第二章
第二章を投稿するにあたって、序章〜第一章を読み返してみました。読み返せませんでした。ぼくは自らを恥じ、叫びました。こんな小説を人様にみせていたのか・・。そしてまたしょうこりもなくやってしまうのです。
〜第二章〜出会い道をはしる
<1>
彼女と出会う、3日ほどまえのことだ。
たとえば世の中の男子諸君は、恋をするに際して、こんな風に悩んだりするものである。
こんなちびでめがねで貧弱なだめだめ人間が、あこがれのあの子とはたして
つりあうのだろうか?いや・・・むりだ。ぼくなんか・・・生きる価値が無い。
・・・まあしかし、
これはまるでぼくのことであるが、こんなように考えるやつも、きっと学校のクラスに1人2人
いるはずである。
ともかく、ぼくは悩んでいた。しかしぼくの悩む対象は、まったくもって
情けなくてどうしようもなかったのだ。
インターネットの世界に没入し、依存し、現実を逃避した結果、ぼくは現実世界の
住人ではなくなっていた。肉体のみが電脳世界の入り口に取り残され、
魂は広大な、ネットという漆黒の大地を爆走していた。
魂は一日に数回だけぬけがらに戻り、そのとき
存在する意味があまり見当たらない肉の塊は、ぼくになった。
現実形態のぼくの容姿は、ちょいと筆舌しがたいので、なにもいわないでおくけれども、
なんとそのゾンビ状態で深夜に、家宅から徒歩1・2分ほどのコンビニに
ふらふらと歩いてゆくもんだから、
ぼくは近所の人たちのちょっとしたうわさになっていた。
しかし、ぼくはそんなことおかまいなしだ。なぜなら、ぼくはひきこもりだ。
この小さな空間を永遠に支配する王なのだ!ぼくはだれにも影響をうけない!
だれもぼくに危害を加えることは不可能なのだ!
・・・・・・・。
なぜだろう。
こういうことを叫んでみると、やっぱり、さみしくなる。
胸のあたりが、なんだかとてもなつかしい想いで、満たされそうに・・・。
いや、大丈夫さ。ぼくはすぐに
ぼくのあるべき場所、ぼくの本当の故郷にトリップだ。
もやがかった包み込むような薄暗い部屋が、いくらかのあたたかみを帯びたパソコンが、
そして、ぼくを今か今かと輝きながらまっている電脳の世界が
いつものようにぼくを、やさしく迎えてくれる。
<2>
運命の出会いまであと3日ほどだった。
ぼくは今、友達と楽しくおしゃべりをしている。
いや、今は確かに友達であるかもしれない。しかし、いつかきっと・・・。
風にゆれる長い黒髪、全てを見すいているかのような、スッとしたきれながのめ、
雪だるまを彷彿とさせる、透き通った真白の肌・・・。
ぼくはひたすらに彼女を思い描く。
そう、彼女こそ、ぼくのあこがれの女なのだった。事のはじまりは、唐突だった。
女性に飢えていたぼくは、手当たり次第に掲示板で画像をあさった。しかしぼくの収集する女性たちは
かなり偏りがあり、それは少々、問題ともとれるべきものだった。なぜならそれらは、小学生から高校生あたりの
あられもない少女たちであったのだ。
ロリータ・コンプレックス、
つまりはロリコンなのだということを、自身も痛いほど理解していた。
しかし、ぼくは真実を知っている。
ひきこもりやオタクでなくとも、ロリコン男はうじゃうじゃといることを、
自身も、吐きそうになるほど理解しているつもりである。
まあしかし、正味、これはただの余談というか・・・言い訳であるけれど・・・。
だが、許してほしい。ぼくはそれほど重症のロリコンというわけではないのであるから。
これが小学生から中学生まで、はては幼稚園児から小学生という範囲にまで限定されてしまえば、
それは神をも認めさせたロリコン野郎ということになるだろう。さすがにぼくも、そこまでイってしまっていると
であった瞬間に逃げ出すか警察に通報するだろうな。だから軽蔑しないでくれ。
確かにロリコンという事実は認めるが、
根はどこまでもさわやかに、こころはまるでビーチを照らす、南国の太陽のように晴れわたる好青年なのだよ。
おっと少しあちちだったかな?
ははは・・・。
などどいった内容のおしゃべりを、ぼくは彼女と楽しくしている。正直な話、ゆきだるまの彼女とは、
さっきあったばかりである。
出会った瞬間ひとめぼれしてしまった彼女に、なんと、
出会った瞬間ぼくがロリコンだということがばれてしまったのだ。
しかし、だけど・・・ああたのしいなぁ・・・。ぼくはいま、どきどきしている・・・。
・・・その約一時間後のことである。
ロリータ画像掲示板でであった彼女は、なんとネカマだったらしい。ぼくはその事実に実際、B-29の爆撃並みの衝撃をうけた。
ちなみに言っておくけれど、ネカマとは、ネットの中で女性になりきっている男のことである。
ぼくに話しかけてくれた最初の一言に、運命的なものを感じたのに・・・。
最後の最後、ついでに彼はこんなことを言ってくれた。
おれもロリコンだぜ。セーラー服の中学生専門のな!
