表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/53

ページ31

俺の【紫電】を放電している拳は、エリスに届かなかった。


やはり武器を隠し持っていたのだ。エリスはスーツの胸部を広げたかと思うと、少し汗ばんだ谷間が露わになった。谷間から物理的に収まる大きさではないハズの黒い丸められた鞭を取り出した。

戦闘中に何やってるんだと動揺して俺の攻撃のキレが悪くなった。それすらエリスにしたら戦いにおける常套手段なのだろう。あんな美人が急に谷間を見せつけてきたら男はもれなく目線がそこへ集まるなり、隙ができる。断言しよう。


「あら? あんまり動揺しないのね?」


「してますよ!」


黒く艶のある何かの皮で作られたであろう鞭をエリスは、自在に操った。目前まで迫ってきている俺の拳を鞭で防いだのだ。二つ折りにした鞭の両端を引っ張り、それで俺の拳を防いだ。


拳は防げても【紫電】の放電は防げまい。しかし、接触した鞭に電気は通らない。絶縁体なのかもしれない。きっと魔物の皮で作られたものだろう。


防御されたが、攻撃の手を止めない。鞭を扱う相手と闘ったことが無いからだ。エリスを防戦一方にさせておく。鞭はたぶん中距離武器に間違いない。現に俺の攻撃を防ぐために、鞭を振り回せないでいる。


「はぁあああああ!」


ノートの街で武術に長けたAランク冒険者のゴルペーザに教わった【拳術】【蹴術】を全開にして連続攻撃を続けた。ゴルペーザは魔法があまり得意ではない代わりに、武術に精通していた。武器戦闘も無手でもどちらも地球における達人の域かそれ以上の化物だ。ちなみに攻撃の重さが重要だと教えてくれたのもゴルペーザだ。

子供の身体である俺に適切な戦い方を教えてくれたんだ。体の柔らかさと、動きの気分さを最大限に利用した武術だ。撓るように反動をつけて蹴りを繰り出したり、ただ拳を繰り出すだけじゃなくて回転を付けて威力を上げたり、空中での攻撃の威力の付け方、身体を捩じって相手の攻撃の回避しそのままカウンターへの移行方法、エトセトラ。俺の戦術の基盤になることは全てゴルペーザの訓練があったからだと思う。


エリスへの攻撃も一撃一撃に攻撃の重さをのせ、それでかつ反撃されにくいスピードでの二手目への連続攻撃を繰り出し続ける。【身体雷化(フィジカルライトニング)】での身体能力の上昇に、【紫電】での放電も織り交ぜた。


次第にゴリ押しが通っていっている。古代魔法陣の【暗黒郷(ディストピア)】で魔力が乱されて魔法が使えないエリスは、【紫電】を纏った拳や蹴り、そして放電の攻撃全てを鞭で防がなければならないのだ。ただフェイントを入れたりしているのは全て見抜かれているのが悔しいが、手数を打ち込んでいるとたまに拳が肩を掠めたりしてきたのだ。


「すごいわレッド君 ここまで強いって想像してなかったわ」


「なら余裕そうに微笑まないでくれませんかね!」


確かに少しづつではあるが攻撃がかすり始めて来ているのに、エリスの表情は変わらなかった。むしろ笑っている。なんというか子供の初めての発表会かなにかを、微笑ましく慈愛の籠ったように見つめる母親のような感じだ。転生する前、妻が息子の幼稚園の発表会のときと同じ顔をしていたのと被るんだよ!


「あら? いつの間に笑ってたのかしら ごめんなさいね」


自覚なしか・・・ 


兎にも角にもそろそろ決めさせてもらう! ヴォル直伝の魔法をちょっと古代魔法で改造した新技で終わらせよう。また頭痛はするかもしれないが、チャンスは今しかない。


「紫電よ 我が(かいな)を轟かせよ 紫電腕」


体術で攻撃を繰り出しながらの詠唱だったが成功した。ヴォルの炎拳(フレイムナックル)を雷魔法で再現した。それを【紫電】の古代詠唱で改良したオリジナルの魔法だ。【紫電】が纏うのは拳だけでは無く右腕すべてだ。紫色の電撃が全身から集められて腕に集約する。ブラックライトのように光り電撃を迸り、紫色の腕の形をした【紫電腕】が発動した。


紫電腕は鞭では防げない。電撃を纏った腕の形をした魔法攻撃であり、物理攻撃でもあるだからだ。腕の形を模した【紫電】が、俺の動きに合わせて自在に動くというものである。俺の拳にも【紫電】は纏っているし、【紫電腕】自体は電撃の塊である。エリスの鞭の防御ではどちらかを防げても、必ず片方のダメージが直撃するということだ。


ちょうど空中で身体を捻るように拳を繰り出す。【紫電】を纏った俺の拳か、【紫電腕】のどちらを防ぐのか。


俺が心のどこかで勝ちを確信したその時だった。


魔力が乱されている筈のエリスの身体が、再びクリスタル色の半透明なオーラを纏い。【紫電腕】を掌底打ちで弾き飛ばし、そのまま突き出した右手で【紫電】を纏った俺の拳をガッシリと受け止めたのだ。


「な!?」


暗黒郷(ディストピア)】はしっかりと発動していた。地面にはまだ紫色に光る魔方陣が展開されていて、短剣もグラウンドに刺さったままだ。


「魔力って乱されても、乱し方さえわかれば何とかなるのよ」









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