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1、戦争の終わり

 砂漠の多いこの地域だが、砂漠と云えども違いはある。植物が少ないのは同じだか砂の量というか、石や岩の量というか。天気や地理なんて、学校で習ったかな? 余り興味もなかく、記憶がだけが頼りの僕にはきちんと説明は出来ない。

 ただ地面は砂漠の中では固めで馬がスピードを出すには好都合ではある。そして、そこに北方の騎馬民族を誘って囲い、圧倒していた。戦争の天才というのは本当かも知れない。


 戦術とか戦略とかは全くわからない。ゲームでやっていたくらいで勉強なんてした事もない。だが、相手が望んで進んで来て、集まったところを包囲して叩きのめすなんて事を実際に見せられると圧巻である。



 僕はひとつの高い岩場からそれを見ていた。近くには偽クレメンスがいて、指揮を取っている。まあ、偽物でなかったわけだが……。ブラッドムーンの一団のひとつが、朱殷しゅあんの鎧の実際の第三部隊だったのだ。そこらの衛兵でどうにか出来るわけがない。


「知り合いの部族はいますか? 」


 僕は答えない事にした。黒猫である僕の表情は人間には読みにくい事だろう。だが人間の声で話せば別だ。


「作戦の為には必要な事です。ただこれ以上痛めつける事はしませんのでお許しを」


 風に乗って血の匂いが舞っている。ヒカリは朱殷しゅあんの鎧の特別部隊に加わり、騎馬民族の頭を次々に刈っている。激戦の中で活躍しているが、その姿はアールマティとは違う。部隊の先頭に立ち、皆を鼓舞するアールマティとは違い、ヒカリは朱殷の鎧が作る道を進み部隊の長だけをひとつずつ仕留めて行く。



 この大きないくさでナパート族を滅ぼした事にする。初代皇帝を殺して混乱が起きた時に、北から攻め込まれない為に先手を打つ意味合いもある。何から何まで絵が既に描かれている。


 先の先まで読んで道を作っている。この天才の父親だ。一代で帝国なんてものが出来上がるわけた。



 そろそろ戦は終わりそうだ。帝国軍の包囲網にはひとつの穴が作られている。そこに向かって敵軍は敗走していく。逃げ道はふさがず、逃げていく敵軍に矢を放ち、あくまでも帝国軍の被害を少なく、それでいて効果的に敵にダメージを与えるやり方をとっているようだ。


 メナスもヒカリと同じ位置にいる。メナスはヒカリと共にあり、朱殷の鎧が切り開く道を進み、それぞれの部隊の長の周りにいる兵を撫で切りにしている。

 素敵なコンビネーションだ。二人でダンスを踊るように舞っている。襲いかかる敵兵の刃をヒカリがくぐり、刃を振り切った敵兵へとメナスが止めを刺す。二人とも動きに無駄なものがなく、流れるように走っていく。殿しんがりに残っていたと思われる隊長の騎馬にメナスが剣を振るい、ヒカリがバランスを崩した隊長の首筋を切りつける。激しく吹き出る朱色がこのいくさの終わりとなった。



 これで舞台は整うだろう。北方の騎馬民族と交流があるナパート族を、この戦に参加していた事にして……。


 現皇帝、初代皇帝がそろう厳重な警戒がされている式典で、スッチーデント公爵がサポートをするとはいえ、暗殺を行わなければいけない。


 公爵はどんな作戦を立てるのだろう? いや、立てているのだろう?

 すでにヒカリには大まかに話しているようだ。僕には式典の前日に教えてくれるそうだ。何故、教えてくれないのかも話さない。

 僕に大事な仕事がある、と話すだけ。


 断れないような状況を作るつもりにしか思えなかったが、僕はもう飲むしかなかった。




 北方の騎馬民族が、ヒカリを含む帝国軍にボロボロにされる光景は、アータル族が裏切られた時の見ることのなかった景色にしか思えなかった。



 人間の眼では見ることの出来ない距離にいるヒカリが、僕に向かって手を振っている。


 もうすぐお別れだ。


 本当のお別れの時にも手を振るのだろうか、それとも……。








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