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ささやかな祝賀会

「メミル、A級昇格おめでとう。これであなたも、名実ともにギルドのエースね」

街の落ち着いた飲食店の一角。ミミはプロとしての凛とした佇まいを保ちながら、目の前の少女に祝いの言葉を贈った。

手元にあるのは、店で直接注文した1皿2,000ガリルの少し高級な料理。1回クリアすれば3万ガリルを稼ぎ出すA級ともなれば、こうした食事も日々の生活の一部となる。

新進気鋭のA級冒険者、17歳のメミル。

ミミに続く若き才能の台頭にギルドは沸き立っていたが、今日の集まりは、気心の知れた顔見知りだけで行われるささやかな祝賀会だった。

「ありがとう、ミミ! でも、ミミのS級(1回5万ガリル)に追いつくには、まだまだダンジョンの踏破速度タイムを縮めなきゃダメね」

メミルは嬉しそうに微笑みながらも、プロとしての真剣な眼差しを崩さない。

「おいおい、17歳でA級なんて十分バケモノだよ。俺なんてコツコツC級回して、やっと愛剣のメンテ代(数千ガリル)をプールしてるってのにな」

向かいの席で肉を突きながら、C級のベテラン冒険者ガイがやれやれと肩をすくめる。

そんな若きエースの誕生を祝う席の片隅で、ゴトッと鈍い音が響いた。

見れば、19歳のSS級戦士・デリカが、運ばれてきたチャーハンを数口平らげた状態で、スプーンを持ったまま綺麗に寝落ちしていた。

「ちょっとデリカ。主役のメミルの前で機能停止しないでくれる?」

ミミが額に青筋を浮かべて突っ込むが、デリカは「すー……すー……」と無防備な寝息を立てるばかりだ。今朝もSS+級を2箇所、わずか6時間で完全踏破して20万ガリルを稼いできたのだ。彼にとっては、今この瞬間こそが1日の大半を占める「睡眠フェーズ」だった。

「すみません、メミルさん。兄は起きて動いている時間(6時間)の燃費が極悪なので、大目に見てやってください」

11歳のジレンが、1本2,500ガリルの高級回復薬をスマートに飲み干しながら、大人びた態度で頭を下げた。

「ううん、気にしないでジレン君! デリカさんのあの『2箇所6時間』の超高速攻略、私、A級ダンジョンをソロで8時間かけてクリアしたからこそ、どれだけ異常な領域チートなのか本当によく分かるもの。起きていてくれるだけで光栄よ」

メミルは真面目な顔でデリカを見つめ、島最強の戦士への深い敬意を口にした。

「……んあ。……メミル、A級……おめ。……なんか、美味い、お祝いの肉……ジレンが出してくれる……寝る」

寝ぼけ眼を僅かに開けたデリカが、大真面目にジレンに無茶振りをし、1秒で二度寝に戻っていく。

「出しませんよ、兄さん。食材にこだわったお祝い料理を僕の魔法で出したら、たった5〜6人分で僕の魔力が全損(回復薬4本=1万ガリル分の赤字)します。今日のように、店で直接キャッシュで支払う方が圧倒的に合理的です」

ジレンが冷徹な損益分岐点を弾き出すと、ガイが「ハハ、相変わらずジレンのサイフ管理は完璧だな」と笑った。

秘密を共有するごく一部の身内だけで囲む、静かで、どこかおかしな食卓。

前代未聞の『魔力溜まり』という不穏な影が島に落ちる中、新世代のエース・メミルを迎え、最強の彼らはそれぞれのプロとしての誇りと徹底した合理主義を胸に、ささやかで温かい夜をスマートに更けさせていくのだった。



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