3、復讐の終わり
震える空気、荒ぶる咆哮、冷える霊魂。激しくぶつかり合う魔力が稲光のように舞台中央を飾る。
反射で動くあの男、狙って動くヒカリ。
僕の腹の下にあった刀を振り抜くヒカリと、腰に下げた剣で受けるあの男。
あぁ、この時を待っていた。
美しい煌めきが、血飛沫と共に、僕の目の前に現れる。あの男の腹を突き抜けた剣は右へ流れ、闇夜に半円を描き、こんどは彼の首を飛ばす。
呆気ない結末に感動はない。苦しまずに死んだ仇を残念に見つめる自分がいる。殺したかったはずの男が背後から刺され、首が離れても嬉しくないのだ。
騒がしい会場が僕の虚しさを際立たせる。どうやら帝国の重臣達も味方以外皆殺しのようだ。抜かりない。あぁ、まさしくあの男の息子だ。
ヒカリは既にもう一人の息子を手にかけていた。
魔法になる前にぶつかり合い、消えていった生命力が、紅い月夜にまだ燦然と耀いている。
「虚しいのか? エンダラよ」
「あぁ」
「俺は嬉しくて堪らない」
「僕もなかなかの偏執狂だと思ってたけど、君もそうなんだね」
「息を切らしてない事にこそ驚きがあるよ」
あの男に止めを刺せる奴なんてそうはいない。僕が強力な魔法を放ち、防御か反撃の魔法を放たせ、その隙にヒカリが攻撃をする。ヒカリの攻撃に応じてるあの男に後方から攻撃を加え、止めを刺す。
いかに有利な状況を作っても一瞬で勝負を決めないといけない。
本当に計画通りだ。
僕は二通りのパターンを考えていた。
「今夜を選んだのも、そういう物語を綴るのが好きだからだろう? 」
「たまたまではないが、運命でしかないよ」
替え玉なのか? 本人なのか?
どちらでもない、と言えばそうだが、あの男が自分の息子を見間違うはずがないだろう。
「ヒカリには何て説明したのかな? 」
「それはもちろん『正義』の為とね。初代皇帝を殺せるような存在は、特別な存在でなければ民が納得しない」
何時だって、結果が全てと言うわけだ。
「そして、その特別な存在――『反逆者』が成敗されて初めて、民は安心する。また、成敗をするのは、次の主と『正義の味方』でないといけないとな」
僕は頷く。そして、僕には歓喜に湧く民衆の姿が見える。
「君に頼みがあるんだ。エンダラの名前を使うからこそ特にナパート族の事は……」
「愛した人が大切にしていたものを、俺は踏みにじったりはしないさ」
願いを遂げた僕にするべき事は何もない。彼女を失った僕にやりたい事はない。
結果的にとはいえ、手伝ってくれた彼の願いを僕は叶えてあげるべきだ。
「もちろん、お前は別だ、エンダラ。お前こそ、生け贄に相応しい」
真紅の月は僕の命を刈り取った。




