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A new Era ~始まりのヒトと終末を告げるヒト~  作者: ラー
五章~ルークと新たな時代~

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3話

「な、なんで……皆、ここに……」

「言ったでしょ。私たちは仲間なんだから。貴方を1人になんてしないわ」

「い、いや! だって、皆やる事があるだろ!? それに、危険だ。アイツの力は見ただろ? 俺は行かなきゃ行けないけど、皆は」

「でも、ルークはボクたちが困ってたら助けてくれたでしょ? だからボクたちもルークが困ってるなら助けたいよ」

「プロトの言う通りよ。貴方は私の国を取り戻してくれた。なら、貴方の悩み事位助けられなくちゃ、一国の主として恥よ。それに私が助けたいって思ったの。だから来たわ」

  ミラが腰に両手を当てながら胸を張る。目には七色の光が反射ながら、彼女の意思を反映したかのようにキラキラと光った。横にいるプロトも、いつもの控えめな態度が無くなって、ピンと背が伸びている。

「吾輩は反対した。今、ミラ様が再び消える様な事になれば大事という言葉でも収まらない。だが同時に、あの男、ノクスを放置しては帝国はおろか、世界に害を巻き散らす。故に来ただけだ」

「もう、そんな事言って。ルークが出ていく時、報告しろって部下に言ってたの知ってるわよ。もとから着いていく予定だったんでしょ? 私が言う前から準備出来てたし」

「いえ、只の備えです。いずれ相対する敵への備えです」

 ムスッとした顔つきが一転、崩れて取り繕っているのがハッキリと分かる程に早口だった。それが何処か可笑しくて笑いそうになる。

「まぁ良いわ。兎に角、私たちも行くの! 貴方は1人じゃない。私たちがいる。だからルーク、一緒に行きましょ」

 そう言いながら差し伸ばされた右手が嫌に眩しくてぼやけて見えた。そうか、俺はもう1人じゃないんだと思えた。たった一人の同族は受け入れられなかった。アガパンサス団にいた時には気が付かなかった。でも今、ミラが伸ばした手が、自分が1人ではない事を肯定してくれていた。だから、喉の奥からこみ上げてくる物を強引に飲み干して、左手で顔を拭いた。ぼやけた視界が晴れ、その先には微笑むミラ、楽しそうに頷くプロト、やっぱりムスッとしながらも此方を横目に見るウィリアムがいた。

「ありがとう。それじゃ、頼むよ皆!」

「えぇ! 世界を救いに行きましょ!」

 ガッシリと手を繋いだ。二度と離れないように、二度と離されないように、強く強く握った。


「さぁて、ルークも捕まえたことだし、やっと落ち着けるわね!」

 そう言いながらミラが地面に腰を下ろす。帝国の姫としてはあんまりの姿だが、それも今となっては懐かしさもあったし、彼女が笑顔なのだから咎める様な事はウィリアムでも言えそうにない。

「ほら、皆座って座って。突っ立ってても仕方ないわ」

 ミラがそう言えば後の2人も並んで座り、全員で輪を描く様にして座り込んだ。後は真ん中に焚き火でも有ればまさにいつもの光景と言っても良かった。

「それで、ルーク。ノクスが何処にいるのか分かってるの?」

 何処からかドライフルーツを取り出したミラが口に放り込みながら聞いてくる。長い耳はぴくぴくと動き、好奇心が丸出しと言った感じだ。

「大体って感じ、かな。直感だけど、北の方だと思う。うん、そっちにアイツはいる」

「そうなんだ。でも北の方ね……」

「? 何かあるの?」

「ん、そうだな。何か有るって言うか、何も無いっていうか」

「……北の方は環境が過酷で多くの種族にとって住むには適さない。勿論住んでいる者もいるが、外から交流するほどでもない。故に、死の大地とも言われる。一面、雪で覆われ、草木の1つ生えない地だ。しかしノクス程の能力があるのなら、隠れ住むにはピッタリやもしれん」

