ティルフィーネ・エヴァ・バケンティアの奮闘記 1
第一楽章 初恋迷宮行進曲 ティルフィーネ・エヴァ・バケンティアの奮闘記
「戻ってきましたわ! とうとう!」
この国の建国神話において、かつて偉大なる精霊神より建国王と月の精霊姫に試練を与えた聖獣、12の公爵家のうちの一角を担う、雷の天馬を祖とするバケンティア公爵家。
その公爵家の末娘であるティルフィーネ・エヴァ・バケンティアが、決意を新たにそう呟いたのは今から1週間前の事。
かつてディシャール国でうまれた彼女は、幼い頃に持病故にこの国を離れた過去がある。
その胸にほのかな初恋を灯していた彼女は、いつか必ずこの病を治して、初恋を叶えに行くのだという目標を掲げては長い療養生活を終え、17歳を間もなく迎える今日帰路についた。
全ては、初恋の君。
優しい思い出をくれた、ディシャール国が第二王子、クラウス・フォン・ランフォールド殿下と再会し、その初恋を叶えるために。
「大丈夫、うまくいくわ。だって私はバケンティア公爵令嬢なのだから」
公爵令嬢として身分は申し分なく、勉学と行儀については療養の傍らに行うには過酷なほど取り組んだ。
社交術は……まぁ、何とかなるだろう。やればできる子だという自負がある。
そしてなにより、その胸に灯し続けた初恋の瞬きが、そんじょそこらの令嬢に負けるわけがない。
圧倒的な自信と共に王都へ到着した、そのわずか1週間後。
初めての王立学院で、彼女は中庭へ駆け込むと大きな声で叫ばずにはいられなかった。
「クラウス様に婚約者がいるだなんて!! 聞いてないですわぁああああああ!」




