↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
home sweet homeWORLD  作者: 金色ヒゲマニア
PR
1/2

奇怪な遭遇

初めての投稿です。至らぬ点も多々あるでしょうが、人肌程の暖かさで見守って頂ければ幸いです。

>>prologue







 朝、目が覚めた瞬間に今日はとてつもなくいい日になるぞと根拠の無い自信が溢れる素晴らしい寝覚めの良さだった。


 学校で返された数学のテストも山が当たりいつもの自分では取れない高得点。


 そしてそれに驚いている、悪友からは昼飯を奢ってもらった。運が良いことにいつも学生から大好評で即時売り切れている激旨焼きそばパンだ。


 そして帰宅途中に小さな女の子がカバンを無くしたと泣きじゃくっていたから一緒にカバンを探し見つけてあげると、


「お嫁さんになってあげるね!」


なんて逆プロポーズまで受けてしまった。

齢17歳男子高校生の俺の将来は生き遅れずにすみそうだ。


 更に不良に絡まれ半ば強引に連れて行かれそうな女の子を、不良に殴られながらも助けた時に連絡先を聞かれてしまった。なんたる幸運。人生最高の日かもしれない。


今日は幸運が俺にまとわりついてるとしか思えない程のハッピー続き。





 のはずだった。

何故こんな状況になってしまったのだろうか。


いつも言われる、

『お節介』

『世話焼き』

『90%は優しさ(お節介)で出来てる頭痛薬』

などの友人達から頂いたありがたい言葉を今更噛みしめて後悔してしまった。





少し時は遡る。




友人と下校し途中で別れ、いつもの駅に向かうとその途中に何やら人混みが出来ている。

 最近取り壊し予定のビルの下に人が群がっている。

野次馬根性が出たのか何気なくひとだかりに歩みを進めると皆、上を向き騒いでいる。


「飛び降りかな。やばくない?」


「やべぇー」


「警察電話しろよ誰か」


 といった言葉が至る所から聞こえてくる。

上を向くと何やら人影が屋上のフェンスに座り込み何か叫んでいるのが見えた。


 自殺じゃなかろうと、まず間違いなくあの状況は危険だと誰しもが思う。が誰も動こうとはしない。それが普通だ。


 アブノーマルな状況を見て非日常を味わえれば満足な人間が大多数だろう。


 非日常に片足を突っ込んでしまえば何かしらの傷を負うのは、

誰しも分かっているんだろう。



「あぁ…損な性格だよ。本当に。」 



と自らのお節介焼きの性質を理解しながらビルに向けて歩みを向けてしまう。


 この状況を見てこのまま帰宅しゴールデンタイムのTVショーをまったりと視聴出来る程、常人の心臓程の強さを持ち合わせちゃいない。

自らを皮肉ってお節介を焼きに、屋上への階段を駆け上る。





 








 屋上へ到着し、すぐさま周りを見渡すと、

浮浪者のような男がフェンスに腰を掛け月を見上げている。

いきなり驚かせて落ちるような事があったら洒落にならんと、男に分かるように軽く音を立てながら近づいていく。



「……誰だ?」

音に気付くと男は振り向かずに声をかけてきた。




「あっー…すいません。お、おじさん早まっちゃダメですよ。」

とりあえずはそれっぽい言葉を口に出し男との会話を試みる。

まずは会話からだ。

すると、男はこちらに振り向き更に話しかけてきた。




「……あぁそうか。そういう風にも見えるか。仮にそうだとして何しに来たんだ少年よ。」

 

薄暗くてどういう表情をしているかは分からないが、

恐らく自殺を止めに来た俺に対して憤っているのだろう。

他人からしたら自分の苦しみから解放される方法を、

やっと行動に移し今から実行しようとした所で見ず知らずの人間がくだらない正義感で止めに来たという、とんでもなくはた迷惑な話なのかもしれない。



「何しにって…飛び降りようとしてるのを止めに来たに決まってるじゃないですか。

絶対良くないですって!少し落ち着きましょ!」


遠くにサイレンが聞こえている。この人が何をどう感じようが、

俺をどういう風に思おうが関係ない。

もう少し時間を稼ぐ為にとにかく話を繋げなければ。


「くくくっ…まぁ遠からず近からずって所だなぁ少年。安心したまへ。私はこれから『家』に帰る所なんだ。邪魔はしないでくれないか?」


なぜか笑いを堪えるように男はこの状況では信じられようがない嘘を俺に向けて言ってきやがった。



「いやいや!信じられる訳ないでしょうが!何いってんすか!」


ツッこむようなコミカルな状況ではないがツッこむに決まっている。しかし冷静にならなければと、自分で自分を落ち着かせ、どういう話に持ってけばいいのか、まずはあの自殺志願者の興味をそそる内容の話をしなければと頭を回していると、予想外な所に興味を持たれたようだ。



