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ページ19

ガキンガキンと牙がぶつかり合う音が木霊する。見上げるほど大きな骨だけの魔物が俺へと威嚇をしてくる。骨の獣とでも名付けようか。元が何なのかさっぱり分からん。弱点はガイコツどもと変わらないだろう。頭蓋骨を胴体から切り離せばいいんだが・・・


「なんで頭が三つもあんだよ!」


ついツッコンでしまった。この世界の魔物は何でもアリなのか? 見たことないぞ、三つも顔のあるバケモンだなんて。俺を誘い込んだガイコツどもは建造物の奥へと逃げ込んだようだ。奥には端にある観客席のようなところへと上がれる階段があるようだ。完全にハメられた。この骨の獣を倒したら覚えておけよ。



先手必勝ってことで石柱を立体機動の足場に使い、骨の獣の頭上へと跳躍する。短剣の切っ先を三つある首の一つに繋がっている部分を目掛けて振り下ろそうとした。だが嫌な予感がして体を捩じって回避行動をとり、骨の獣のはるか後方へと着地する。分からない。ものすごく死に直面でもしたかのような嫌な感じだった。三つ首の内の一つが俺のいる後方へと頭蓋骨を向けていた。完璧に見抜かれていたのかもしれない。あのあまま攻撃を続行していれば、かみ殺されていただろう。


「強さはキング以上ってところか・・・ 魔法が使えないのが苦しいな」


骨の獣は威嚇を続け、ゆっくりと近づいてくる。骨格しかないのにどれだけの重量があるのだろうか、一歩一歩が地面を揺らす。魔法が使えるならなんてこと思わないんだが、生身で戦うとなると鼓動が早くなる。緊張? いや・・・武者震いだ。この感覚はノートの街で俺を鍛え上げてくれた冒険者たちと対峙した時によくあった。それほどまでに骨の獣が強いと本能が理解しているようだ。


「「「ガオオオオオンン!!!」」」


骨の獣の三つ首が同時に雄たけびをあげた。建造物内に木霊して鳴り響き爆音と化す。見えない衝撃波が俺に襲い掛かってきた。小柄な俺は建造物の壁にまで吹き飛ばされる。空中で体勢を立て直すことには慣れているので、大ダメージは無かった。しかし耳が可笑しくなった。耳から流れてきた血を袖でふき取る。


「鼓膜がやられたか?」


自分の言葉も上手く聞き取れない。最悪だ。たった一回の攻撃で窮地に立たされた。視覚を奪われることには慣れているが、聴覚を奪われたのは初めてだ。音を頼りにできないのはかなり不味いかもしれない。


骨の獣が悠然と歩み寄ってくる。どうも俺がどれだけのダメージを負ったのかを確認しているように三つ首が動いている。聴覚がいかれているかを確認しているようにも見えた。牙をぶつけているのを見るときっとガキンガキンと威嚇しているときのように音を立てているんだろう。


三つ首の内の一つが大きく口を開いた。俺はすぐさま壁を足場にして立体機動で攻撃を回避する。音は聞こえなかったが、噛みついただけで壁が崩壊していた。当たれば一撃で死ぬな。


俺に攻撃を避けられたのが相当頭に来たようだ。立体機動しながら逃げる俺を必死で追いかけてくる。三つの首から何度も何度も石柱をも砕く噛みつきが繰り出される。音が聞こえないので反応に遅れるが、俺の逃げ足の方が勝っている。


怒涛の噛みつき攻撃は骨の獣を隙だらけにした。わざとギリギリで躱して、カウンターに転じてみる。短剣を逆手に持ち、立体機動の反動をつけた一撃を頭蓋骨の脳天に叩き込んだ。


キィイイイイイイイイイン


頭蓋骨は固かった。ガイコツと違って関節の連結部分も強固だ。逆にオグマから貰った短剣の刃先が欠けてしまったのだ。音自体は聞こえなかったが、弾かれた振動が手を伝ってきたんだ。


「はぁ!? うそだろ!」


少し愛着のある短剣だったのでショックは大きい。それよりも攻撃が通じなかった。【短剣7】の俺がもつ最大の攻撃が効かなかったのだ。たぶん【拳術5】も【蹴術5】もダメだろう。こうなると攻撃手段が限られてくる。


攻撃が通らないなら、自滅させようではないか。壁や石柱をあんなに簡単に噛み砕けるんだ。作戦は立てやすい。自分が噛み砕いた石柱の倒壊に巻き込まれれば骨の獣もただではすむまい。回避しながら誘導して石柱に攻撃を当てさせるのはそう難しくは無いだろう。


「自滅してもらおうか・・・こっちだウスノロ!」


俺の挑発にまんまと誘われた骨の獣は、鋭い牙や足の爪で何度も攻撃をしてくる。石柱を背後にして待ち構えて、骨の獣の強烈な一撃を回避する。牙や爪は空振ることなく、石柱をどんどん砕いていく。


ときどき三つ首の大音量による音の衝撃派で攻撃をしてくるが、鳴くと分かっていれば回避は容易かった。石柱の後ろに回り込めばいいだけである。それに鼓膜が可笑しくなって音が聞こえないのに、無駄だと思うがな。


次第に石柱が安定しなくなりグラグラと揺れ始めた。


「そろそろ終わりか」


再度、揺れ始めた石柱の前に骨の獣の攻撃を誘う。まんまと三つ首が揃って縦三列になって噛みついてきた。阿呆としか言いようがない。横っ飛びで回避すると、三つ首のそれぞれの牙が石柱を砕き割った。


上の方からパラパラと小石が落ちてきたかと思うと、石柱が骨の獣を下敷きにして倒壊したのだった。


残念ながら断末魔は聞けなかった。ピクリとも動かなくなった骨の獣の残骸を見おろす。終わってみると実につまらない戦いだった気がする。まだガイコツどもの方が歯ごたえがあったな。





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