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歯車たちの休日

「はぁ、今日も変わらない退屈ルーティンね」

5万人が暮らすツイン・アイランド。その政治と防衛の中枢である「中央島」の冒険者ギルド本部。

17歳の天才オールラウンダーであり、島唯一のS級ソロ冒険者であるミミは、凛とした足取りでロビーを歩いていた。

魔法と剣を高次元で融合させ、1人で何でもこなす万能の天才。D級・E級の一般冒険者たちが遠巻きに羨望の息を漏らす中、彼女は常に気品ある態度を崩さない。それは、彼女なりのプロとしての誇りであり、防衛の最前線を担う者の責任感でもあった。

ミミは先ほど、適正であるS級ダンジョンをソロでキッチリ8時間かけて完全踏破し、5万ガリルの報酬を受け取りに帰ってきたところだった。

一般的な食事が600〜1,500ガリル、宿代が1泊2,500ガリルというこの世界の相場において、5万ガリルという大金。それが唯一のS級ソロとして君臨する彼女の格だった。

しかし、受付へ向かおうとしたミミの視界に、あまりにも異質な光景が飛び込んでくる。

ロビーの高級ソファに身を横たえ、泥のように爆睡している19歳の男。

魔力0でありながら、この島唯一のSS級——実質SSS級の称号を持つ規格外の戦士、デリカである。

「ちょっとデリカ。またここで寝ているわけ?」

ミミは眉をひそめ、デリカの肩を叩いて起こそうとした。その瞬間、受付嬢やギルドマスターが血相を変えて全力でミミの間に割って入った。

「ミミ様! ストップです! 叩いちゃダメです! デリカさん、今日はもう仕事をしてこられたんです!」

「はあ? まだお昼前よ? 今朝アラートが出ていたSS+級ダンジョン、確か2箇所もあったはずじゃない」

「その2箇所です……! デリカさんはジレン君を抱えて、今朝の数時間で同時に完全クリアしてきたんですよ……!」

ギルド職員の切実な声に、ミミは息を呑んだ。

普通なら国家滅亡レベルのSS+級ダンジョン2箇所を、合わせてわずか6時間で完全踏破。しかも、スピードを出しすぎてダンジョンを破壊することもなく、優雅に通路通りに走って無傷でクリアしてきたという。

「今デリカさんを起こして機嫌を損ねたら、今度は街が破壊される『3時間モード』になります! お願いですから寝かせておいてください!」

「……はぁ!? あの地獄をもう終わらせてきたわけ!?」

ミミが自分の8時間の努力を上回る理不尽なまでのチートスピードに呆然としていると、ソファの影からスッと11歳の大人びた少年が姿を現した。デリカの相棒、ジレンである。

ジレンは1本2,500ガリルもする高級魔力回復薬をストローでゴクゴクと飲み干しながら、淡々と言った。

「おはようございますミミさん。そういうわけですので、兄の睡眠を邪魔しないでください。ギルドマスター、今朝分の報酬20万ガリルと、ドロップした魔石2個の換金、速やかにお願いしますね」

ジレンの魔法は国家機密級の秘密だが、すっかり顔見知りであるミミは、その有能さと、徹底したリスク管理をよく知っている。

そこへ、ギルドの入り口から大きな影が近づいてきた。

「よおミミ、デリカ。今日も朝から相変わらず凛々しいこったな」

やってきたのは35歳のベテラン中堅C級冒険者、ガイだった。

「ちょっとガイさん、からかわないでよ。だいたいこのだらくさが理不尽すぎるのよ」

ミミが言い返すと、ガイは小さく苦笑しながらソファのデリカを見やった。

「そんで、ガイさんは今日の仕事は?」

ミミが尋ねると、ガイはあっけらかんと答えた。

「あ? 今日は休みにしたんだわ。上の化け物どもが朝飯前にSS+級を終わらせてくれただろ? おかげで防衛タイマーに余裕ができたからな。俺たち中堅も、今日はのんびり武器のメンテに出せるってわけよ」

ただのナイフを研ぐだけでも1,500〜2,500ガリルが飛ぶこのシビアな世界。

1回のクリアで2万ガリルを稼ぐ実力者のガイであっても、日頃の装備の維持費は頭の痛い問題だ。だが、最強のSS級が12時間の復活サイクルを前に超高速でダンジョンを間引いてくれたおかげで、島全体の防衛ラインに大きな猶予が生まれた。

ガイはその恩恵をちゃっかり受け、お金をプールしつつ、有意義な休日を過ごすつもりらしい。

「お前ら、ちょうど昼時だしメシ行かねえか?」

ガイは肩をすくめ、楽しげに提案した。

「街の高級店で、自然島のブランド豚を使った新作の肉チャーハンが出たらしいぜ。1皿6,000ガリルだ」

その言葉に、11歳のジレンの目が、冷徹に光った。



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