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ダンジョンでニート生活始めます〜外伝 アレンと愉快な仲間たち 物語を1ミリも動かさない無駄な文字の山  作者: まゆな


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王と王妃

「王妃様、ダンジョンから書状が届いております」


侍女の報告に、王妃は手元の書類から顔を上げた。


「ダンジョンから? こちらに持ってきてちょうだい」


「はい」


侍女が書状を差し出そうとした、そのときだった。


「おい、待て!」


横から王の声が飛んできた。


「俺に報告するのが先ではないのか?」


「王妃様宛ての書状でございます」


「まず俺が読んでからだろう!」


「王妃様を指名されております」


「なに? 俺ではなく王妃を?」


王は不満そうに書状を見つめた。


「あなた、落ち着きなさい」


「……はい」


王妃にたしなめられ、王は素直に口を閉じた。


「それで、何と書いてあるんだ?」


「ダンジョンに出向きます」


「お前が自ら行くのか?」


「私を指名されているのですから、当然でしょう」


「儂も行くぞ!」


「なりません」


王妃が答えるより先に、宰相が口を挟んだ。


「なぜだ!」


「王が王宮を離れるわけにはまいりません」


「俺は王だぞ!」


「存じております」


「ならば俺の意見を採用しろ!」


「前向きに検討させていただきます」


「それ、絶対にやらないやつだろう!」


王の抗議を聞き流し、王妃は立ち上がった。


「では、着替えてくるわね」


「うむ。気をつけて行ってくるのだぞ」


王は少し寂しそうな顔をしながらも、見送るつもりだった。


しかし、しばらくして戻ってきた王妃の姿を見て、思わず目を疑った。


「……なんでウエディングドレスなんだ?」


王妃は純白のドレスを身にまとっていた。


「ダンジョンマスター様からの贈り物よ」


「贈り物? なぜそんなものを?」


「素敵でしょう?」


「いや、素敵かどうかではなく……」


王が言葉を探していると、王妃の隣に近衛隊長が並んだ。


「なんで隣に近衛隊長が付き添っているんだ?」


「裾が長いから、歩くのが大変なのよ」


近衛隊長は長いドレスの裾を持ち、王妃の歩行を補助している。


その光景を見た王は、ますます困惑した。


「どう見ても結婚式のバージンロードを歩いているようにしか見えないじゃないか!」


「そうかしら?」


「そうだろう!」


さらに周囲の侍女たちから、ひそひそと声が聞こえてくる。


「お似合いのお二人だわ」


「おい、そこのメイド!」


王が声を上げる。


「今はそういうことを言っている場合ではないだろう!」


王妃は気にする様子もなく、宰相に向き直った。


「では、留守は任せたわよ」


「かしこまりました」


宰相が恭しく頭を下げる。


「それ、儂のセリフだろう!」


王がすかさず抗議した。


しかし、王妃はすでに出発の準備を整えている。


「行ってくるわね」


「お、おい!」


王の呼び止める声を背に、王妃はダンジョンへと向かった。


そして、しばらくして王妃が戻ってきた。


乗っていたのは、見慣れない高級車だった。


「……ロールスロイス?」


王は車を見て、目を丸くした。


「それは何だ?」


「ダンジョンマスター様からいただいたのよ」


「おい、儂も乗せてくれ!」


王はすぐに車へ近づいた。


「だめよ」


「どうしてだ!」


「私専用にいただいたものなの。勝手に乗せて、怒られたらどうするの?」


「儂も欲しいぞ!」


王は不満を隠そうともせず、王妃に詰め寄った。


「あなたの乗り物も用意してもらったわよ」


「本当か?」


王の表情が一気に明るくなる。


「はい」


王妃が指さした先には、一台の自転車が置かれていた。


「……自転車?」


「ええ」


「これが儂の乗り物なのか?」


「そうよ」


王はしばらく自転車を見つめていた。


「……ロールスロイスと自転車では、差がありすぎないか?」


「あなたは王宮を離れられないのでしょう?」


「それとこれとは話が別だ!」


王の抗議は、王宮に響き渡った。

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