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「手術はまだ怖いか?」
『そりゃあもう!目を切ったりするんだよ?』
電話越しに聞こえる彼女の声は少し震えていた。
それもそうだろう 俺の彼女である優衣は今日、目の手術を受けるのだから。
『でも、治療が終わったら和也の顔も見えるようになるんでしょう?』
ふいに出た言葉に俺は少しドキッとした。
彼女に照れ隠しをするように俺は
「・・・そうだな」
と一言言うと微笑を浮かべた。
彼女もつられたように笑う。
『じゃあ・・そろそろ行くね』
ちょうど赤だった信号機が青へと変わり俺も歩き出す。
「あぁ、行ってらっしゃい またあとでな」
彼女との通話を切ろうと携帯電話の画面を見た時だった。
ザーッと音がして気がついたときにはトラックが鼻の先にあって・・。
それはほんの一瞬の出来事だった。
携帯電話に伸ばした手も届かなくて俺はただただ彼女のために用意した蒼いバラの花が散るのを眺めることしかできなかった。