「はははっ…正しい反応だ。だが事実だ。…それと気になる事があるので質問させてもらう。少年のその助ける。という行動は只の自己満足での行動に思えるな。それを己で理解して行動しているのか?いつもこういった事をしているのか君は?」 



恐らく悪気は無いだろう、男が本当に不思議に感じた事を、俺にとっては心に刺さる言葉を唐突に投げかけられた。

確かにこんな事は自分の後悔したくないという保身の為の行動だとは常日頃から思っていた。しかしいざ、直球で目の前の人間からそう言った事を言われると少し痛い。

だが考えを変えるつもりは無いし、助けないつもりもない。




「もちろん自己満足って事なんて分かってますよ。それでも黙って人が死のうとしてるの見てられる程、肝座ってませんから!だから早くこっちに…」



「はっ!それなら君は尚一層の事、厄介な人間だなぁ?分かっていて、そう言う行動を取るということは考えを変えるつもりがないということだ。」

男は堪えられずまた笑い始める。

こちらが心配するのを辞めたくなるような程大笑いし始めた。


「おいあんた!笑いすぎだろ!こっちは真剣なんだぞ!?さっさと降りろおっさんっ!」


あまりにも大笑いされてこちらが苛ついてしまった。

こんなに笑われたのは常日頃お節介を馬鹿にしてくる友人達以来だ。ふと顔を思い出すと不思議な感覚を感じる。感覚というよりは、空気。

急に何だろうか。



「ははっ。すまないな少年。バカにするつもりは無かったんだ。なかなか見ない綺麗な心を持った少年だったので楽しくなったのだよ!そう怒っ…」




男が俺に対しての賛辞のような、蔑みのような言葉を言い放つ前に、突然男の後ろで空間が歪む。



歪な音を立て形容しがたい現象が起こる。



やがて黒い穴のような物が空に浮かぶ。



怒涛の勢いで目の前の非日常すぎる状況が思考をぐちゃくちゃにし、訳を分からなくさせた。今日起きた少しハッピーな日常を思い返す。

……最後の最後にこれか。




「ふむ…少年もう行きなさい。そこだと巻き込まれる。偽善だろうが私は君が綺麗な人間だと思うぞ。その偽善に足元を掬われぬように気をつけるのだな少年。今のような状況のようにな。」


男は困惑した少年の顔を見てここから立ち去るように警告する。

そして、異質な空間に顔を向ける。


明らかに異質なその歪な黒い空間に対して畏れずに相対している様は、まるで待ち望んでいた恋人との再会する時のような笑顔だ。





「なんだよこれ…意味分かんねえ…。」

あっけにとられ呆然としてしまう。目の前で有り得ない事が起こると、こうも思考が追いつかないとは思わなかった。

それでも、体は動いていた。偽善と言われようが目の前で奇怪な現象が起きようが、少年は走っていた。




「あぁ…懐かしい『マナ』を感じる。…少年よ。短い時間だったが話せて楽しかっ…!!」



男が別れの言葉を投げながら振り向くと、少年はすでに男の手を掴むほどの距離まで来ていた。



「何をしてる!やめろ!巻き込まれるぞっ!」




「黙ってろ!!こんなん絶対危ないに決まってんでしょうが!!はやく逃げないと…っ!」


少年は手を離さない。

何故ここまでするのか。何がこの少年を駆り立てるのか。

男の袖を掴み、けして離そうとはしないこの少年は一体何なのか。

しかしゆっくりと考えている程の時間が今はない。

この少年をけして『あれ』に入れてはいけない。



「ば、馬鹿か少年!離れろ!行くのだ!君は来てはいけない!」



無理矢理剥がそうとするが少年は男を離そうとしない。

絶対に助けるという意思を宿した少年の瞳が見える。

偽善などではない。

純粋な善。

それともただの馬鹿と呼ぶべきなのか。


だがしかし最早少年を引き剥がす猶予が無くなる。


周りの景色が歪み男が『あれ』と呼んだ空に浮かぶ黒い穴に空間ごと引きずりこまれはじめる。


「くっダメか…。」


ここまで引きずり込まれ少年を離してしまえば少年がどうなるか分からない。男は諦める。そして少年に謝罪する。

男の自らの『帰る』という行為に巻き込んでしまった事を。


「少年…すまないな。…手を離すなよ!決して!」





歪む。2人は周囲の空間毎吸い込まれる。


感じた事のない感覚を感じた少年は目を閉じた。

目を閉じる刹那、後ろを見ると世界が消えていくのが見える。


あぁ死ぬのか…なんだよこれ

ごめんなおっさん。



少年は男に助けられなかった事を謝罪する。





目まぐるしく変化する現象が感覚を狂わし、意識は抗えず落ちていく。


苦しい。

死ぬってこういう事なんだ。


怖いなぁ。



そして少年は目を閉じた。
















 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。