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結果から言うと【暗黒郷】が効かなくなった時点で負けが決定した。【身体帝化】に鞭を持ったエリスは、まさに鬼に金棒だった。渾身の【紫電腕】を防がれ、バックステップで逃げた所へ。目に捕えきれない鞭捌きで、俺は捕獲された。
現状、簀巻きにされた気分だ。鞭でぐるぐる巻きにされて地面に転がっている。
観客席で手合せを見学していた上級生らは、称賛の拍手をしてくれた。アルナに関しては何故がブンむくれている。ソットしておこう。あれの機嫌を直すのは些か面倒くさい。
「で・・・理事長。 鞭をほどいてくれませんか? 身動きが取れないので」
「そうしたいところだけど、アドバイス・・・ダメ出しが先かしら」
顔を見上げると俺の顔を覗き込むようにエリスがしゃがんでニッコリしていた。
タイトなスカートの中が丸見えだ。大人な妖艶さたっぷりの黒い紐パンツ。網タイツはガーターで、またそれがエロい。エロすぎる。ついつい目線がそこへ行ってしまう。
俺の顔が真っ赤になっていたかもしれん。その理由に気が付いたエリスがパンツが見えないようにしゃがみ直し、人差し指で優しくおでこを突かれた。オルガの嫁じゃなかったら、あやうくプロポーズしてしまうところだった。
「エッチなレッド君 めっ」
「ごめんなさい」
アルナがもしも将来エリスのようになるなら・・・いや待て。俺は犯罪者にはなりたくない。元おっさんが少女に傾いていいはずがないだろ!忘れろ忘れろ!
「レッド君、ダメ出しをはじめるわ」
そういえばそうだった。ダメ出しをするって話だったな。
「はい」
「レッド君の闘い方って・・・うーん・・・なんて言えばいいのかしら バラエティーに飛んでるって見方をすれば、Aランクの冒険者や近衛騎士団に引けを取らないと思うわ。機動力を生かした体術とか、風みたいに流れるような回避技とか、雷の身体強化魔法もそうだし、氷の防御魔法に、常に相手の隙を窺ったり作ろうとするところ、魔力を乱す阻害魔法もあるしね。そのあたり学園の在籍生徒なんて目じゃないと思うんだけど――
真似しかしてないって感じがするのよ」
「真似ですか?」
「模倣をするのは強くなることに置いて間違いじゃないわよ?」
「はあ」
「でもそれだと何時かっていうより、レッド君の現状でいうと壁にぶち当たってないかしら。私が思うに・・・武術体術は剛健くんの真似。回避に短剣もそうだと思うけど疾風ちゃんの真似。身体強化は雷属性だけど爆炎くんの真似。氷の防御魔法はそっくりそのままでびっくりしたけど氷姫ちゃんの真似。相手の虚をつこうとするのなんて怠惰ちゃんと瓜二つよ。 それにたぶんだけどあの魔力の流れを阻害する魔法も何かの真似でもしてないかしら? みんなそれぞれとっても強い子達だから真似するなって言わないわ。 でもどれも極めてないんじゃないかしら。 いろいろ真似して手を出してどれもイマイチになってるのよ。 一貫した自分のオリジナルが無いと今よりも強くはなれないわ」
全てを言い当てられた。一度の手合わせでこれだけ見透かされていたのか。
確かにエリスの言うとおりだ。ノートの街では俺に戦いを教えてくれた冒険者達の技術を全て吸収した気になっていた。自分の心の中でも上手く真似ができたと喜んでいるときもあった。【魔導書】を手に入れたり、【竜魔導】を習得してたりして強くなった気でいた。だが言われて気が付いた。ノートの街を出てからこれっぽっちも強くなってないんじゃないかと。いろんな古代魔法を学習して使えるようになって胡坐をかいていた。
「オリジナル・・・ですか」
「あら素直に受け止めてくれたのね アルナなら言うことなんて聞いてくれないのに、良い息子をもってお義母さん嬉しいわ」
「・・・」
せっかく尊敬し始めてたのに・・・何故にお義母さんなんだ?
もう俺とアルナは結婚したことになってるってのか?
「それじゃあ、愛しの息子に課題を出すわね。この王都学園で、自分だけの何かをみつけなさい。それは戦い方だけじゃないわ。此処ではあらゆる物事を学ぶことができるの。夢でも、それこそ恋でもいいわ。総じて何かを見つける事よ。それが課題。いい?」
「分かりました」
正直に言うと学園に来ても冒険者になるための卒業資格をとるだけで、ただの時間つぶしをしに来た感覚はあった。でもエリスはオルガからそれを聞いてたかもしれないが、俺に学園で何をなすのかという目標を与えてくれた。
劇的な人生を切望しすぎていたが故にいろいろ盲目的になっていたことにも気づかされた。戦闘技術をつけるのもそうだし。もう少しだけアルナと向き合ってみよう。元おっさんであるからという負い目を感じているけれど、この世界ではまだ10歳の小僧なんだ。
学園生活を楽しもう。
ここで一旦の区切りです。ここまで呼んでいただいてありがとうございます。
次回からは学園生活が始まります。