・・・よっぽど警察に電話して署まで連行してもらおうと思ったが、
電話で人とはなすのが怖いのでやめておいた。
つまりは、ぼくのあこがれた運命の女は、ただのロリコン野郎だったのだ・・・。
そんなこんなで、ぼくの電脳の住人としての日々は、
ゆるやかに過ぎていった。
この安らげる、なんの障害もない平坦な日々は
秋の、木々の葉がひやりとした風に吹かれて、ひらひらと舞いながら地に落ちてゆくように、
身を削られ、その身を殺される、
もろく、儚いひとときなのだと知らずに。
きみのからだにしっかりと巻いた、あたたかい闇のすきまから、
すこし目を凝らしてみれば、とおくの方には
耐え難い終わりの光がまたたいているとも知らず。
ぼくは、それでも・・・
ただ、生きた。
<3>
ぼくらが出会う、その前夜のことである。
ぼくは、本当にただなんでもなく生きていた。
人が成すべきこと、成し遂げたいと誰もが願うこと、
とても大切なそれらを何一つぼくは見つけることは出来ずにいた。
それでも、自分の生活に
こんな生き方でいいのか、と疑問をわかせたことは
おそらく、一度も無かった。
最近なんだか不思議に思うことがある。ひきこもりになったばかりの頃は
騒がしくぐるぐるとなっていた腹が、だんだん女性を求めなくなっている気がした。
けれどそんなこと、ぼくの生活には何の関係もない、まるで些細なことだ。
それに、ぼくもだんだんと大人になってきたじゃないか、と
ぼくは・・ひとり・・笑った。
ぼくの、ぼくだけの、
ひとと関わるよろこびを知らずに、いつでも理不尽に傷ついてきたこころや、
ただひとつだけの命を、いままで必死に支えてきた、ちっぽけなからだは、
いつしか切なげにほほ笑みながら・・・
限界を迎えようとしている。
それでも笑う彼らは、
ぼくは、
いまなにを想い、生きているのだろうか。
今夜も、ぼくはのんきに、入り組んだインターネットをどんどん制圧してゆく。
この、まるで異次元や、夢のなかにいられたかのような一週間で身に付けた
さまざまな技術を最大限にいかし、ぼくはずしりと重い深海を高速で移動する。
今ではすっかり常連になったさまざまなサイトを訪れ、そこに心地よさげに居座る住人たちに手を振る。
だけど、彼らはけして、ぼくに手を振りかえすことはない。
ぼくはそんな電脳の住人たちになにを思うでもなく、うつろな瞳で再び前を向き、
ゆらゆらと進みはじめる。
前から、だれかがやってきた。
けれど、
ぼくがその手を振り返すことはなかった。
いまのは誰だろう。なんだかとても見覚えがあるようだったけれど・・・。
<4>
暗い漆黒の世界で目をこらす。
すると・・・。
目の前の暗黒に、恐ろしい顔をしたゾンビがうつっていた。
ぼくの心臓はまるまる2センチは飛び上がったとおもうのだが、
なぜだか、のどからはかすれた声しか漏れてこなかった。
心臓がもとの位置にすとんと落下して、数秒たってからぼくは
パソコンの電源が落ちていたことにきずく。
色を失った画面がうつしていたのは、このぼくだ。少しばかりショッキングだが、
やれやれ自分にこれほど驚くとは・・・と笑おうとしたとき、
とつぜん暗黒をみつめていたはずの目の前が、まっしろになる。
その刹那、ぼくの体がぐらりと揺らぐ。
ぼくは知った。
これが、終わりのひかりなのか。ついにぼくは辿りついてしまったんだ。
めぐり合ってしまった・・・。
なんの音もしなくなった。王国のまんなかで、ひきこもりの王様が静かに横たわっている。
彼は、今度は走り出すことをしなかった。
ごみや衣服の散乱した薄暗い部屋で、
ひかりを放っているものは、
なにもない。
ぼくは、ぴくりとも動かなかった。
遠くで、朝日が山の向こう側から、またたきはじめていた。
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〜第三章〜ぼくのことと、きみのこと
久しぶりのそらはひたすらに青かった。
暗いネットの深海から打ち上げられたぼくは、横たわりながら
流れる雲と、青空をみあげていた。
ぼくときみがであった、この日のことです。
・・・・・・つづく
まだ恋愛が始まってすらいません。
これただの馬鹿なひっきーの話じゃないすか。ふざけてんすか。
なんていわずに、第三章も見てくださいね。おねがいします。頼みます・・・。