4th stage ─あと1人足りない!!─ その1
4th stage ─あと1人足りない!!─
怒涛の入学式から数日。
初めての登校日から5日が経つ中、シンヤは教室で、死んだように机に突っ伏していた。
新しい環境や高校の授業のレベルなど様々な理由はあれど、ここまで疲弊している理由はただ一つ…。
「俺様はアイドルなんてやらないぞ!」
「ほほぅ、じゃあどの部活に入るつもりかな?」
「………っ」
凛子に上手く丸め込まれて、スグルは乗り気ではないものの『アイドル部』になるという提案を呑んだ。
こうしてシンヤ、レン、スグルの3人でめでたく『アイドル部』として活動できる。
諦めていた夢が再び形になった。
シンヤは嬉しさのあまり、声を上げそうになるほど気分が高揚する。
しかしそんな気分に水を差すかのように、縮こまっていたレンが口を開いた。
「で、でも……部活ってそんなに簡単に立ち上げたりできるんですか?」
「そう、そこが問題だよ」
神妙な面持ちで人差し指を立てる凛子。
夢目前のシンヤは、思わず息を呑む。
「私の知る限り部活を新設するには活動内容なんかの審査があるんだけど、『アイドル部』は去年まで活動してた部活だから新設という形ではなく、廃部を免れて存続するって形になるはずなんだよ」
「つまり、俺たちが『アイドル部』の伝統を守れるってことか?」
あの憧れの『アイドル部』を自分の力で存続できるということに、シンヤは誇らしくなる。
「あはは、実際そんな感じだね。だから立ち上げに関しては大丈夫だと思うんだけど、問題は部員数なんだよねえ」
「部員数?」
静観していたスグルが聞き返す。
「そう。この学校の部活は、例外なく部員が4人以上いないと部として認められないんだよ」
「4人ってことは…」
スグルは一人ずつ指を指していく。
「……3、4。なんだ、ちゃんと4人いるぞ?」
「…それ、私も頭数に入れてない?」
3人に見つめられ、凛子は両手を前に出しブンブンと振った。
「無理だよ〜!他の部活だったらまだしも『アイドル部』なんて、私にはちょっと荷が重いんだよ!」
それでもなおじっと見つめる3人の視線に耐えられなくなり、凛子は慌てて体を翻した。
「とりあえず新入生の入部申請の受理が、初登校が始まってから1週間。つまり1週間以内に部員を一人見つけないと『アイドル部』は設立できず、シンヤ君とレン君も存在しない部活には入れないから、強制的に他の部に入らないといけなくなっちゃうんだよ」
凛子が突きつける厳しい現実。
あと1週間で部員を見つける。
それができないとシンヤも『アイドル部』に入ることはできないということだ。
明確なタイムリミットにシンヤとレンは焦りを覚える。
凛子が逃げるように退散するの見ながら、スグルは腕を組みながら鼻で笑った。
「ふっ…部員をあと1人、か……楽勝だな?」
「「えっ?」」
シンヤとレンは訝しげな目でスグルを見る。
まさかそんな反応をとられるとは思っていなかったスグルは一瞬たじろぐが、すぐさま立て直してニヤリと笑った。
「ふっ、お前たちは知らないだろう…俺様がここ、東ノ宮学園でどれほど人気かを!!!」