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ヨーチュリカ大陸  作者: Jupi・mama
第二章 大陸とハイドラ家
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第二十九回 精精精ビーム


 ちょっとどういうことよ。お爺さま代から商人なの? 大金持ちの奥様じゃないのよ。それにしては王都に行くのに二人だけとは信じられない。二人とも武術の心得があり、何かしらの魔法が使えるのだ。


「すごいですね。ほんとうに私を雇ってもらえるのですか」


「口約束だけど契約は成立したのよ。トーマスもいたからいいのよ」


 何かにつけてトーマスの名前を連発するんですけど、彼はどういう立ち位置なのよ。意味が分からない。


 私の回復魔法で困っている人を助けてあげたい。容姿を隠せば、彼女の力で隠してもらえれば、大勢の人を助けられるような気がする。そう提案してもいいのだろうか。


「はい。ありがとうございます」


「燈花、あなたは回復魔法を使えることを自覚しているの?」


「えっ? どういう意味ですか?」


「教会とのつながりを知らなかったみたいだから」


「確かに知りませんでした」


『右から何か来るのう。ビームじゃ』


『えっ?』


「精精精ビーム」


「ブブヒィーーー」


『頭を叩くんじゃ』


「ヤーーー」


「ブヒィ!」


「ヤーーー」


「……」


『死んだみたいじゃのう。すごいのう』


「燈花、大丈夫?」


 らんらん棒を二回目振り下げた反動と同時に、おったまげて尻餅をつく。イノシシが向かってきた威力よりもビームの力が強かったみたいだ。それよりも右手の威力が強烈……頭の中も猛烈な嵐が吹きまくる。心臓がバクバクする。


『燈花、立つのじゃ』


 立ち上がらなくちゃ、らんらん棒を杖にして立ち上がる。


 目の前のイノシシを見て一連の動作が瞬時に蘇り、自分の足が震えている。軽くジャンプして右足首を回しから足踏みをして隠す。


「……足が滑って……足は大丈夫みたいです」


 下草は無視し木の幹を上手に避けイノシシが突進してくる。右足を前に出し腰を落として斜め下に右手を向け、私の正面の直線コースに入ったので、目頭の付け根あたりを狙って精霊ビームを大声で叫んで打ち込むと、壁にぶち当たったような反動で真横にぶっ倒れた。


「よかった。燈花の判断力はすごいわね」


 怪我で朦朧としていたのかイノシシが起き上がる前にダッシュして、竹刀を持つように右手に力を入れ、らんらん棒の先端あたりで二度叩くと、イノシシの頭が潰れたみたいだ。咄嗟に精霊にしたのと右手を向けた位置も、叩いた位置も外れずによかった。


『わしが回収するかのう』


『ま、待ってしてください』


 もう、ランドールさんには言葉がない。


「……ありがとうございます」


「このあたりにイノシシが出るとは聞いていたけど、びっくりした。イノシシにもあなたにもよ」


 彼女は私に近づきながらそう言う。視線がイノシシに向いているので、足の震えは隠せそうだ。


『イノシシは食べられるがのう』


 もー、何なのよ、その言葉は。


「……ええっと……このイノシシはどうしますか。もう少し奥の位置だったらよかったのに、すてきなお花が無残な姿に……ごめんなさい」


「花なんてどうでもいいわよ。イノシシは後から片付けさせるから大丈夫よ」


 私の言葉で視線を周囲に向けたみたいで、首を左右に軽く動かしている。


「……らんらん棒の中に回収できますが、仕舞ってももいいですか」


「えっ? どういうこと?」


 私の言葉で彼女の視線が私に向いたみたいだ。まだ心臓はドキドキしているが、つべこべ言われる前に気持ち悪くてイノシシを見たくない。さっさと視界からなくしたい。


『ランドールさん、お願いします』


『燈花は賢いのう』


 地面は血だらけではあるが、目の前からイノシシが消える。自分の服を確認すると、返り血は浴びてないようだ。よかった。


「消えた。どうして?」


「私の魔法で消しました。屋敷に着くと出しますので、料理してもらってもいいいですか」


「えっ? 出せるの? 料理?」


 彼女の意識は少し飛んでしまったような雰囲気で、私を見つめている。


「はい、また出せます」


「どうなってるの? らんらん棒の中に入ってるということ」


「はい。収納しました」


「少し疑ってたいけど……らんらん棒はほんとうにミスリルなのね」


「はい。間違いあません。回復魔法といっしょに秘密にしてしてください」


「グリエールには……話してもいいわよね。らんらん棒は私たち三人の秘密にするから」


「収納はトーマスさんにも秘密にしてしてください」


「分かりました。ミスリルの金属は知ってしまったけど、私といっしょで疑いを持っていると思う。だってね、信じられない話だからよ」


「私を信じてもらうには、話したほうがいいかと思いました」


「右手が緑色に光った。使えるのは回復魔法だけではないのね」


『攻撃魔法のことを話してもいいの?』


『使ってしまったからのう』


 ポンポン……《防御魔法》


 ポンポン……《精霊まで》


「……回復魔法だけでは自分を守れません。少しだけ防御魔法が使えます」


「……あなたの少しという言葉……ちょっと信じられないわね」


「申し訳ありません。どう説明したらいいのか分かりません」


「参ったわね……頭がまとまらない」


 そう言って歩き出すスーラン。しばらく無言で歩く二人。


 攻撃魔法でなく防御魔法と言うんだ。知らなかった。攻撃して相手を傷つけるのではなく、相手の力を相殺するのだろうか。イノシシがそれだけ頑丈だったのだろうか。剣で切りつけられたらどうするのよ。相手からの最初の一撃をらんらん棒で防げるの?


 さっきは咄嗟に剣道使いをしてしまったが、棍棒として使った方がいいのかな? 剣道でも棍棒でもいい。格好だけでも練習しなければ、そういう訓練現場を見られないだろうか。棒使いのイメージトレーニングをしたほうがいいみたいだ。


 彼女は大丈夫かしら? すてきなこの歩道を見せようとしただけなのに、イノシシの出現と防御魔法、ミスリルとらんらん棒の収納、先ほどの回復魔法もある。私の言葉を信じてくれるのか分からないけど、そういう現実に遭遇してしまった。横顔ちらりと見ると、真っ直ぐ前を向いて歩いている。


 燈がいなくてよかった。突然私が消えてしまうところだった。今までは何とか誤魔化してきたけど、それこそ説明する言葉が考えられない。


 ランドールさんは落ち着いていた。私がビームに失敗すると、イノシシとの間に土の壁を作ってくれたのだろうか。彼女は後ろにいたので分からない。


 先ほどから密集していた樹がまばらになり、屋敷につながる一本道が庭につながったような気がする。右側に煉瓦で作られたような茶色い建物の壁が見える。屋敷の一部なのだろうか。


 左奥に見える、芝生みたいに刈り込まれた緑色の地面に沿った通路の両脇には、背丈の違うカラフルな花が塊のように植えられている。先ほどよりも幹も細くて、所々にある低い木は緑色の葉を生い茂らせ、枝振りの手入れが為されているようだ。


「もう少しで玄関に着くから」


「はい」


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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