男女の答えがないが、それほど関わりをもたれたくないようだ。女性かもしれないな。


「あのですね、眠くなるようなお薬とかあればいいけど……お持ちですか」


「何でだ?」


「クッキーとか何か持って夕方近くにお見舞いに行かれて、その中に眠くなるようなお薬を含ませその場で食べてもらいます。夜ぐっすり眠ってもらえば……窓から忍び込んでささっとやってしまいますが、出来れば私もいっしょに行って部屋の中を見たいです。そういうことは出来ますか」


「燈花は策戦も考えられるのね。そうすれば、本人も家族も気づかないうちに終わるわね。ミズリーみたいに痛みが止まれば、朝になれば気力も取り戻せる。忍び込むのが問題だけど……燈花だったら出来そうな気がするわね」


「はい。ありがとうございます」


「うむ」


 スーランは私の言葉に反応がいいが、彼とは少ししか話してないので、まだ私を信じてないようだ。それよりも、怪我をした人に何か問題があるのだろうか。


「……ええっと……場所が分かればこっそりと一人でやりますけど、前に、誰にも気づかれないようにやったことがあります」


 ここまで来れば嘘も方便、部屋の場所さえ分かれば燈に連れていってもらえる。


「……あなた……今までそういことをやってきたのね」


 彼女は私を信じているようだが、私はここでの過去がない。自分で話した言葉は忘れないようにしなきゃ、長い目で見ているとボロがでそうで怖いよ。


「……本人に気づかれないように、かわいそうだったので見かねて治療しました」


 ランドールさんの突っ込みがないが、私が苦労しながら話しているのを理解していると思う。場所さえ分かれば、燈に眠っているかどうかを確認してもらえる。


「分かった。考えてみよう。ミズリー、そろそろ店に戻る……今夜は帰れないと思う」


「分かりました。ちょっと待ってね。このスコーンを包むから馬車の中で食べて」


 ドテッとしているスコーンを半分に割り、ジャムをつけるスーラン。上着のポケットからハンカチらしき布を出して包み軽く縛って手渡すと、グリエールはそれを受け取り立ち上がり、彼の視線はスーランから燈花に移動する。


「少し考える時間がほしい。その時はよろしく頼む……この屋敷を自分の家だと思って寛ぎなさい。スーラン、燈花を手放さないように頼んだぞ。玄関までの見送りはいい」


「かしこまりました」


 燈花に軽く頭を下げ、ドアに向かうグリエールは一気にドアを開けて、私の視界から消えた。


『ランドールさん、彼は私を利用しようとしているのですか』


『分からんのう』


『私は利用されてもいいです。ミズリーみたいに喜んでもらえれば、回復魔法を大いに役立てたい。そうするために……わらわさんが魔法を授けてくれたと思います』


『そうだのう。グリエールの考え次第じゃな。場所が分からんことにはこちらも手立てが考えられんのう』


『ねぇね、ぼくも手伝いたい』


『燈、馬車の後をつけてくれない? 寄り道するかどうか分からないけど、店の位置も確認してくれる。場所が分かれは燈に連れてってもらえるけど、何とか聞き出せないかしらね』


『はい。喜んでお手伝いします』


『こちらの状況は判断しなくてもいいから、戻ってきたらすぐ言ってよね』


『了解です!』


 燈の意気込み溢れた言葉を後にして、左手から燈の意識が消えたような気がする。私自身が彼らのアジトを共有しているが、私が二人のオーラを集中することで、存在感、実在感、独特の雰囲気を何となく感じ取れるだけで、バシッと判断ができないだろうか。二人の役割が変わってしまったようだ。このトリオはずっと続くのだろうか。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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