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グルガアアアアアア!


鋭くとがった黒い爪の生えた猛禽類そのものの四足の脚をつきだして俺目掛けて急降下してきた。大きく広げていた翼をたたんで速度を上げてくる。物々しい爪はまるで死神の鎌のようにも見える。


「お! けっこう早いな!」


迎撃の準備だ。是非とも俺専用の相方(ペット)にしたいので殺すのはやめておこう。致命傷を与えるのも、せっかく王都までの足代わりになるのだ。それもよしておこう。目的は捕縛。急降下してくる四足の鷹の攻撃を正面から受け止めるのは愚策だ。魔法をふんだんに使った絡め手でいこう。いや、大規模な魔方陣を二つも使ったばかりだし、魔力の残量に不安がある。速攻で決めるべきか・・・


短剣をホルスターにしまい直して、上空から迫りくる四足の鷹の攻撃を見据える。身体を強化できる魔法がアルナみたいに【無属性魔方陣】で簡単に使えれば御の字なんだがな。似たような魔法を詠唱で使えないこともないが代償が大きすぎる。しかし、使うしかあるまい。2.3日の筋肉痛は我慢しよう。その代りにカッコイイ相方(ペット)が手に入るんだからな。


うかうかしていたら四足の鷹の爪に串刺しにされてしまう。すぐさま魔法の詠唱を始めた。使う魔法は俺が編み出した魔法だ。この世界ではあまり浸透していなかった雷属性の魔法だ。スキルの魔法属性の【雷詠唱4】にレベルが上がった時にようやく使えるようになった。かなりピーキーな魔法だが、お気に入りの魔法の一つでもある。


「雷よ 我が身体に迸れ 身体雷化(フィジカルライトニング)


詠唱を唱え終えると、全身に魔力と共に電気が迸る。静電気のピリピリとした感じがこそばゆい。帯電した俺の黒髪が逆立ってアフロみたいになった。すこしでも魔力の操作を間違えると、ピリピリがバチバチになって電撃をもろに喰らってしまうのだ。


「カウンターを狙うか・・・」


全長3メートルもある大きな体で急降下した跡、必ず隙を見せる筈だ。風を切る音と共に急降下してきた四足の鷹の爪が目前に迫るが、軽いバックステップで難なく躱せた。【身体雷化(フィジカルライトニング)】を使用中の反応速度は無理矢理電気で上げているだけはあると思う。


「くらえ!」


しかし、狙った通りにはいかなかった。切返しの瞬間に回し蹴りを叩き込もうとしたが、手ごたえは無く空振りした。減速もしくは着地すると思っていたが、四足の鷹は、急な突風のように吹き出した上昇気流に乗って上空へと飛翔したのだ。きっと魔法を使っているのだと思われる。

まさか俺に攻撃を避けられるとは思っていなかったのだろう。四足の鷹は、上空で旋回してこちらを窺っている。


次の急降下の攻撃に備えて身構えていると、四足の鷹の視線が俺から逸れたように見えた。大きな翼を限界にまで広げた。あの大きさの身体を飛ばすのに必要な大きさである分、とても大きくてかっこいい翼だ。だが感動している場合では無かった。


グルガアアアア!


急降下の攻撃では無く、魔法で攻撃してきたのだ。緑色に淡く光る魔力を流したのが分かるほど強力な魔法を放つのだろう。色からして風の魔法だ。広げた両翼にそれぞれ風の渦ができる。30メートルは離れた位置にいるのに、風が集約しているのが地上にいる俺にまで感じた。


闘いに気をとられていた俺は、アルナの存在を忘れていた。地球でもそうだが、肉食動物は弱いものから狙う。弱ったもの、子供、戦闘不能なもの。防御の甘いところから狙うのは常套手段だ。それが生き死にを左右する闘いであればあるほど。


集約された風の渦は、俺ではなくしゃがみこんでいたアルナへと放たれたのだ。


「アルナ! 避けろ!」


「ひっ」


アルナは四足の鷹が発動した、魔法を見て怖がってより蹲ってしまった。有事の際、というか急に強い魔物が飛び出してきたり襲って来たりすると、アルナは驚いてしゃがみこんでしまうクセがある。此処までの旅路で気が付いたことだ。詠唱しなくても発動できる魔法があるのに、怖がってしまうんだ。黒い鬼の時も平静に保っていたつもりだったらしいが、俺が抱きしめて回避しなければ対応できていなかっただろうし、イヴ・ジャバヴォックが現れた時も腰を抜かしていた。まぁ10歳の女の子にビビらず戦えなんて言えるわけがない。


「氷よ 塊壁となりて我らを堅守せよ 凍壁(ブリーズウォール)


身体雷化(フィジカルライトニング)を使った状態でエリーナから教わった氷詠唱で2番目に防御力が高い魔法を発動する。無理矢理に体に流している電流で、口と声帯の動きを速めることができる。要は信じられないくらいの早口で詠唱を済ませられるということだ。だがこれを使うと後遺症としてもれなく数日喉が痛くなるおまけつきだ。


四足の鷹の魔法がうねりをあげてアルナに当たる寸前に、俺の氷魔法がそれを防いだ。風の渦が氷の壁に衝突する爆音が響き渡る。焼き殺して黒くなった魔物どもの灰を巻き上げて視界が怪しくなる。アルナの無事を確認しなければ。


「アルナ! 無事か! 返事しろ!」


「うん 怖かったよ~」


やっと再起動したのかアルナは巻き上げられた黒い灰で視界がほぼ0に等しいのに、声だけで俺を見つけた。目に涙をいっぱい溜めて俺に抱き着いてきた。


「良かった。けど抱き着くのは後な? 先にアイツを捕獲しなくちゃ」


「うぅ あれってグリフォンっていう上級の魔物だよ! 劣竜とかなら餌にしちゃうような空の王者だよ! 上級冒険者でも戦わずに逃げるのが常識なの! 危ないよレッド。今のうちに逃げよう?」


「そんな肩書き持ちだったのかアイツ! ますます俺の相方(ペット)に相応しいな!」


「・・・もう知らないっ」


いやな。アルナの言いたいことが分からないでもないんだ。確かにあのグリ・・・なんだっけ? 四足の鷹は強い。でもな、テリア、ヴォルとかエリーナほどじゃない。これは完全に俺の意地だけど、ノートの街で俺を鍛え師事してくれた冒険者たち以外には絶対負けたくねえんだ。


「大丈夫だって、絶対負けないよアルナ」


言い聞かせるように、しがみ付くアルナの頭をナデナデする。すると嬉しそうにした後、了解してくれたのか離れてくれた。今度は身体強化の魔法を発動しているようだ。俺と四足の鷹との戦闘に巻き込まれることは無いだろう。


「いってらっしゃい」


「あぁ いってくる。 帰りに相方(ペット)でも連れてくるよ」


さて、反撃の開始としようか。



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