「そうだな。因みにウィリアムは行った事あるか?」

「いや、吾輩もない。行く理由も無いからな」

「そうだよなぁ。俺も無いし、ミラやプロトは当然だよな」

「えぇ。でも、そんな所で何をしているのかしら」

「さぁな。ま、碌でもない事だろうけどな。でも、そうか。アイツの作る魔道人形は食事とかも要らないからな。そう言う意味でもまさにって感じ」

「……もし、帝国と同じように一杯いたらかなり厳しい戦いになるわね」

「違いないな」

 ノクスがそこで何をしているのか、何故そこで待つのかは分からない。でも何かあっても周囲に被害は出ない事を思えば此方にとっても悪いとは言い切れないだろう。

「兎に角、船で行ける所までは行くつもりだ。その後は徒歩で、装備もそっちで買うつもりだ。こっちだと流石に寒冷地の装備はないからな」

「うん、それが良いと思う。帝国は雪も降らないから」

「因みに何だけど、ミラたちはお金はある? 俺は1人だと思ってたから、多分ギリギリなんだけど」

「それなら大丈夫よ。なにせ皇女ですもの」

 ミラが自信満々に胸をポンっと叩く。まぁ、確かに彼女の地位を思えばそれはそうかと思う。彼女が買えない物なんてない。それに帝国の通貨は使えないなんて事も早々ない。

「一応、交換出来そうな物も持ってきてるの。ほら、やっぱり帝国からも遠いじゃない?だから布とか、道具類もあるの。最悪これを売ってお金に変えましょ」

「流石だな。随分旅慣れたもんだ」

「ふふ、当たり前よ!」

 ミラがカラカラと笑う。それに釣られて自分も口角が上がったのが分かる。


「そうだ。どうしようもないけど、ミラが居なくなって帝国は大丈夫なのか?」

 そう言いながらミラではなく、ウィリアムの方を見れば重い溜息を吐きそうになったのを堪えて呑み込んだ顔が見えた。

「……良くはない。全く良くはないが、帝国が止まることはない。ノクスのような支配さえ、解ければ官僚たちは優秀だ。それに頂点が居なければ国が回らないのではいざという時困る。それに皇族も1人で何でも決めるわけではない。あらゆる分野のエキスパートを束ねる存在というだけだ。だから大きな事業を始める等は出来ないが、国は回る。それに今は復興に力を入れている以上、早急に新たな事業を国がすることもない。故に何とかなる」

「それに、ブライヤにも頼んだの。勿論、彼女に負担を掛ける事にはなっちゃうけど、まだ私より彼女の方が、伝手も多いから」

「ふーん、そんなもんか。まぁ、俺は本当にどうしようも無いからアレだけど」

「大丈夫。帰ったら彼女に一杯休暇と褒章をあげるって決めてるから。私がいない間を支えてくれてたんだもの、そうじゃないとね」

 そう言いながらミラが強く頷く。ブライヤとは戦った事しかないし、城にいる間も喋る機会は無かった。でもミラがこういうって事は本当にそうなんだろうなとも思う。

「ウィリアムはその手の仕事はないのか?」

「吾輩はもともと平民だ。貴族育ちでは無いゆえに書類や外回りは少ない。もっぱら騎士団の育成と武力の行使が主だ。故に吾輩が居なくとも部下が代行する」

「ま、確かに向いて無さそうだもんな」

「なんだと」

「いや、何でもないさ」

 ピューピューと口笛を拭いて目を反らす。でも実際、彼が机にしがみ付いて仕事をしている想像なんて着かない。それこそ鬣が濡れたみたいにグシャグシャの顔でも浮かべていっそうだ。

「いや、俺たちにはそんなん無くて良かったな。なぁ、プロト」

「え、そ、そうなのかな?」

「あぁ、間違いないぜ。絶対につまらないさ」

 プロトと肩を組む。互いに自由の身だ。書類なんて見たくも無い。

「ふふ、そうね。でもそうやって頑張った書類が人の手を渡って、何かの形になるのは楽しいわよ。「あぁ、あの時に判を押したアレがこんな形になったんだ」って思えるもの」

「へぇ、想像が着かないや」

「お前は文字が読めないからだろ」

「そんな事はないさ。ちょっとは読めるし書けるさ。自分の名まえだって書ける」

「はぁ。それは出来るとは言わん」

「ボ、ボクは書いたことないや」

「プロト殿は機会がなかっただけであろう。これは学ぶ気もなかった奴だ」

「いらないからな」

「ふふ、でも折角だし覚えたほうが面白いわ。これが終わったら私が文字を教えて上げる」

「うげ、勘弁してくれ」

「ふん、少しは学べ。お前が軽薄だとミラ様も下に見られかねん」

「ボクは興味、あるかも」

「ほら見ろ。勤勉と高潔は生まれ持った物だな」

「へいへい、俺はどうせ怠惰な低俗さ」

 軽口を叩き合う。もうすっかり以前の自分達に戻れている。それが嬉しかった。この旅が終わった後、何もかもがその儘ではいられないかもしれない。でもこうやって4人で笑いながら話せたらいいな、と思った。それこそ、その為に勉強が必用ならちょっとはやってもいい、そう思えるほどに。

「お、動いた。それじゃ、楽しんで行こうぜ! 北の大地目掛けて出発さ!」

船が浮いた。そして死の大地への一歩を進みだした。でも心の中は何処までも温かい物がずっと溜まっていた。

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