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ページ15

俺と四足の鷹の魔法の衝突で、焼き殺した魔物の灰が舞い上がったのを利用しよう。視界が0になってはいるが、こちらから向うのだいたいの居場所は分かる。大きな体を空に飛ばすための翼を羽ばたく音だ。対して向うは俺の居場所をつかてないだろう。風を起こして灰を飛ばそうとしているようだが、そんな程度では半径10キロにも及ぶ黒灰は消しされないようだぜ。おかげでかなり目が痛いがな。


反撃は確実なものにしたい。1撃・・・いや2撃でアイツを行動不能にしようではないか。


まずは魔方陣だ。テリアが馬鹿なせいであまり襲われなかったが、ただの突風や強風を発動させる【風魔方陣2】でも可能だ。短剣を地面に突き刺して、魔方陣を展開していく。緑色に淡く光る半径3メートルぐらいの円が広がった。展開に必要な分の魔力と、展開後に数分だけ魔方陣を魔力供給なしでも維持できるだけの魔力を流しておく。用途は後でのお楽しみだ。


「だいたい20メートル上空ぐらいか・・・ なら届くな」


【跳躍10】のおかげで俺の最大ジャンプ力は、10メートルまでなら届く。【身体雷化(フィジカルライトニング)】を使っている状態なら20メートルまでなら届く。なら直接ぶん殴ってやるとしようか。


何もなしにただ黒い灰が充満している中から飛び出しても、四足の鷹なら簡単に反応されるだろうからな。

水魔法をフェイクにしようか。


「水よ 弾丸となりて 撃ち落とせ 水弾(ウォーターバレット)


直径30cmの水の弾丸を【水詠唱5】で三つほど精製した。ただの水の弾丸ではなくて、しっかりとスパイラル回転して翼の音がする方向へと時間差で三連になるように発射した。俺も全力で跳躍する。


四足の鷹は煙幕と化した灰の所為で、完全に俺を見失い。ホバリングしながら翼で風を起こして煙幕を吹き飛ばそうとしていた。


それが裏目に出る。突如、煙幕の中から三連の水弾が飛来したのだ。スパイラル回転した水弾はそこそこの速さだ。一つ目を難なく躱し、二つ目も余裕で回避した。


2つの水弾の影に俺が隠れていたことも見抜いていたようだ。跳躍した勢いをそのままに短剣を四足の鷹の首筋を狙って振りぬこうとした。

まるで金属同士がぶつかり合った音が響く。短剣と四足の鷹の鋭い嘴が火花を飛ばして弾きあった。残念ながら空中戦ではやはり押し負ける。四足の鷹の斥力に負けて、跳躍した勢いが死に、自由落下した。やはり一撃では倒せなかったか・・・


「流石にそう甘くはいかないよな でもまだだぜ?」


時間差で発射した三発目の水弾が、俺の背後から飛来する。体をねじってをギリギリまで隠していたのが功を奏した。嘴のつつくような攻撃を俺に加えようとしていた四足の鷹の顔面に、水弾が直撃した。あまりダメージは入らなかったようだ。しかしだ。四足の鷹の瞳に怒りが見える。今までで一番の鳴き声を上げた。


グルガアアアアアアア!


翼をもたない落下するだけの俺を見下ろしてチャンスだと思ったのだろう。大きな翼を羽ばたいてさら10メートルほど上昇して30メートル上空へと瞬く間に上昇する。そして、最初に見せた急降下の攻撃で止めを刺そうとしたようだ。翼をたたみ、四足の鋭い爪を構える。確かに空中で人間は無力かもしれない。あの爪で貫かれたものならひとたまりもないだろう。


四足の鷹が急降下を開始する。問題はタイミングだ。ミスれば死、成功すれば俺の勝利だ。


「チャンスなのはお前じゃねーんだよ!」


風を切り裂いて降下してくる鋭い爪が接近するその時、俺は短剣に風の魔方陣を発動する分の魔力を込めて、地面へと投擲した。煙幕と化した灰が舞う下で、短剣は先ほど準備して【風魔方陣2】で展開していた魔方陣の中心へと突き刺さる。短剣から込めた分の魔力が流れだし、魔方陣が発動する。魔法名は【上昇気流(アップドラフト)】だ。まぁいい感じの魔法名だと思うが、ただの強烈な風だ。それが空に向かって吹き荒れるだけ。


それだけでも効果はあると思うが、今はさらに灰の煙幕のおまけつきだ! まるで火山が噴火した時の噴煙のように灰が爆発的に上昇する。俺を飲み込み、そして急降下していた四足の鷹をも上昇気流と灰が包み込んだ。


四足の鷹は完璧に目標を見失い、急降下の攻撃を中止せざるを得なくなった。大きな翼を広げて降下を止めると、視界が見えなくなった原因の鬱陶しい灰を羽ばたきによって散らす。すでに俺の魔法【上昇気流(アップドラフト)】は止んでおり、すぐに灰の煙幕は晴れた。


急降下をやめて羽ばたきを始めた時の翼の音で四足の鷹の位置を把握した。一度着地した俺は、【上昇気流(アップドラフト)】が吹き上げる噴煙のような灰に紛れて、再び跳躍する。跳躍した後、短剣に込めた魔力がきれたのか魔法が止まったようだ。


「雷よ 我が拳に衝撃を集めよ 雷拳(サンダーナックル)


身体雷化(フィジカルライトニング)】で全身に使っていた雷を右手の拳に集める。淡く黄色く光る程度だった電気が、右手の拳に集められて眩しいぐらいに光を発する。バチバチと放電も起こしている。

これもまたかなりピーキーな魔法で、操作を誤れば俺が感電したりする。ヴォルの炎拳(フレイムナックル)を勝手に真似して、【雷詠唱4】でオリジナルの魔法を作り上げた。敵を殴った上に、電撃のプレゼントで失神させる。捕獲するには最適な魔法だし、俺のお気に入りの一つでもある。


四足の鷹の晴れた視界には右腕の拳に電撃を集約させた俺が――


「今から俺の相方(ペット)な!」


意表を突かれて反応に遅れた四足の鷹の横っ面へと叩き込んだ。雷拳(サンダーナックル)の一撃が、水弾によって濡れた四足の鷹へと大ダメージを与えた。全身へと雷が迸り四足の鷹は意識はあるものの、身体が感電し硬直した。


太陽が傾き、夕日であたりが橙色に染められていた。共に地面へと落下しながら目が合うと、四足の鷹の瞳から怒りが消え、俺を認めたぞとでもいうようにスッキリと清々しい瞳だった。




戦闘で舞い上がった灰の煙幕がおさまり、視界が晴れる。その頃には四足の鷹も感電から体の自由を取り戻した。四足の鷹は俺に従うかのように頭を垂れた。かっこいいペットが完全に屈服したと思われる。


「よしよし。 お前の名前は・・・そうだな~ 空の王者って言ってたし、キングな!」


羽毛でフサフサの頭を撫でつつ、名前を決める。するとキングは嬉しそうに喉を鳴らした。



何か忘れてる気がすると思ったら、アルナが俺の腰に飛びついてきた。二人とも灰を被って真っ黒になっているが知ったこっちゃないという感じの飛びつき具合だ。涙を目に貯めたアルナを見ると、どこか安心した気持ちになった。


「おかえりっ! 心配したんだから!」


「あぁ・・・ただいま」










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