5th stage ─牧野ジョーはどこか怪しい─ その2
廊下に出てしばらく無言で歩くレンと、手を引かれるシンヤ。
3組の教室から離れて1組の前まで来ると、レンはパッと手を離しシンヤのほうを向いて困ったように笑った。
「えへへ、ごめんねシンヤ君。話途中で切り上げちゃって」
「いや、俺はいいけどさ……」
神妙な表情をしていたレンを心配するシンヤ。
笑ってみせているとはいえ、その笑顔にもやはりどこか陰りが見える。
「レンこそ良かったのか?『アイドル部』が廃部になったら、レンは学校辞めさせられるかもしれねーんだろ?」
「…うん。でも、それを理由に誰かを勧誘したりしたくないんだ。ジョー君は口調こそ厳しめだったけど親身になってくれそうな気がして…だからこそあのタイミングでその話をするのは、なんていうか卑怯な気がしたんだ」
自分の学校生活の危機が迫っているというのに、相手に敬意を持って接することができる。
その健気な誠実さに感心し、シンヤはレンの頭をポンポンと撫でた。
「まっ、いいんじゃねーか?同情で入って貰おうなんてアイドルのすることじゃねーしな!まあ、そんなこと言ってられる状況じゃないのも事実だけど」
「そうだよ、シンヤ君だって廃部になったら困るんでしょ?」
「まあ……もともと叶わないって所からレンがいて、スグル先輩がいて、あと凛子先輩もいて希望が見えた。奇跡みてーなもんだ!最後まで諦めるつもりはねーけど、それでも十分感謝してんだぜ」
シンヤはニカッと笑ってみせる。
そんなシンヤを見て、レンの顔も自然と綻んでいった。
「…あはは!シンヤ君だったら、絶対トップアイドルになれるよ。話してるだけでこんなに元気が出るんだから」
「そうか?でも『アイドル部』を諦めたわけじゃねーぞ!もう昼休みは終わるけど、5限目が終わったあとも手当たり次第勧誘するからな!」
「うん!」
そんな2人の声が廊下から聞こえてきて、教室で5限の準備をしていた卓は思わず笑ってしまった。
「元気だなーあの2人、思わず応援したくなる。でも、あの様子だとやっぱりジョーは駄目だったか」
独り言を呟き次の授業の準備をしていると、卓のポケットのスマホがブルッと震えた。
おもむろにスマホを取り出し画面を見た卓は、思わずニヤリと笑いスマホを机の上に置いた。
「なーんか……面白くなりそうだな」
まるで映画の悪役のようにくくくっと笑いながら、卓は大きく伸びをする。
机の上に置かれたスマホには、通知が1件。
相手の名前は、『三号』。
[話がある。5限目の後に屋上で]




