15話 タイセツナモノ
その日わたしはまどかと街へ買い物に来ていた。
3番街でわたしたちはいつものようにショッピングを楽しむ。だいたいはまどかによるファッションショーになるのだが。
「ナギサちゃん次はこれ来てみてよ!」
まどかが持ってきた服はふりふりがついた短いスカートだった。
「まどかさん…… ちょっと恥ずかしくない……?」
「そんなことないって! ほら!」
ピンクのふりふりのスカートなんて初めてはいた。てかパンツ見えそうなんですけど!
「いやこれは……」
「可愛い!!! これお姉さん買ってあげるね!! あとさっきの服と、あーこれも!」
「あ、ありがとう…… まどかさん……」
まどかはいつも私のことを妹のようにかわいがってくれる。
ショッピングを終えたわたしたちは、アラタの定食屋でご飯を食べることにした。定食屋に着くと、わたしたちは窓側の4人掛けのテーブルへと案内された。
「あのね、まどかさん」
「なーに?」
「まどかさん、いつもわたしに優しくしてくれるでしょ! 今日はわたしもまどかさんにプレゼント!」
そう言ってわたしはまどかに小さな袋を渡した。中身は星形のイヤリングだった。実は先日偶然見つけたもので、あまりに可愛かったため、まどかの分もついつい買ってしまったのである。
「あのね、絶対まどかさんに似合うと思ったんだ! いつもいっぱいいろいろ買ってくれるのに、こんなものしか返せないけど……」
まどかは少し目を潤ませ、口を開く。
「ありがとう……! 金額なんてどうでも良いの! 私はナギサちゃんが選んだくれたってだけですごく嬉しい! 大切にするわ!」
そう言ってもらえると選んだ甲斐もある。
「ねえまどかさん」
わたしは続けた。
「本当に大切なものってなんなんだろうね?」
我ながら奇妙な質問をした気がする。
「そうね、自分が一番大切だと思うものって、意外と気づかないけど、もう一番そばにあるのかもね……?」
「そんなもんなのかな……?」
「そんなもんよ」
もう一番そばにある……か
すると奥からアラタとナオがこちらに来た。ランチタイムも過ぎ、二人とも手が空いたらしい。
「アラタさん、アラタさんの一番大切なものって何だった?」
アラタは少し照れくさそうにナオの方を向いて言う。
「まあ妻かな」
「この街に来たとき、私はショックのせいか、記憶喪失になったんだよ。 妻がずっと支えていてくれたんだ」
わたしは二人の信頼関係がうらやましかった。
「将来はアラタさんとナオさんみたいな夫婦になりたいな-!」
本心からそう思った。すると、まどかが茶化す。
「あらー奏君と?」
「違います!!!!」
「もーそんなこと言っちゃって!! 素直になりなさい!! 可愛くないんだからーー」
その場にいた全員が笑っていた。わたしも一緒に笑っていたが、なぜか底知れぬ不安のようなものを感じていた。