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二章の始まりです
「あ、王都が見えてきた!」
俺の前に座ってキングに跨っているアルナが、魔導書を読んでいた俺に教えてくれた。顔を見上げて前方を見てみると、信じられない光景を目の当たりにした。
「は? あれがあんなでかいのが王都なのか!?」
どうせ石壁、お城で終わりだと思っていた。甘かった。地球で言う100万都市となんら遜色がない。左右を見渡してもその全容を見切れないほどの広大な土地すべてが、王都だったのだ。
中心と思われるところに鎮座する和の城、ノートの街のタージマハルのようなギルドの巨大化版、ビルのように高さのある建物が何本も連立、ニューヨークにあるようなデカい女神の像まである。
そして何より、王都を守るべくして有るはずの、守壁や堀がどこにも見当たらなかった。
「信じられん! この辺の森も草原も魔物はうじゃうじゃいるだろうに」
魔物からしたら餌が群がってくれているようなもんだ。
「ちなみに入税、関税もないよ、レッド!」
来るもの拒まずか・・・すごい都市だな。
王都に近づいていくと、イヴ・ジャバヴォックよりもかなり小さなドラゴンがこちらに向かって飛んできた。その背には騎士甲冑を纏った騎士が騎乗していた。
「そこのグリグリちゃん! ついてきなさーい」
なんとも引き締めた緊張の糸が緩んでしまう甘くて気の抜けた女性の声だった。
取り敢えず誘導に着いて行くようにキングに命令する。きっと上空の哨戒をしていたんだろう。よく見ると他にも小さい竜が王都の上空をたくさん飛んでいた。空軍のレベルが高いのが良く分かる。
女性騎士の後を着いて行くと、王都の外側にある穴だらけの高層ビルへと誘導された。鉄筋コンクリートのようなものだろうか、とてもしっかりとした地球のビルに引けを取らない建物だ。
空を飛ぶ魔物の厩舎のようだった。他の魔物もどんどん出たり入ったりを繰り返している。
キングでも入れる大きめな穴から内部へと入る。内部は吹き抜けで、たくさんの魔物を収容できる檻、エレベーターなんかもあった。
「こっちっこっちー 君たちのグリグリちゃんはまだ登録してないよねー?」
アルナは何度か王都に来たことがあったが、上空からこんな建物へ来たことは無かったようだ。俺同様にほけーっとしていたら、誘導してくれた女騎士さんに手招きされた。
頭の防具を外した女騎士さんは美人で20代ぐらいだった。金髪碧眼でなんの半人半獣か分からなかったが異様に耳がとんがっていた。
「はい」
「なら登録しちゃおー 銀貨1枚ですぐにできるけど、しちゃうよねー?」
「はい、お願いします」
銀貨を一枚手渡すとキングを魔法陣が刻まれている床の上へと連れて行った。白色に淡く魔方陣が光る。するとガラスのように透明な輪が、キングの前足の指につけられた。
「はいっ おわりー ようこそ王都へ!」
両手を広げて歓迎してくれたのは嬉しいが、いきなりすぎて反応に困る。かなりフランクな人だ。自己紹介とかも勝手に始めてたし。名前はリリネルというらしい。無理矢理俺とアルナも、自己紹介させられた。
あと、オグマに貰った通行許可証の出番は旅路で一度も無かった。空を飛んで来たし、何個か街はあったけどスルーしてきたからだ。王都で必要ないとはな。
「あー グリグリちゃんは街へは連れていけないけどー 檻借りちゃう? 一日、銀貨50枚で食事込みだよー?」
「え! そんなにするんですか?」
意外と高額だ。キングの食費を考えたら仕方ないが、出費が馬鹿にならんし。手元にあるのでは足りない。
「でもでもー グリグリちゃんが小さくなれるなら街にも連れていけるよーってそんなの無理だよねー?」
無理じゃないかもしれない。すぐさま【魔導書10】と【検索10】のスキルを使う。半透明の魔導書の鍵を魔力を流して開き、『魔物を小型化する魔法』を検索する。リリネルさんが「なにそれ!」と興味津々で近寄ってきたが、アルナに牽制されて近寄れないでいた。別に見せてもいいんだがな。
数件ヒットした中で、一番使い勝手がいいのを選択する。
【魔法名】魔物小型化刻印
【属性】 古代
【形式】 魔法陣
【魔力消費量】 100
【刻印式魔方陣型魔法 魔石へと魔法陣を刻み、魔物に食させる。食すれば飼い主の命令または魔物の意思で最小型化が可能になる】
「これだ。 アルナ、魔石を一個くれ」
「・・・半分はレッドのだもんね。仕方ない・・・」
その通りだ。なのになぜそこまで渡すのを渋る? とっとと渡さんか!
リリネルさん五月蠅い。魔石が! あんなにぃー にぃー にぃーとか吹き抜けのビルの中を木霊してたぞ。
魔石に【魔導書10】で検索して覚えた魔法陣をスラスラと刻んで、キングに食べさせた。石なんか喰うのを嫌がるかとおもえば、何の躊躇もなしにゴクリと飲み込んだ。キングの身体がみるみる縮み、手の平サイズになった。
ピーピー
可愛らしい鳴き声に変わったものだ。パタパタと翼を羽ばたかせて、飛ぶと俺の頭の上へに着地した。まったりとくつろいで寝そべり始めた。アルナが噴き出すのを堪えてプルプルしてやがる。リリネルさんは小型化したのが信じられないのか、固まっていた。忙しい人だ。




