第三十一回 燈花の年齢は……十八歳
大変お待たせしました。
まだ、うまく繋がらないのですが、今後ともよろしくお願いいたします。
仕事のいざこざや女同士のもめ事はどこにいても存在する。立ち入らないように気をつけなきゃ、我が身に降り注ぐと大変だ。それよりも、休日でも外出禁止なのだろうか。そこが気になるよね。
「後はメーシリンに伝えるから、みなはさっさと仕事に戻って、ココは残りなさい」
「はい」
「メーシリン、ココと二人で部屋の準備をしてくれる。夕食まで燈花と私の部屋で話をするけど、夕食が近いのでお茶の準備はしなくてもいいわよ」
「かしこまりました」
「ココ、部屋の準備が終わるとそこで休憩してて、食事は届けさせるから、メーシリン、お願いね」
「かしこまりました」
「はい」
スーランとココのつながり、どうなってしまったのだろうか。意味不明。彼女たちの行動は集まるときも解散するときも、少しのろいような気がする。猫って敏速じゃなかったのかな、よく分からない。
会社と同じように使用人にも立ち位置があるのだ。雇用された時期の違いなのか、同期や先輩後輩、それとも、仕事に対する熱意や真面目さ、性格の善し悪し、仕事に対する理解力、報酬のためかもしれない。彼女たちはランク付けされているのだ。
「燈花、自分の部屋に行くのでついてきて、使用人のことは気にしなくていいから」
「はい。名前とか覚えなくてもいいのですか」
「ミミの名前と特徴さえ覚えればいい。あの子たちは六人姉妹。同じ母親から生まれたのよ。ミミがいちばん年下でココが長女、最後に産まれたミミは物覚えがいいのよ」
「そうなのですか。どうりで顔が似ていると思いました。姉妹でも性格が違うのですね」
「そういうこと、この屋敷は広くない。使用人は彼女たちだけで十分なのよ。エールのご両親の屋敷はもっと広いのでそれなりの使用人がいるけど、そこの使用人の子供たちね」
「そうなのですか」
「向こうで見習い期間は終わっているけど、今ひとつ動きが悪いのよね。ここでの厳しさが足りないのかな。さっき燈花が言ってくれて、何か考えられればいいけどね」
この屋敷の広さがが分からないけど、私が話したことに対して賛成意見なんですけど、よかったのかしらね。何歳くらいか分からないが、身長が低いし子供に見えてしまう。
ランドールさんも身長が低いけど、触らせてもらったあの顎髭がある。三百歳以上のような気がする。彼の場合は歳なんて関係ない。聞いても私が考えられない。逆に知るのが怖いよ。
「……そういうつながりがあるのですね」
階段を上りきって左側に曲がり立ち止まる。
「私の部屋はここよ。隣が寝室でその向こうがエールの部屋ね。燈花の部屋は階段のいちばん手前の部屋、そっちの三部屋は客間になっているのよ。二階は六部屋しかないけど、ここの通路を挟んで真ん中の部屋の対面に浴槽がある。その左右は物置ね。食事が終わると準備させるから、旅の疲れを癒やしなさい」
「はい。ありがとうございます」
二階の通路の左右に部屋があるのだ。お風呂があるのでよかった。庭の造りもそうだが、外壁は分からないが中世時代の欧州、写真で見た貴族の屋敷を想像してしまう。
「中に入って」
「はい」
奥行きのある縦長の部屋になっている。右側は備え付けのクローゼットルームなのかドアが閉めてある。中央の壁の上にホールと同じような磨りガラスなのか、明かり取りの窓が見える。
その下には外開きの窓があり半分ほど開き、ドアを開けたからか左右の真ん中あたりで止めてある、単色みたいな水色の落ち着いたカーテンの上下が揺らぐ。窓の外は庭に面しいるような気がする。
「そっちの椅子に座って」
中央には安定感のある木目調の頑丈そうなテーブルがあり、アーチ型に作られた背もたれのある椅子が四脚、その上には水色のランチョンマットが四つ敷かれている。窓の横には机なのか、四角い背もたれのある椅子が下に収まっている。
机の上に本箱みたいなケースが置いてあり、右側にスライドさせるような引き出しがあるようだ。机と反対側の角の台の上には、カーテンと同じような色で丸くてドテッとした花瓶があるが、そこには花がない。
「ありがとうございます」
私はクローゼットルームを背にして座る。
「一階は使用人の部屋が三部屋とリンたちの部屋ね。彼女と料理長のルーゾフは結婚しているのよ。あの二人はご両親の屋敷でね、エールが子供のときからずっとそばにいたそうよ。ほんとうはルーゾフが執事なる予定だったのに、彼は料理が作りたいと言うのでメーシリンが執事になったのよ。私がここに来る前、二十年以上前の話かしらね」
「そうなのですか」
「さっきの部屋は狭いけど、奥の仕切りを外すとパーティーも出来る広さになるのよ」
いや狭くないですよ。実家の十畳ほどのリビングに比べると三倍くらいあるんですけど、それを広げると何十畳になるのよ。十人以上も座れそうなテーブルもあるし、ソファーが壁に沿って置いてある。
左右に煉瓦を積み上げたようなすてきな暖炉もある。その暖炉の上の横木、その上に何か置いてあるような、ここからでは見えない。じろじろ見るわけにもいかず、でも、素早く見てしまう。
「すごいですね。言葉がありません」
「ここで驚いてはダメよ。向こうはもっと広いのよ。この屋敷はエールのお爺さまの別荘でね、お爺さまの遺言としてエールがいただいたそうよ」
ここが別荘……びっくり仰天の話だ。どれだけ手広く商売をやっているのよ。
「今夜はエールが戻ってくるかどうか分からない。あなたの回復魔法と防御魔法、らんらん棒の収納はきっちりと話すから大丈夫よ」
「ありがとうございます。私は旦那様と奥様とお呼びしたほうがいいのですか。それとも、グリエールさん、スーランさんと言ったほうがいいのですか」
「あなたは使用人ではない。私たちの仕事仲間として迎えるから……さん付けがいいのかしらね」
「分かりました」
「ところで、燈花は二十歳前に見えるけど、年齢を聞いてもいいの?」
「……ええっと……十八歳です」
言っちゃったよ。大丈夫かしらね。それよりも、二十歳前にほんとうに見えるのかな。ここに鏡はあるのだろうか。スプーンは局面になるけど、銀製品を磨いて鏡にしたりするのよね。ランドールさんにお願いできないだろうか。
「……スーランさんの年齢も聞いてもいいですか」
「私は三十五歳、エールは三十八歳よ。小さい子供は大好きなんだけど……私たちには子供が出来ないのよね」
少し顔を歪めてそう話す彼女は言いずらかったのだ。私がこの屋敷に住むとなれば必然的に分かることだ。それで今のうちに話してくれたのだろうか。
今回も読んでいただき、ありがとうございました。




