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控室も豪華なものだった。元々イベントホールは多目的に設計されていたようだ。イベントホールの現在の状況を確認できるモニターもあれば、くつろげるようにソファーが置いてあったり、筋トレの機器まで完備されていた。
しかしだ。選手控室なのに選手じゃないし関係もないテリアとロルル姉様がだらけている。テリアは生徒会が用意してくれた茶菓子を勝手に喰ってる。ロルル姉様はソファーにうつ伏せになってマッサージを俺に要求してきた。
「おいしいっ なにこのクッキー! あ! この紅茶もおいしいねっ」
「あぁっ そこっ もっと強く きもちいいわ レッドのマッサージの腕上がったんじゃない?」
「・・・」
自由すぎる。応援しに来たって言ってたよな? ならもっと俺に気を遣えよ! とは口に出して言えないのは何でだ。
時計を見ると後10分で決闘の時間なのに準備運動すらできていない。まあ負ける気は一切ないが、アップぐらいさせてほしい。
「ところでレッド君」
「なんだよ」
「アルナちゃんとは進展した? どこまでいったの?」
「それ! それよ! 気になってたのよ! おねえちゃん達に教えなさいな」
たわわな胸を揺らしてさも嬉しそうに聞いてくるテリア。とりあえずジト目をして睨み返すと、マッサージでうつ伏せになっていたロルル姉様が体を起こした。逃げられない様に俺の肩をガッチリホールドしている。
興奮したテリアが尻尾をフリフリして鼻血を垂らしてる。気持ち悪いぞ。
「手はつないだ? チューはしたの? はっ!? もしかして・・・もう合体しちゃった?」
「してねーよ! 馬鹿だな! やっぱりテリアは馬鹿だな!」
「じゃあどこまでヤったのよ。お姉ちゃん、とーーーっても心配だったのレッドの恋路。女に興味ない。みたいな感じだったじゃない?」
「ロルル姉様まで何言ってんだよ! ノートにいた時あれだけ「誰にもやらん! 私専用の執事なのよ!」とか言ってたくせにっ 阿呆か!」
「「あら? レッド(君) 拗ねてるの? お姉ちゃんに甘えたかったのね(かしら)」」
「拗ねてないし! ハモってんじゃねー!」
ああもうヤダ。この二人が揃うと手が付けられない。どうにかしてくれ。・・・もしかして転生したのにタバコが吸いたくなるぐらいのストレス抱えてたのって、二人の所為じゃないか。そう薄々感じてきた。
俺が打ちひしがれていると、控室のドアがノックされた。どうやら決闘の時間になったようだ。呼びに来たんだろう。
「時間だレッド・ジャバヴォック。 準備は出来て――
控室に俺を呼びに来たのはルビーだった。そのルビーはドアを開けて控室の中にいたロルル姉様を見た途端、凍りついた。ビキリと効果音が聞こえるほどに。
「あら? 泣き虫ルビーじゃない 久しぶりね」
「・・・準備は出来ているようだな。付いて来い」
どうやらロルル姉様をいなかったことにしたようだ。再起動したルビーは俺を決闘会場であるイベントホールのメインへと連れて行こうとした。
しかし、捕まったとだけ言っておこう。俺が場所は分かるので一人で大丈夫ですよ。とそう伝えると。ルビーはまるでネバネバの食虫植物が昆虫を絡め取る様に捕食された。ロルル姉様の十八番の関節技に寝技で捕獲したのだ。
後ろを振り返らずにメイン会場へと歩みを進めると、ルビーの断末魔が・・・「レッド・ジャバヴォック! 覚えていろ! いやぁあああああああ」と聞こえたんだ。いや聞こえないことにするのが正解だろう。
いや本当にストレス解消の獲物を手に入れたよ。
メイン会場へ足を運ぶと、鼓膜が破れんばかりの声援に顔を上げる。満員御礼の幕が天井に掛けられていた。この世界の文化が出鱈目なのは知っていたが、力士になった気分を味わえた。
反対サイドからはラビッシュが入場してきていた。魔法使いが使うようなローブに、騎士が着込む全身甲冑というどっちつかずの訳のわからん装備なのでよく目立つ。入場しながら観客に向かって手を振っている。
流石の俺でも少し緊張してきたのに、その様子がない。むしろ余裕そうに見える。何か秘策でもあるのだろうか。
ラビッシュの様子を観察しながら大理石のタイルで整備された大きなリングへと上がる。すると嘘のように周りの雑音が聞こえなくなった。いい感じに集中してきている。己の心音だけが俺の耳に聞こえてくるようだ。
実況の生徒会の上級生がなにやらいろいろルールを説明したり、招待したお偉いさん共を紹介しているようだが。それも耳に入ってこない。今は目の前にいる決闘相手をいかに叩き潰すのかしか考えていなかった。完璧な戦闘モードには入れた。本当に今日は調子がいい。魔力操作を試してみた。やはりいい感じだ。毛先まで流れる魔力の機微ですら思いのままだ。
ただ何故あんな雑魚に此処まで集中できるのかが分からない。今日のこの体の調子の出来は異様すぎる。戦闘本能なのかなんなのか。それにラビッシュの余裕な態度・・・何かあると踏んでおいた方がいいかもしれんな。
そして、決闘開始のリングが鳴らされた。




