14話 アラタナマホウ
わたしの悪い予感は当たっていた。
奴は明らかに強くなっている。到着すると、警官が2,3人負傷しているようだった。
奴は??
「海に消えていった」
警察官を何人か襲った後、奴はおまえらじゃ相手にならないと言わんばかりに、海へと消えていったらしい。さすがに水の中まで追うことは困難だったため、追跡の断念は仕方のない決断ではあった。
「マジかよ……」
篤の心の声が漏れていたが、それも致し方ないことだ。
あんな化け物、放っておいたら何をしでかすかわかったものではない。
しかし現状これ以上どうしようもないのも事実である。
というか奴らに、海に逃げるなどといった知能が存在していたことさえ知らなかった。
以前出会った奴らは、直線的に人を攻撃するような程度であった。
確実に以前よりも知能も増している。
とりあえず、現場の検証は他の警察官に任せ、わたしと篤は署に戻ることにした。
警察署内では、警察官が慌ただしく動いていた。奴が前よりも危険性を増し、複数の警察官が被害を受けたこと、また逃亡したことが警察内部にも広まり、ややパニックを起こしかけている。
わたしと篤も、詳しく事情を聞くために、課長や係長といった、偉い人たちに呼ばれた。話が終わったときにはあたりもすっかり暗くなっていた。
これからしばらくの間、奴らに対する厳重警戒態勢を敷くらしい。
夜、一日署長の仕事を何とか終え、家に帰ったわたしは、海に逃げていった奴らに関して考えを巡らせていた。
海に逃げられたら燃やすわけにも行くまい。
何か別の奴らに対抗しうる手段が必要だった。
電気を使うのは考えたが、海で電気なんて使ったら大惨事だ。良くない。
水の中で戦う方法……
水を凍らせるとか……
そう思いついたわたしは、コップに水をくんできた。どうしたら凍るのかな、寒くなれば凍るよね?
そして、炎を出すときと逆に、熱を奪ってくるようなイメージを膨らませた。その瞬間、コップの水は一気に凍り、コップも同時にパリンと音を立てて割れた。
――これは行ける気がする
正直、風の魔法や水の魔法はあまり使っていなかったため、コントロールがうまくできない。この前の風で海上に吹き飛ばす作戦がうまく決まったのも奇跡に近いものがあった。
しかし、氷の魔法は使い慣れた炎の魔法と原理というか、イメージが類似しており、割と簡単に使いこなせそうだ。氷なら、思いっきりたたき割れば奴らも粉々になるだろう。まあ液体がないと凍らせることはできないのだが。
こうして、わたしは新たに氷の魔法を使えるようになった。