後日談
あの後、宮野家で初めての家族会議が開催された。
宮野さんがまた入院することになったので、開催場所は病院の一室だった。
そこでの話し合いの内容を俺は知らないが、どうやら一応の決着は付いたようで、三学期からは三人で信雄氏が住んでいた家で暮らすことになったようだ。
その事を俺に教えてくれたのは、当然巫だった。
場所は俺の部屋。今日はボディーガード兼運転手である黒岩は一緒ではない。
巫は黒岩の事は何も言わなかったが、その様子からして、命に別状があるほどの怪我ではないようだ。
巫はあの後、しきりに千春のことについて俺に訊ねてきたが、俺はしらを切り通している。
巫のことだ、何かに気が付いているのだろうけど幽霊のことについては、俺もよく知らないのだから俺から何かを言ってやるつもりはなかった。
俺の部屋に住み着いている幽霊は、リッシーこと宮野千春が減って三人にはなったのだが、騒がしさは前とさほど変わっていない。
逆に、千春が成仏出来たことで俺に対する期待が何倍にも跳ね上がっていて、俺としては辛いところである。
まあ、そんなこんなで、クリスマスから続く一連の出来事は一応の収束を見せていた。
「それにしても、疲れたぁ」
巫が帰った後、俺はこたつに潜り込んで大きく息を吐き出した。
こういう場合、女の子を送っていくのがいい男なのだろうが、あいにく俺が巫の後を追って部屋を出ようとするとものすごい剣幕で睨まれてしまった。
言葉に出さない拒否に甘えて、俺は文明の温かさを享受していた。
「おい叶!何呑気に寝てんねん」
ウトウトしかけていた俺の睡魔を追い払ったのは、いつの間にか現れていたビッツだった。
「自分今、ええことしたな、とか思っとったんちゃうか?
もしそうやとしたら、大間違いやぞ!
ワイらのこと忘れられたら困んねん。はよワイらも成仏させてくれや」
「ちょっとビッツさん、そんな言い方はないでしょ。叶さんのお陰で僕達が本当に成仏できるってことが分かったんじゃないですか。
今、それ以上のことを求めるのは性急すぎます」
「そうは言っても、やっぱり期待しちゃうわよね。出会って二週間も経たないうちにリッシーちゃんを成仏させたんだから」
ビッツの後から、続々と後の二人もやってきた。
あっと言う間に、俺一人だった部屋にアロハシャツと詰め襟とバスタオル一枚という個性的な恰好をした面々が集結した。
三人は口々に勝手なことを言っていたが、俺はそれを全部無視して目を瞑った。
近い将来、この三人の過去に関する物語が新しく始まるかもしれない。
それが、明日なのか一週間後なのか一ヶ月後なのか、それは分からない。
一つだけ言えるのは、それが今ではないという事だけ。
だが、俺にはその事実だけで充分だった。
三人の事を見捨てるつもりは毛頭無い。むしろ、千春の成仏を間近で見たことで、三人も同じ様にこの世の楔から解き放ってあげたいと強く思うようになっていた。
だがしかし、俺は今心底疲れ切っていた。
一応落ち着いたと言っても、宮野さんに関する事件はこれからが本番だし、巫の観察の件も残っている。
それらを相手取りながら、三人の未練を探すのは骨が折れる作業になること請け合いだ。
だから俺は、ひとまず休むことにしたのだ。
サボるのではなく、休憩をとって英気を養っているのだ。
次にいつ新しい事件が起きても良いように、俺はしばしの休息に入る。
俺の頭の上では、まだ三人の幽霊がなにやら話していたが、それももう深い微睡みの奥に沈んでしまった俺の意識には届かない。
話は後で聞いてあげるから。
心の中でそう告げて、俺は眠りについたのだった。
この物語は、この話で一応完結という形を取らせていただきます。
この続きをどうするかは、しばらく考えてから決めたいと思います。
ここまで自殺希望者専用住宅を読んでいただき誠にありがとうございました。




