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拙いですが、見ていただけると光栄です。
「レイラ様、起きてください」
「ん……おはよう、イネ」
「おはようございます。今日も良い天気ですよ~」
そう言いつつカーテンを開けるのは、私の家の使用人の一人である、イネだ。
彼女は、カーテンを紐で括って日の光を部屋へと差し込ませると、小窓を開いた。
爽やかな風が部屋へと入ってくる。
「…まだ眠いんだけど」
「年始めに、規則正しい生活を心がけるとおっしゃったのはどちら様でしたっけ?」
「……確かに、そう宣言したけど…うん、そうでしたね。はい。起きます」
にこーっと微笑んでくるイネを見て、そそくさと起き始めるレイラ。
彼女に口論で勝てた記憶はないので、言いくるめられる前に退散しておく事にしたのだった。
「子供相手になんて大人げない…」
「何か仰いましたか、レイラ様?」
「……ソラミミでは?」
「目が泳いでおりますが」
「気のせいです!」
悪い流れを振り払うようにレイラは叫んだ。
そんなレイラに肩をすくめたイネは、それ以上追及することなく、あっさりと話題を変えた。
「──それはそうと。今日の朝食は、ベーグル、デリーフィッシュの薫製サラダ、領地内で採れたワーズのスープです。デザートには、チーズケーキのラズワルソースがけを」
「…ねぇ、何度も言ってるけど、ラズワル単体で食べたいんだけど」
「あんな酸っぱい物をですか? 煮詰めて甘くしないと食べれませんよ」
「えー…」
ラズワルとは、日本でいう木イチゴの形をしている木の実だ。
ジャムの味は、木イチゴのジャムより若干酸っぱい。
酸っぱいだけで渋みはないから、普通に食べれるとは思うのだけど、この世界では『木の実はジャムとして使うもの』という認識のため、生では食べられない。
毒があるわけではないのだし、挑戦してみなければ分からないじゃないかと思うのだが、危険だという事で、未だに生で食べて良いと許可されたことはない。
「それよりレイラ様、着替えて下さい。寝間着で食事をなさるおつもりですか?」
「……ご飯こぼさないよ」
「そういう問題ではないです」
やんわりと抵抗してみるも即座に却下された。少し落ち込みつつも、イネに手伝ってもらって着替える。
ちなみに、就寝時の寝間着は、パジャマではなくネグリジェのようなものだ。
「そういえば、今日は何か予定ある?」
「レイラ様はございませんよ」
「りょーかい」
──ここで、私の説明を少々。
私は所謂、転生者だ。
……とは言っても前世の記憶は曖昧で、自分の出身地や名前などの、詳しいことは覚えていない。
覚えている事と言えば──純日本人だったとか、女性であったとか、あとは日本での一般常識とか。
自分の死んだときの記憶はない。…あっても困るんだけども。
ただ、『前世において死んだ』という事は、頭に記録として遺っていて、それはたしかな真実だ。
ついでに言っておくと、若くして亡くなったらしい。……天寿を全うしたかった。
そして、今現在。
私の名前はレイラ・アルノーディア。もうすぐで年は十になる。
貴族であるらしい我が家の家族構成は、両親と兄(十三歳)と妹(七歳)と私だ。
血筋的なものなのか、家族は美形ばかりだ。
父は、騎士団長をしているだけあって筋肉質で、男らしさあふれる、いかにも軍人さんって感じのイケメン。
兄は、騎士服を着ていると線が細く見えるけれど、実際は適度に筋肉があるというギャップ持ちの美形だ。
母はおっとりした雰囲気(実際天然)でタレ目の美人さんだし、妹は明るい性格で、くりっとした茶瞳に自然な縦ロールの、美人というよりは可愛い感じの女の子だ。
かくいう私も美形であるのだが、我ながら驚いている。
…何にって、前世の容姿とのギャップに、だ。
前世は平凡だった。頭も運動神経も。
顔は良くもなく悪くもなく、真ん中あたり。
唯一告白されたのは、保育園くらいの頃だったと記憶している。あれが人生のモテ期だったなー。
この世界の言語は、全部の国で共通していて、日本語とも英語とも異なる。
さらに言えば、アジア系の言語でも、イタリア語でも、ドイツ語でも、フランス語でも、インド語でもなく──とにかく、聞き覚えのない言語であった。
──そんな追憶をしているうちに、いつの間にか広間の扉の前に着いていた。
扉は大きく、非力な子供の力では動かせないため、付き従ってくれていたイネから大広間(食事を食べるところ)の扉を開けてもらって、中に入る。
「──おはよう、レイラ!」
まず聞こえてきたのは、兄・ジェラールの声だった。
ようやく声変わりを終えた、低音の美声。
……容姿端麗で美声って。世の中不公平だと思うんですけど。
「おはよう、お兄様。お父様、お母様、マリーもおはよー」
「お早う」
「おはよう、レイラ」
「お姉ちゃんおはよーっ! 早く食べようよ」
どうやら私待ちだったらしい。
遅れたことを詫びつつ自席に座ると、すぐに食事が開始された。
この世界では、日本のように『いただきます』と言う文化や、外国のように神に祈ってから食すという考えはない。
各自が各自のルールに則って食事を始めるのだ。
個人の自由だから、何もせずに食べる人も多い。
ちなみに、私の場合は「いただきます」と呟いて、手を合わせてから食べる。
知らず知らずのうちに、日本での習慣は身に染み着いているようだ。
「…あ、そうそう。私は今日、孤児院への訪問の予定があるのだけど、皆は?」
母が食事の合間にそう問う。
「そういやァ、今日は王宮で新米騎士の指導だな。少し遅くなるかもしれないから、先に食べていてくれて構わない」
「いつも通りだよ」
「私は、特に予定なしだけど」
「わたしもー」
そうして、たわいのない話をしているうちに、父と兄はいつの間にか食べ終わり、自室にて仕度を始めた。
次に妹が食べ終わって、自室へと去っていった。午前中はお絵かきをするらしい。
「ご馳走様でしたー」
「片付け、よろしく頼みますね」
それから遅れること、数分後。
私は、母とほぼ同時に食べ終わり、挨拶をしてから席を立った。
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