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濃い黄色をした自動車が一つ。
側部をこちらに向けていた。そして、一人の老人がその前に立っていた。
車は走り出す。
「やはり、正しかった。君、名はなんという。私は、一広高士だ」
背は低いが、背筋は真っ直ぐ伸びている。
顔のしわは多く、かなり肌の色が白い。
いや、さっき車の中にいた人と同じぐらいか。
無意識に、体重を後ろの看板に預けていた。とても乾いた音が聞こえた。
看板の足がいきなり折れ、シイカは体勢を崩し、草むらに転がった。
「古くなっていたから、完全に錆びてしまっていたのだろう。ここらにはもう、人は住んでいないからな。怪我はないかい」
老人は手を伸ばしてくる。
確信。
そして嬉しさか、驚きか、期待か、達成感か。
「旧世界から、あなたに会いに来ました。シイカ・アキシアルです」
立ち上がってから、シイカも手を伸ばした。
本当に一瞬だけ。
シイカのその手は、強く震えた。




