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ヨーチュリカ大陸  作者: Jupi・mama
第二章 大陸とハイドラ家
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第二十二回 ポンポン……《若さ必須》


 燈が彼女の独り言を聞いたので、少し変わった人だと判断したのだろうけど、私が彼女の独り言を聞いたとすると、意味が違って聞こえたかもしれない。言葉は難しい。


 自分の過去の経験が重なり合い、それが結果へと導かれてくる。燈は実際の体験が少なく知識だけが人並み以上に優れている。色んなことを経験させてあげたい。突然に地球人になったのだから……いったい燈は何歳なのだろうか。


「あのさ、こういうことは聞いていいのか分からないけど……燈は何歳なの?」


「ぼく、ヨーカリスおねえさんから歳を聞かれてね、八歳になったばかりって答えたんだよ。この姿の写真の子供はね、下の方に八歳って書いてあったんだよ」


「……そうか、分かった。燈は八歳の男の子だね。私の弟だしね。私は二十八歳だけど、いちばん下の弟だね」


「うん、ありがとう。ぼくも……こういうことは言っていいのか分からないけど、ねぇねは……最初に見たときと違うんだよね」


「えっ? どういうこと?」


「洞窟で見たときにね、何だか……若くなったような……そんな気がしたんだよ」


「ええっ? どういうこと? 私は変わりないけど二十八歳だよ」


 手持ちの荷物に鏡はない。お化粧とかしないし、リップリームはあるけど……ファンデーションとか持ってないし鏡がない。さっきの浅瀬の水をせき止め確認すればよかったかな。


 ポンポン……《十八歳歳》


「何ですかいきなり……ええっ? 十八歳? 十八なの?」


 ポンポン……《正に正解》


「ねぇね、どうしたの? ねぇねは十八歳なの? 二十八歳なの?」


「……ええっと……独り言! 独り言! 十八歳!」


 もう、どうなっているのよ。十歳も鯖読んで、そんなに若くは見えないわよ。


 ポンポン……《若さ必須》


「えーーー」


「ねぇね、どうしたの?」


「……いや……何でもない。何でもない……心配しないで……私もヨーカリスおねえさんみたいにね……独り言が増えるのかも……」


「……」


     ★  ★  ★  ★  ★


 崖の上から小柄なナオと、巨大化したオオカミのオーが腹ばいになり、燈花たちを見下ろしている。燈花が何度も発生させた音響、狩りの途中でオーがその音を聞きつけ、ここに移動してきたのだ。


 ここは『マーリストの森林』と呼ばれている。王都から見れば、山々を越えた東の方位、イースリッチョンの街から見れば、こちらも山並みを越えた北東に位置する。


 ナオは赤ん坊のときに、この森林でニーナに拾われ育てられる。ニーナとナオはマーリストの森林でずっと住んでいたが、ナオは十歳から慣れ親しんだ同じ家で独り暮らしをしている。その生活技術をニーナから伝授されているのだ。


 ナオは五歳から、拾われた日を境に二ヶ月間、王都に住んでいる貴族の屋敷で生活をしている。この二ヶ月間の生活は窮屈で彼女は好きではない。十五歳で成人しやっと森からの外出許可をニーナから許されたが、王都につながる街道は立ち入り禁止を宣言されている。今ではあちこちの街や集落、村落を訪れるようになっていた。


     ★  ★  ★  ★  ★


「ヨーカリスおねえさん、ぼく、燈だよ。樹の根元にいるんだけど、ねぇねを連れてきたよ。いるんでしょ」


「……」


「ねぇねは樹のてっぺんにはね、怖くて行けないんだよ。ヨーカリスおねえさんが降りてきてよ」


「……」


「燈、今日は疲れたんでしょうね。また今度にしましょう」


「今からイースリッチョンの街に行くからね。その帰りにまた来るよ」


「……心の準備が……出来てない、ですのよ」


 ヨーカリスは燈の声が聞こえている。燈の顔が見たくてとても話しをしたいのだが、ねぇねと話すことを躊躇っている。ヨーカリスは、ねぇねという言葉が名前だと思っている。


「……分かった。何日かしたらまた来るね。ミーロンはとってもおいしかったよ。帰りにまたもらいに来るからね」


「……燈に渡す籠も……完成した、ですのよ」


「ヨーカリスおねえさん、ありがとうございます」


「ヨーカリスおねえさん、私はミーロンを食べて元気になりました。中の種は大きいけど、とっても甘酸っぱくておいしかったです。一気に食べてしまい大好きですよ。何回ももらいに来ますね。その時はよろしくお願いします。ミーロンが入った籠を見て、同じような籠を作っていた祖母を思い出しました。懐かしかったです。大事に取ってありますので何か別の物を入れますね。ありがとうございました」


「……はい、ですのよ」


 ヨーカリスは、歯切れのいい彼女の一連の言葉に少し圧倒され、よけいに気分が低迷している。内緒で人間の話を聞くのは大好きなのだが、百年もそういう生活してきたので、少し対人恐怖症になっている模様。誰も聞いていないので独り言の方が楽しい、と心の中で思っている……彼女は心の準備がほんとうに出来るのだろうか。


     ★  ★  ★  ★  ★


『ランドール、(わらわ)じゃ。燈花に王都と国の話をせよ。地方都市と街道のつながりも話すがよい。攻撃ではなく防御魔法、よく気づいたものじゃな。燈花は賢いのう。あれは商業ギルドと冒険者ギルトの身分証明も兼ねておる。確認させよ。顔はめんこいが燈の存在が今ひとつ理解できぬ。妾は天空チュリカ城の管理が忙しいが、燈花の声はたまに聞いておる。よしなに任せだぞ。妾は長くは話せん』


『わらわさん……分かりました』


『……??』


『二人が……あなたのことを「わらわさん」と呼ぶそうです』


『何じゃそりゃ……まあよい。妾は名前を教えてないからのう』


    ★  ★  ★  ★  ★


 ランドールさんが本体に戻ってくるのは、思いも寄らず早かった。彼は弟子である分身に後のことを頼み、洞窟には寄らずに結界を出たそうだ。


 私は会ったことがないが、毎回、弟子と言うのも不憫なような気がする。彼の分身だし彼の名前から切り取り、弟子のことをランとドールと名付けると話すと、ランドールさんは『ほほう』と一言、だから了解したのだと思う。


 燈はイースリッチョンの街に入る正門の場所は知っている。最初に行ったときは、その正門上部をぎりぎりの高さでくぐり抜けたそうだ。誰も気づかれないと話す。


 燈が確認済みなのだが、正門につながる街道が森林の中に存在している。そのいちばん近い森林の中にいったん移動してから、街道に出てイースリッチョンの街を目指すことにする。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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