表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【王国内屈指の公爵家の令嬢ですが、婚約破棄される前に婚約破棄しました。元婚約者は没落したそうですが、そんなの知りません】  作者: ナロー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/84

【キャロルとクーイ】 5


「その魚は孤児院に着くまで、私の収納魔法にしまっておきましょう。彼には孤児院についてからお渡しすればよいでしょう」


「うん、お願い」



 レニーの提案に、キャロルは魚と保冷剤の入った箱を彼女に渡した。それからクーイのほうに向いて。



「そ、それじゃあ行きましょう、クーイさんのお家」


「……転移魔法を使うので、近くに寄ってください」


「は、はいっ」



 緊張気味にキャロルが彼の近くに寄る。


 レニーも目を少し眇めてからキャロルのそばに控えた。


 クーイが言う。



「それじゃあ向かいます」



 彼の足元に魔法陣が展開され、キャロルとレニーの足元まで広がっていく。三人の身体を覆える程度の大きさになってから、魔法陣は彼らを包み込んで姿を消していった。


 転移の際にキャロルはぎゅっと目をつぶっていたが、転移自体は数秒ほどで完了した。



「着きました」



 クーイの言葉で目を開くと、さっきまであった街の喧騒はなくなっていて、目の前に古びた建物が建っていた。


 クーイの孤児院である。



「ここが、クーイさんのお家……」


「来てください。みんなにも紹介しなくちゃいけないので」


「は、はいっ」



 緊張しているせいか、キャロルはまるで壊れた歯車のようにぎくしゃくした動作で、クーイのあとについて孤児院へと入っていく。



「リビングはこっちです」



 孤児院の内部はそれなりに広く、掃除も行き届いていた。


 玄関を抜けて、クーイが先導して廊下を歩き、リビングへと向かっていく。リビングに続くドアには、細長い縦長の不透明なガラスがはめ込まれていて、なかで遊ぶ子供達の声や姿がかすかな影となって透けていた。


 そのドアを開けて、クーイがみんなに声を掛ける。



「ただいま。買い物から戻りました」



 子供達がドアのほうを見る。なかにはクーイのほうへ駆け寄ろうとした子もいたが……彼の後ろにいる二人の見知らぬ人物を見て、足を止めていた。


 ……誰?


 全員が全員、そんな疑問符を頭に浮かべていた。


 クーイが二人をみんなに紹介する。



「紹介します。こちらは学園の同級生でキャロルさん」


「きゃ、キャロル=エインズです、よろしくお願いしますっ!」



 キャロルが頭を下げて、クーイが続ける。



「彼女の隣にいるのが彼女のメイドで……」



 そういえばメイドの名前を聞いていなかったなと、そこでクーイは気付いた。


 彼の思ったことを察したのだろう、レニーが軽く頭を下げた。



「レニー=ラインです。以後お見知りおきを」



 子供達は二、三秒、無言で二人を見つめていた。事態を飲み込んでいるような、あるいは二人を観察しているような、そんな沈黙の間。



「あ、あの……?」



 キャロルが戸惑いの声をこぼしたとき……不意に子供達が一斉に大声を上げた。



『クーイが女の子と女の人を連れてきたー!』



 ついさっきまで静寂が流れていた室内が、一気に喧騒に包まれていく。ある子供は部屋の奥につながるキッチンへと駆け出していき、ある子供はキャロル達のほうに近寄り、ある子供は二人の周りをぐるぐると駆け回る。


 さながら玩具箱をひっくり返したような騒ぎに、キャロルはびっくりしてしまった。



「可愛い!」


「キャロルさんってお嬢様⁉ 専属のメイドさんがいるって!」


「またクーイがお金持ちを連れてきた!」



 子供達の目はきらきらとしていて、あるいは珍しいものでも見るような顔つきだった。



「え? え? え? え?」



 一瞬にして子供達に囲まれてしまったキャロルは、いきなりのことにしどろもどろしていた。


 そんな彼女を放置するように、クーイが部屋の奥へと向かっていく。



「じゃ、俺は義母さん達に買ってきた物持っていくから。みんなはキャロルさんに遊んでもらってて」


『はーい!』


「えぇっ⁉ クーイさん⁉」



 キャロルが困惑した声を上げたのはいうまでもなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