ページ16
前回までのあらすじ
ノートの街から王都へ出発
イヴ・ジャバヴォックと邂逅
鬱陶しい魔物どもを焼却
四足の鷹こと、グリフォンをペットに~
もう少しだけ王都への旅路が続きます。
キングの乗り心地は最高の一言だ。乗り物酔いすることもないし、快適な空の旅を堪能している。魔物の相手をしたせいで遅れた分などすぐに取戻し、下手をすると陸路なんかよりも数倍早く王都に到着するかもしれない。あれから数日の間、身体雷化の影響で全身筋肉痛で動けなかった。魔物に襲われるのを心配していた。しかし、キングの強さのお蔭か、魔物がまったく上空でも地上でも近づいてこなくなった。魔物は本能でキングが強いと分かるのだろう。なら本能で俺の強さも見抜けよ・・・
「見て見てレッド! 39個も魔石があったよっ」
「おー そうだなー」
アルナはずっとこれだ。もっとキングの背に乗ってみる景色に感動したとか言ってくれるかなとか期待した俺がバカでした。
何処までも続く地平線、緑で覆われた大地、キラキラと山頂の雪が反射する連峰、空と海の色が同化する水平線。
そんなのどうでもいいのか、大量の魔物を焼き殺して手に入れた魔石にご執心なのだ。かれこれ4日は同じ調子だ。何度も袋の中の魔石を数えては、ニッコニコの笑顔で俺に報告してくる。なんだか知らんが、状態のいいものがほとんど。売ったら一生贅沢して暮らせるとか言っていた。
魔物と闘う素晴らしいスリルのある人生の方が楽しいし、それを切望していたんだ。今から幸せな老後みたいな人生は、言語道断である。
なんて思いながら生返事していると、進路上の街道から少し外れた熱帯林のような森の中に気になる建造物を発見した。遠目で見た感じ石か岩で作られた建造物だ。あまり高さはないが、面白いことに木の根や蔦に建造物自体が覆われている。東南アジアの古代寺院のような感じだ。
「なあアレはなんだ? 遺跡かなにかか?」
「んー? こんなところに遺跡があるって聞いたことないけど・・・ なんだろうね?」
「よしっ! いってみよう!」
俺の気持ちはもう決まっていた。寄り道決定である。「えー」と後ろに座っている魔石少女から嫌そうな声が聞こえてきたが、キングに命令して遺跡のような建造物の近くへ着地させる。
近づいて見れば見るほど建造物が、かなり古い時代のものだと分かった。ノートの街で使われていた建築技術が何処にも使われていない。ただの石積みの建造物だった。故に隙間が多く存在したのか、長い年月の間に周囲の熱帯雨林の植物の根や蔦に浸食されたのだろう。
一番大きな三階建て程度の高さのある建造物を中心に500メートル四方には地面に石が敷き詰められており、半壊している建造物や何かを模った石像が乱立している。上空から見ると一目瞭然だった。きっと古代異世界の小さな都市か何かだったのだろう。
「この辺でいいぞ、キング」
「ねえレッド。本当に降りるの? なんか嫌な予感しかしないんだけど」
「いやいや、行かないわけがないじゃん! 古代の建造物だよ! 調査探検しないなんてありえないだろっ」
大人げなく興奮してしまった気がする。だが自重はしないぞ。何年ぶりだろうってぐらいワクワクしてるんだ。
キングが着地してすぐに、水族館に駆け込む子供のように建造物の調査を駆け足で始めた。後ろから呆れた様な嘆息が聞こえてきたが、聞こえなかったことにしよう。時間的にもうすぐ夕方になる頃だし、夜になったら野営の準備をしなくちゃいけないからな。・・・勝手に決めているが、今日の野営地はこの遺跡だ。
一番目立つ大きな建造物は最後の楽しみにとっおいて、まず調査したのは乱立している石像や平屋の建造物だ。どれもこれも植物に浸食されてボロボロになっていて面白い。それに信じられないほどの巧妙な彫刻の技術はあったようだ。どの石もすべて何かしらの彫刻による飾り付けがされていた。
石像をいろいろ見て回った。全部で50以上の石像があり、内半数は壊れて何の石像かも分からない。石像のほとんどが魔物をモチーフにしたものが多かった。緑の先住民に酷似した石像を見つけた時は思わず親近感が湧いた。こいつ等古代からゴブゴブ言ってたんだと思うと吹きそうになった。
「レッドー!」
アルナも嫌がっていたくせに調査に協力してくれた。呼ばれた方へ行ってみると、半壊した平屋のような建物の内部に5メートルほどの石板が立てられていた。見たこともない古代文字で記された魔法陣が彫刻のように刻み込まれていた。
「おおー 何の魔方陣だろうな? 試に魔力——「ダメ!」
短剣に魔力を流して魔法陣の中心に刺しこもうとしたら、アルナに止められた。何やってんの?と本気の表情だったので、短剣をそっとホルスターに戻す。
「古代魔法は危険なものしかないの! 現代だと禁術に指定されてるんだから!」
どうやら古代の先人たちの魔法は、現代では禁止されているらしい。人種でも半人半獣のように様々な種族がいて、中には数千年生き続けている長寿の種族もいる。その種族は古代魔法を習得しているらしいが、絶対に使わない。かなり危険で非人道的な大破壊をも可能なものばかりなのだという。過去に長寿の種族に喧嘩を売った馬鹿な国が一夜にして滅ぼされたらしい。それから禁術指定されて、世に知られることが無くなっていったとかなんとか。コレは世界の常識らしい。初耳だわ。
「分かった 分かった 見てどんなものか分析するぐらいなら、構わんだろ?」
「・・・レッドならすぐに使えるようになりそうだからダメ」
「なんでだ!」




